’20年2月より国内販売されているBMW F900R。ロードスター・F800Rの後継に当たるが、エンジンからシャーシまですべて別物だ。電子デバイスをフルに搭載した最上位パッケージ「プレミアムライン」の試乗レポートをお届けする。
●写真:真弓悟史 ●取材協力:BMWモトラッド
[◯] 微炭酸的な脈動感と良好なハンドリング
以前試乗したアドベンチャースポーツのF900XRに続き、今回はそのロードスター版である「F900R」をテストした。’09年に登場したF800Rの後継に位置付けられるが、エンジンからシャーシまですべて別物だ。なお、試乗車は電子制御サスペンション/トラクションコントロール/クルーズコントロール/エンジンブレーキコントロール/アダプティブヘッドライトなど電子デバイスを盛り込んだ最上位パッケージ=プレミアムライン(133万3000円)だ。
270度位相かつ逆回転駆動のクランクを採用した894ccの水冷パラツインは、電子制御スロットルのマナーが良く、微速域から扱いやすい。基本的にはF900XRと共通だが、こちらの方が街中で多用する3000〜5000rpmでのフィーリングが力強く、この領域では微炭酸が弾けるような心地良い脈動感が味わえる。そして、スロットルを大きく開けた時の力量感は105psというスペックを超えるもので、ストリートファイター的な一面を見せることも。なお、逆回転クランクに関しては、ウイリー抑制などの効果があると言われるが、果たして前後重量配分なのか空力なのかサスペンションセッティングなのか、よく分からないというのが正直なところだ。反対に気になるネガ要素は特になかった。
ハンドリングは、29.5度というかなり寝かせたキャスター角からも分かるように安定指向で、ステアリングダンパーによる味付けも加わっているのか、バンク角主体で向きを変えるタイプだ。基本的には扱いやすく、しなやかなスチールフレームが接地感を生んでいる。フロント荷重気味のライディングポジションを活かして積極的に操作すれば高い旋回力を引き出せるし、電子制御サスペンションの設定次第では安楽な乗り味にすることも可能。この振り幅の広さが美点と言えるだろう。
ブレーキは、フロントの初期がやや利きすぎの印象を持ったが、これは慣れの範疇だろう。ネイキッドなので高速道路ではダイレクトに走行風を受けるが、下半身はタンクカバーの張り出しのおかげで意外と寒くない。なお、純正アクセサリーでハイスクリーンが用意されている。
【360度&正回転クランクの先代800】F800シリーズ初のロードスターとして’09年に登場。エンジンはロータックス製の798cc水冷並列2気筒で、気筒間にバランサーコンロッドを採用する。フレームはアルミツインスパーで、特徴的なピボットレス構造を採用していた。
[△] 電子デバイスとの意思疎通が課題に
コーナリングABSは、入力しながらの倒し込みでは問題ないが、バンク中にリヤを踏むなどするとかなり早めに介入する。クイックシフターは、低回転域でのギヤチェンジで強めのショックが出ることも。このあたりは慣れるしかないようだ。
[こんな人におすすめ]ミドルクラスの電子デバイス王。コスパも最強か
中国のロンシンで生産することで競争力のある価格を実現したこのシリーズ。プレミアムラインは約30万円高となるが、群雄割拠のミドルクラスでここまで電子デバイスを追加できるのは稀少であり、売れている理由がここにある。
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