●文:ライドハイ編集部(伊藤康司)
バイクのコンセプトに合わせたステーキの名前
カワサキは、1960年代に大きなバイクブームを迎えた世界最大の市場=アメリカを攻略するため、新型車を開発する際の社内コードの他に作戦名を設けた。 後に車両のニックネームにもなるが、当時のカワサキは新開発のロードスポーツモデルを「STEAK(ステーキ)」と呼んでいた。
なかでも有名なのが、900 Super4ことZ1の「ニューヨークステーキ」だが、他にもバイクのコンセプトに合わせたさまざまなステーキが存在したのだ。
1972 900 Super4(Z1):NEW YORK STEAK(ニューヨークステーキ)
もはや説明の必要がないほどのカワサキのレジェンド、通称「Z1」。1960年代の社内コード=N600、4気筒750ccとして1969年発売を目標に開発が進められたが、1968年東京モーターショーでホンダがCB750FOURを発表(翌1979年に発売)したことで、方針変更。社内コードをT103に変更し、主たるバイク市場のアメリカで売るため、STEAK(ステーキ)のコードネームが付いた。販売時期が近くなり、アメリカでセールスミーティングが行われた際に、ニューヨーク市担当のセールスマンが「それじゃあ『NEW YORK STEAK(ニューヨークステーキ)』にしよう」と呼んだことから、このニックネームが付いた。当時アメリカのレストランでは、特大ステーキを“NEW YORK STEAK”の名でメニューに載せていたという。
1973 400-RS:HALIBUT STEAK(ヒラメステーキ)
“打倒CB750FOUR”でZ1の開発が進められていたが、同時期にアメリカではホンダのCB350も好調に売れていたため、その対抗馬として気軽に乗れるモデルとして開発。ガッツリ食べるニューヨークステーキではなく、軽く食べられる魚のステーキという意味で「ヒラメステーキ」のコードネームで呼ばれた。当時はオイルショックもあり、アメリカではエコなバイクとしてヒット。ちなみに“HALIBUT”は、カレイ目カレイ科オヒョウ属の海水魚・オヒョウを指すが、アメリカではヒラメ科ヒラメ属のカリフォルニアハリバットなど、オヒョウ属ではない魚も含まれる。
1976 Z650:SIRLOIN STEAK(サーロインステーキ)
雄々しい大排気量のZ1と、気軽に乗れる400-RSの間を埋め、かつ“750より速く”というコンセプトで開発。カワサキは1970年代初頭、一連のスポーツバイクを風を切る擬音のZAP(ザップ)から“ZAPPER(ザッパー)”という愛称を作り、開発のテーマに掲げていたが、Z650の軽快でパワフルな走りから、いつしかZ650=ザッパーと呼ばれるようになった。装備も充実していたことから、赤身に適度にサシ(脂)が入った高級ステーキの「サーロインステーキ」のニックネームをつけたと思われる。
※本記事は2022年3月16日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
平均的な日本人サイズの場合、市販状態のサスペンションはほぼ硬すぎる サスペンションは「硬い/柔らかい」で表現すると誤解されるケースが多く、今回はそこからご説明しましょう。 まずサスペンションとは、乗る[…]
クラシックバイクの顔=フロントタイヤ 電子制御で、ますます高次元なパフォーマンスへ進化している最新バイク。しかし、そうした勢いにのまれることなく、緩やかに時が流れる、もしくは、時間を止めたかのようなト[…]
ネモケンにかかってきた“1本の電話”からドラマが始まった 1986年の秋、ボク(根本健)のところへ、世界GPで闘うHRCワークスチームのボスである尾熊さん(以下 クマさん)から、電話があった。 「来春[…]
[A] 人間の感性に馴染みやすい“乗りやすさ”も条件のひとつ 「このバイク、格好いい!」 だから欲しくなるし、乗りたくなる! 大事なことですよね。そして、そのバイクを手にしたときの満足感は、たまらない[…]
[A] 吸気系の進化で登場した電子デバイス ハンドルのスロットルグリップ(アクセル)を手前にひねれば、エンジンの回転が上がって加速してスピードが出る。反対に戻せば減速が始まり、回転が下がってスピードが[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | カワサキ [KAWASAKI])
世界不況からの停滞期を打破し、新たな“世界一”への挑戦が始まった 2008年からの世界同時不況のダメージは大きく、さらに東日本大震災が追い打ちをかけたことにより、国産車のニューモデル開発は一時停滞を余[…]
