しばらく乗る予定のないキャブレター車は”ガソリンを抜いておく”のが鉄則

しばらく乗る予定のないキャブレター車は"ガソリンを抜いておく"のが鉄則

忙しさや諸事情から愛車に乗る頻度が落ちること数週間…、そこから気づくと数ヶ月となっている方はいないだろうか? キャブレター車だとガソリンが悪くなってしまい、エンジンがかからなくなることもしばしば。そうなったらもう遅いので、もし現時点でこれから数ヶ月間乗ることがないと思ったら、最低でもキャブ内フロートチャンバー室のガソリンは抜いておきたいところだ。


●文:たぐちかつみ ●写真: 栗田晃

久しぶりに乗ろうとしたらキャブ不調でアウト!! そんなことにならないために

今回、友人から修理相談が入った白モンキー。ベースモデルは’78年生産の5リットルタンク初期型(6V車ベースのカスタム)。エンジン始動は良好ながら「アイドリングしない」「ややオーバーフロー気味!?」といった症状が出ていた旨、連絡が入った。そこでまずはキャブの分解洗浄を実施。軽症だったこともあり、分解洗浄によってあっさりアイドリング。排気量が88ccなので力強くアイドリングしてくれるようになり、オーバーフロー症状もなくなった。

今回のような軽症なら、キャブを分解しなくても症状改善できたかもしれない。その方法は、キャブに点滴タンクを接続し、コックを開いてガスを落下させつつ、コップ1杯ほどのガソリンをフロートチャンバーのドレンから流し続けるのだ。そのようにすることで、フロートバルブに引っかかっていたであろう汚れの堆積を押し流すこともできるのだ。

さらに点滴タンクを取り外し、チャンバードレンを抜き取り、ドレン穴にケミカルスプレーノズルを押込み、キャブケミカルの泡をフロートチャンバー内に逆流充填する。ドレンを締め付けたらしばらく放置しつつ、エアーファンネル側のエアー通路からもケミカル噴射。さらにスロットルを開かずキック10発/15発と踏み込むことで、スロー系の洗浄促進が行えるのだ。

その後、ガソリンを流し込み、今回の作業実践の要領でエンジン始動を試みることで、スロー系回路の汚れが改善され、アイドリングするようになる。良い意味での”手抜きメンテナンス”だが、ぜひ試してみてもらいたい。ちなみに、しばらく乗らないと思ったら、最低でもフロートチャンバー内のガスは抜こう。また、余裕があるのならタンクを取り外して空にするのが最善だ。現代のガソリンは腐りやすく水分を寄せやすいので、その方が絶対的に安心だ。

黒く塗ったシリンダーボアはΦ52mm。排気量はハチハチで、キャブにはケーヒン製PC20をチョイス。分解洗浄後、気持ち良く吹けるので、キャブセッティングはいい感じ。

メーカーの垣根を越えておすすめしたいケミカルがワイズギアのヤマルーブ。キャブ用ケミカルにもいろいろあるが、エアゾールスプレーの”泡タイプ”がお気に入り。使い勝手も良好だ。

ガス抜き作業の手順

キャブ単品の取り外しで対応できるかもしれないが、あえてタンク下のコンディションも見たいため、ガソリンタンクを取り外してから作業開始。

キャブフランジとマニホールド間を締め付けるボルト2本を取り外し、トップキャップを緩めてキャブボディを取り外した。不用意にガスを流さないよう、向きに注意。

トレイを用意してボディを真横に置くことでブリード穴からガソリンが流れ出る。逆さまにすると流れ出にくいので、真横にしよう。フロートチャンバーを取り外す。

フロートの舌に引っ掛けられたフロートバルブを紛失しないように注意しながら支点ピンを抜き取り、フロートとバルブを一緒に抜き取ろう。

メインジェットを取り外す時にジェットホルダーごと外れてしまうことがあるので、ホルダーをレンチで固定しながらマイナスドライバーでメインジェットを取り外した。

スローエアースクリューはいきなり取り外さず、ゆっくり目一杯締め込みつつ、何回転と何分の何戻しになっていたか、既存データを知っておこう。

エアースクリュー/スロットルストップスクリュー/スロージェットも取り外したら、トレイの上でパーツを仕分けてからクリーニング作業に入ろう。

メインジェット/スロージェット/ジェットホルダーに各種スクリューなどの真鍮部品をチャック付きビニール袋に入れてケミカルをブシューッ!! 指先でモミモミすることで、液が温まり洗浄力が高まる。

ボディ本体の各通路に向けてスプレーケミカルのノズルを押し付け、ブシューッと吹き付ける。アイドリング不調なのでスロー系は丁寧に作業進行。

燃料通路は汚れの堆積によってオーバーフローを起こしやすくなる。フロートバルブのバルブシートにはケミカルを吹き付け後、綿棒を押込みグイグイ磨こう。

キャブボディの通路洗浄をひと通り行ったら、各通路などの洗浄箇所にパーツクリーナーをしっかり吹き付ける。ひどい汚れじゃなくてひと安心。これで問題解決を確信!!

パーツクリーナーでしっかり脱脂洗浄およびケミカル成分を洗い流したら、コンプレッサー&エアーガンを利用して各部をしっかりエアーブロー&通気確認しよう。

チャック付きビニール小袋の中で洗浄したパーツは、ウエスに取ってパーツクリーナーで脱脂洗浄後、パーツを紛失しないようにエアーブローで仕上げる。

フロートレベルゲージで現状データを測定。オーバーフローが無く普通に走れるようなら、88cc+PC20でこのデータが参考になる。現状は22~23mmだった。

モンキーに限らず、エアーファンネル仕様で走るバイクはジェットニードルのわずかな腐食が不調の原因になる。細目のボンスターでニードルを軽く磨いた。

キャブを復元したらトップカバー&ケーブルを接続し、スロットルのオンオフにスロットルバルブが追従するか目視確認しよう。ケーブルの引っ掛かりに要注意。

すべての部品を復元したらコックをONにしてガスをキャブに流し込み、ドレンを緩めてガスが流れ落ちるか確認。そしてキックでエンジン始動。アイドリングOK!! 作業は完了だ。


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