ホンダのネイキッドキング=CB1300スーパーフォアとスーパーボルドールの’21新型モデルと’20旧型を比較する。約20年間の熟成で完成されつくした伝統のビッグワンは、ユーロ5相当の新排ガス規制対応の影響をどう受け、どう乗り越えたのか?
●まとめ:宮田健一 ●写真:長谷川 徹/山内潤也 ●取材協力:HondaGO BIKE RENTAL
- ユーロ5の荒波をスロットルバイワイヤで見事にクリア
- 先代で完成した味をスロットルバイワイヤでもそのまま再現
- 写真で見る新旧ディテール比較
- 燃費/主要諸元/価格差比較
- 総括:巨体を軽々と操るダイナミズム。消えなかったビッグワンの醍醐味
ユーロ5の荒波をスロットルバイワイヤで見事にクリア
おぉ〜! 久々に乗ったぜ、プロジェクトビッグワンことCB1300シリーズ! やっぱりビッグワンは、その前に何度立っても惚れ惚れする。ドカーンと巨大な車体に1300ccという大排気量が生み出す巨大なトルク。その威風堂々とした佇まいは、これぞまさに「ビッグバイクの王様」と呼ぶにふさわしい。ただ、現在のベース型式となるSC54型が出たのは’03年と、もう20年近く前のこと。’17秋にユーロ4相当の国内排ガス規制に適合した先代が登場した時は、どんどん厳しくなる排ガス規制の波にこれで最後かも、と我々の間では危惧したものだ。
ところがどっこい。FIスロットルボディのバタフライを電子制御で開閉するTBW(スロットルバイワイヤ)という最新の技術を採り入れることで、ビッグワンは’21モデルで見事にユーロ5も乗り越えてみせた。さらにライディングモード/トラクションコントロール/クルーズコントロールといった今ドキ新設計のマシンと同様の機能も付け加えられている。それだけに飽き足らず、マフラー集合方式まで手を入れて4‐2‐1から4‐1とし、直4らしい爽快サウンドまでゲット。先代でLEDライトなども手にし、排ガス適合以外はもうこれ以上やることはないかと思える完熟度を誇っていたが、まだまだ進化する余地が残されていたのだ。それでは、この最新にして揺るぎない伝統の持ち主、’21ビッグワンを先代モデルと比較しよう。
先代で完成した味をスロットルバイワイヤでもそのまま再現
TBW(スロットルバイワイヤ)は、まずスロットルが軽くなっていることで新旧で違いがあることが分かる。しかし走り出してみたらどうだ。電子的に制御されてる感がほとんどせず、先代とほぼ変わらぬフィーリングで右手の動きとエンジン回転が連動する。豊かなトルクなど味わいは新旧でそのままだ。新型にはこのTBWを利用して新たにライディングモードも装備された。スポーツ/スタンダード/レインの3モードに切り替えられ、トラクションコントロールの効き具合もこれと連動している。
切り替えてみたが、パワーそのものについてはスポーツとスタンダードの間で違いは感じられず、スポーツモードではスロットルレスポンスのダイレクト感をより1:1へと強めてスポーティーな走りに対応したという感じ。カタログにもパワーについての記述はない。そもそもパワーに関しては先代でもう十分の域に達していたので、そこからあえてイジる必要はなかったのだと考える。ただレインモードはさすがに雨天用だ。新型の他のモードや先代に対して明らかにTBWが右手の動きよりもバタフライを開けていないのが分かる。ビッグワンらしく峠を豪快に楽しむなら、やっぱりここはスポーツかスタンダードモードだ。
トラクションコントロールについては、今の常識で考えると1300もあるマシンにこれまで付いていなかったのが驚く話で、ここはようやく他のビッグバイクたちと肩を並べたかというところが正直な感想。取材した峠は途中から軽い雨。元気気味に発進すると先代はリヤホイールがシュルッと空転しまくりだった。今やトラコンは欠かせない装備だろう。
そして集合方式の変わったマフラー。スロットルをスナッチすると先代4‐2‐1の”ドリューン”という音が混ざり合うような感じから、新型4‐1は”フォン”という直4ならではの吹け上がり音になった。ただ先代もいい音色。4‐2‐1を選ぶのは主に低中速のトルクを高めるためで、たしかに新型は若干そこが薄くなってはいる。だが、4‐1にしたのはもうトルクは十分だという判断もあったのだろう。新型は二次曲線的にパワーが立ち上がっていく直4らしい特性が強まり、8000rpm以上の伸び感も出ていた。が、それでもやっぱりビッグワンならではの根底的な味わいはそのままだ。すでに先代で完熟の域に達していただけに、電脳化しつつもあえてホンダは大きく変えたくなかったのだろう。
写真で見る新旧ディテール比較
電子制御スロットルで操作系を一新
走行モードも実装
スイッチボックスが大きく進化
電装はごっそり別モノ
オプションでクイックシフターも!
エキゾーストパイプの取り回しも変更。4in1集合で伸びやかになった
燃費/主要諸元/価格差比較
実測燃費:リリース通りしっかり向上
主要諸元:出力アップと軽量化を達成
価格差:内容的には最低限の価格アップ
総括:巨体を軽々と操るダイナミズム。消えなかったビッグワンの醍醐味
ビッグワンの醍醐味はなんといってもその巨大なボディを操ってワインディングを駆け抜けるそのダイナミズムだ。止まっているときは確かにデカくて重い。ハンドルやタンクも幅広くライポジは大柄でリッター超えらしい手強さを持っている。
だが、いったん走り出してさえしまえば、それらを忘れてしまうほど軽々とした運動性能を見せてくれ、峠では気が付くと右に左にマシンを振り回して乗っている自分に気付かされる。ライポジが大柄だけに、オーバーアクション気味に腰をずらして膝を突き出しながらコーナーに突入するなんて乗り方がよく似合う。そんな乗り方をするものだから「こんなデカいバイクで豪快に峠を攻めている俺、スゲェ!」みたいな気分に酔いしれることができるのがビッグワンの魅力だ。これって昔のレプリカ全盛期の峠で、NSRなんかの小僧どもをずっとデカくて重いCB750Fでブッチ切ってみせて一目置かれるようなカッコ良さに通じるものがあるかも。
新型ビッグワンもユーロ5という厳しい規制を受けながら、そんな魅力はまったく変わっていなかった。いや、変えたくなかったというホンダの強い意志すら感じてしまった。スロットルバイワイヤによる制御をここまで作り込んだのは見事だ。新型にはオプションで上下方向対応のクイックシフターも装着できる。今回は装備されていなかったので試していないが、これがあればさらに走りの醍醐味が増すのではないだろうか。
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