●文:ヤングマシン編集部 ●取材協力:ドゥカティジャパン
ヤングマシン×RIDE HI
ヤングマシンとRIDE HI、コンセプトの異なるふたつのメディアが、ドゥカティ「ムルティストラーダV4S」の魅力をそれぞれの視点から探っていくコラボ企画。全4回で、本記事ではレーダーACCの初採用でツーリングにどんな革命が起こるのか検証する。パニガーレV4系/ストリートファイターV4系に続いてV4エンジンを搭載するアドベンチャーモデルだが、注目ポイントは新型エンジンにとどまらない。本記事では前後のレーダーシステムを用いたアダプティブクルーズコントロールやブラインドスポット機能を紹介しよう。
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事故のリスクを減らして、楽しい時間だけを過ごしたい
目的地へ向かってアクティブに移動しながら、思いのままに走りたい! 日常に潜むリスクを感じ取り、臨機応変に振る舞うことでライダーとして覚醒していく時間は、何物にも代えがたい。
他の交通に余計な集中力を削がれることなく、安全に、快適にツーリングして多くの景色を楽しみたい。
行き先などどうでもよく、バイクに乗ること自体が面白くて仕方がない。そんな時間を持てるのは月に1度くらいだけれど……。
ツーリングに対するイメージはそれぞれだろうが、絶対的に共通しているのは「楽しい時間を過ごしたい」「無事に帰りたい」という2点に尽きるだろう。リスク管理もライダーの嗜みであり、それは面白さでもあるけれど、本当に危険な目には遭ってはいけない。遭ってほしくないと願う誰かがいる。
そうした思いをさりげなくサポートしてくれる先進の電子デバイスが、間もなく体験できるようになる。
バイクらしい“操る悦び”はそのままに!
ライディング中の死角に潜む危険を知らせてくれて、高速道路の長距離走行などでは車間距離を自動的に保ってくれるクルーズコントロールも働く。
ムルティストラーダV4Sが世界で初めて搭載(オプション)するレーダーテクノロジーは、クルマの世界で盛んに謳われる自動運転などではなく、あくまでもライダーに対する高度なアシスタンスシステムだ。
普段は思うままに走ることができ、危険察知が必要な場面や、周囲の流れに乗って楽に巡行したいときに助けてくれる。ライダーが能動的にライディングすることを前提としながら、余計なストレスを減らしてくれるシステムと言っていい。
クルマでもバイクでも、クルーズコントロールを使ったことのある人なら、その便利さとともに、交通量の多い道路を走行していると周囲の速度が思いのほか一定でなかったりして、微妙な速度調節で煩わしい思いをしたこともあるだろう。その面倒くさい速度コントロールや車間距離の調整を自動的に行ってくれるのが、いわゆる“アダプティブクルーズコントロール(ACC)”というヤツだ。
モーターサイクルに完全に一体化された前方用レーダーを核とするACCは、30~160km/hで走行中に、前方車両との車間距離を一定に保つようアクセルとブレーキを自動的にコントロールする。車間距離は4つのレベルで選択でき、ライダーがどのような状況でもマシンをコントロールできるように、減速と加速に関するシステムの介入は一定のレベルを超えないように制限されている。クルマから派生したシステムではあるが、バイクの挙動と人間工学を考慮しながら、さらなる進化を遂げているのだ。
前走車との距離を正確に保つことはかなりの集中力を要し、それが長時間にわたると疲労を招くもの。このアダプティブクルーズコントロール(ACC)は、左手元の専用ボタンでカンタンに起動および調整をすることができ、さらにドゥカティクイックシフト(DQS)アップ/ダウンを使用することで、加速時と減速時にACCの無効にすることなくシフトアップ/ダウンを行うことも可能だという。
もうひとつの後方用レーダーは、ブラインドスポット検知(BSD)システムを働かせる。これは、バックミラーに写らない後方の死角領域にいる車両を検知してライダーに警告するというものだ。死角に車両が存在する場合はリヤビューミラーに設置されたオレンジ色のLED警告灯が点灯する。また、後方から高速で接近してくる車両の存在をライダーに通知することもできるといい、どちらの場合も、ライダーがウインカーを操作して車線変更の意思を示した際に、BSDはLEDを点滅させて、ライダーに危険な状況を知らせてくれる。
2018年にBOSCHが開発発表していた技術を量産車に初採用
これらはいずれもドイツに本社を置くボッシュ(BOSCH)が開発したパッケージシステムをドゥカティのモーターサイクルに融合したもの。前方車両との距離が不十分だったために発生する追突を効果的に防ぐことができ、ライダーの疲労を軽減することもできるACCと、ライダーが安全に車線を変更できるように支援する死角検知システムは、何が起こるかわからない混合交通の中を長距離にわたって走行するツーリングで、より安全に、楽しく我が家へ帰り着くまでをサポートしてくれることだろう。
ムルティストラーダV4Sは、ほかにもハンズフリーイグニッション、4つのライディングモード、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、ドゥカティウイリーコントロール(DWC)、コーナリングABSシステムを備えたボッシュ×ブレンボ製ブレーキシステム、坂道発進などをサポートするビークルホールドコントロール(VHC)、マルゾッキ製の電子制御セミアクティブサスペンションなどを備えている。
そんな最新電子デバイスの集合体であるムルティストラーダV4S、間もなく試乗レポートをお届けできる予定だ。
DUCATI MULTISTRADA V4S/SPORT[2021 model]
ドゥカティのグランツーリスモとなるムルティストラーダ。2021年モデルとしてV4の1158cc新設計エンジンを搭載した「V4」がデビューする。ドゥカティの代名詞でもあるデスモドロミック機構を採用せず、一般的なスプリングリターンバルブ駆動方式(ロッカーアームはフィンガーフォロワー)を選択して、6万kmのメンテナンスサイクルを実現した。ボッシュと共同開発の前後レーダーシステムを量産2輪車で初採用(オプション)するのもトピックだ。「Sスポーツ」はV4Sベースで、フルオプションパッケージを装着するとともにカーボン製フロントフェンダーとアクラポヴィッチ製認証マフラーを備える。いずれもスポークホイールがオプション選択可能。
主要諸元■全長/全幅/全高未発表 軸距1567 シート高840/860(各mm) 車重243kg(装備)■水冷4ストロークV型4気筒DOHC4バルブ 1158cc 170ps/10500rpm 12.7kg-m/8750rpm 変速機6段 燃料タンク容量22L■ブレーキF=φ330mmダブルディスク+4ポットキャリパー R=φ265mmディスク+2ポットキャリパー タイヤサイズF=120/70ZR19 R=170/60ZR17
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