トリシティ125/155、ナイケン/GTに続くヤマハのLMWシリーズ第5弾として登場したトリシティ300。125/155とは車体から全くの別物で、初のスタンディングアシスト機構を採用。292cc水冷エンジンによる走りやいかに。
[〇] 排気量の大きさに納得。LMWの安心感は秀逸だ
ネーミングからして誤解されそうだが、このトリシティ300は125/155の単なる排気量拡大版ではない。フレームから専用設計であり、さらにフロント2輪のLMWテクノロジーには、深いバンク角でも違和感なく旋回する”LMWアッカーマン・ジオメトリ”を採用。フロントフォークが外側か内側かの違いはあるが、このジオメトリはナイケンで培われたもの。つまり、コミューターの枠を超えたスポーティな走りも追求しているという証拠だ。
まずはエンジンから。292ccなので車検が必要となるが、実際に走り出して納得した。250ccのXMAXより車重が58kgも重く、そこにフロント2輪による転がり抵抗も加わるので、どうしてもこれだけの排気量が必要だったのだ。100km/h巡航時のエンジン回転数はおよそ6000rpmで、そこまでの加速感はXMAXと同等。体に伝わる微振動がほとんどなく、スロットルレスポンスも過不足なし。自己主張の強すぎない、ライダーにとって実に優しいエンジンと言えるだろう。
さて、注目のハンドリングについて。パラレログラムリンクと片持ち式フォークで構成されるLMWテクノロジーにより、フロントの高い位置に重さを感じるのはナイケンらと共通。また、微速域では一般的な2輪車のようにスロットルオンで車体が起きてこないなど、最初は違和感を覚えるが、これはすぐに慣れるはず。どんなに荒れていてもアスファルトを”面”で捉え続け、メインスタンドが接地するまで深く寝かせても、旋回中の安定性や安心感は2輪車では到達できない高みにある。
そして、アスファルトを面で捉え続けるからこそブレーキ性能も優秀だ。左レバーの操作で前後に効力をバランス良く配分するUBS(ユニファイド・ブレーキ・システム)の採用により、どんなシチュエーションでもイージーかつ強力に減速できてしまうのだ。 防風効果の高いスクリーンや大容量のトランクなど、コミューターとしてだけでなくツーリングバイクとしての資質も十分以上。所有欲を満たす各部の作り込みにも注目を。
[△] 自立アシスト機構は便利だが慣れは必要
ついに採用されたスタンディングアシスト。足着き性があまり良くないので、特に長い信号待ちでは便利だ。その一方で、操作時の警告音がかなり大きいのと、路面の傾斜によってはリリース時にグラリと倒れそうになるので、使いにくい場面も。
[こんな人おすすめ] フロント2輪の可能性を広げる魅力的な1台
ナイケンほどではないが、フロント2輪を含む押し出しの強いデザインにより、街中での注目度は高い。タンデムする機会が多い人ほど、この安定性をより高く評価するだろう。LMWテクノロジーの真髄を多くの方に体感してほしい。
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