究極性能先鋭型から、お手ごろパッケージのグローバル車が時代の寵児に オーバー300km/h時代は外的要因もあって唐突に幕切れ、それでも高性能追求のやまなかったスーパースポーツだったが、スーパーバイク世[…]
クラスの男子はCB派とマッハ派に分かれて大激論 私にとってのバイク原体験は、父方の田舎だった。農家をやっていたものだから、仕事の都合でモータリゼーションが早かったんだね。帰省時に風邪を引いた幼少の私を[…]
1972年、カワサキZ1誕生 1972年、海外向けの超高性能車として登場したカワサキ「Z1」(正式車名は「900スーパー4」)。世代を超えて愛され続け、今なお新しいファンも作り出している、名車中の名車[…]
カワサキデザインのDNAそして走りはミドル級ザッパー 空冷DOHC4気筒400ccバイクの中でもっとも威風堂々としていたバイク、といえば1979年登場のカワサキZ400FXです。 俗に「フェックス」と[…]
最新の関連記事(バイク歴史探訪)
1965年までは“クルマの免許”に二輪免許が付いてきた 80歳前後のドライバーの中には、「ワシはナナハンだって運転できるんじゃよ、二輪に乗ったことはないけどな(笑)」という人がいる。 これは決してホラ[…]
ホークシリーズ登場後、すぐにホークIIIを投入。“4気筒+DOHC”勢に対抗したが… 1977年の登場から1〜2年、扱いやすさと俊敏さを併せ持つホークシリーズは一定の人気を獲得したが、ホークII CB[…]
生産台数の約7割を占めた、ハーレーの“サイドカー黄金時代” 1914年型のハーレー初のサイドカー。ミルウォーキーのシーマン社がカー側を製作してハーレーに納入。マシン本体にはカー用のラグが設けられており[…]
ハーレーダビッドソンは3輪モデルも作っている 「いつかはハーレー」などと言われるように、憧れのバイクメーカーとして知られるハーレーダビッドソン。 多くの人にとって、ハーレー=大型バイクのイメージしかな[…]
1960年代末から、大排気量大型車で世界の2輪業界をけん引する立場になった日本勢だが、オンロードスポーツ車に続き新たに力を入れ始めたのが、オフロードの分野である。 もっとも、1969年にヤマハがDT-[…]
人気記事ランキング(全体)
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
水冷単気筒エンジン+倒立フロントフォークを採用! 英国マットモーターサイクルを取り扱うピーシーアイは、新型車「DRK-01」を2024年4月18日に発売した。じっさいに車両が販売店に届くのは6月下旬予[…]
ええっ!! あのヒトがペアライダーかよ?! 2024年4月21日に千葉県木更津市のポルシェ・エクスペリエンスセンター東京で開催された「DUCATI DAY 2024」。そのイベント内で、全日本選手権J[…]
気筒あたり8バルブ、2本のコンロッドを備え、シート下2本出しマフラーはタンブリーニも参考にしたという…… ホンダのドリームバイクといって思い浮かべるのはどの機種だろうか。2015年のRC213V-Sも[…]
※2024年3月にWEBヤングマシンで大きな反響を呼んだ記事をあらためて紹介します。こちらは第5位の記事です(初公開日:2024年3月24日)。 日本から50ccが消える日 骨肉のライバルも今は兄弟機[…]
最新の投稿記事(全体)
モーターサイクルショーで初公開されたINT 650 ロイヤルエンフィールド製品を輸入・販売するピーシーアイは、マイナーチェンジしたINT 650(アイエヌティー・ロクゴーマル)を2024年4月18日に[…]
3年でダンロップを勝てるタイヤに 「自分のライダー人生をかけてやっていこうと思います」 鈴鹿8耐を2連覇した男が、全日本ロードレースJSB1000クラスに今年フル参戦する。 しかし、そのチーム体制はワ[…]
リスクの高いスポーツは社会に受け入れられない……? 3月末、日本にいた僕は東京モーターサイクルショー(TMS)にお邪魔しました。会場を回りながら肌で感じたのは、「レース、やばいぞ……」ということでした[…]
どうもアイキョウです。ワークマンにはさまざまなレインウェアがあります。 雨の日でも通勤でバイクに乗るならワークマンのバイカーズという製品がオススメです。ワークマンレインウェアの中では高額な5800円な[…]
スロットルを開けていく過程も楽しめるマフラーを作りたい ヤマハYZF-R15/YZF-R125は、YZF-R1を頂点としたシリーズの最小排気量モデルとして開発された兄弟モデル。フロントカウルの2眼ポジ[…]