H2エンジン以外の選択肢もあった!?

ビモータ テージH2試乗インプレッション後編【30年の時を経た革命復活への道のり】


●文/翻訳:ヤングマシン編集部(Alan Cathcart) ●写真:Bimota – Avenidas/Loretta Dell’Ospedale & Davide Bianchi

アラン・カスカート
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【テスター:アラン・カスカート】 英国人バイクジャーナリスト。オールドレーサーやGPワークスマシン、各種市販車など試乗経験の豊富さは世界でも随一だ。

ビモータ激動の歴史:プロトタイプ時代にはホンダV4やヤマハ750ccも

前編より続く)

ビモータは’73年にバイクの製造を開始。様々な技術革新で世界中に衝撃を与えたが、’81年にボローニャ大学院生だったピエルルイジ・マルコーニ氏とロベルト・ウゴリーニ氏、そしてビモータの当時のチーフデザイナーであるフェデリコ・マティーニ氏による共同作業で、”論文”を意味する「TESI」の研究開発が始まった。

プロトタイプにはホンダVF400のV4エンジンやHRCファクトリー仕様の750ccV4エンジンなどが搭載され、後者はダビデ・タルドッツィ氏のライドにより耐久レースなどにも出場。後にYB4をベースとしたテージP4(ヤマハFZ750のエンジン搭載)を経て、’90年のケルンショーでドゥカティエンジンのテージ1Dが発表されるに至った。

マルコーニ氏を代表するモデルの生産は’95年に終了。その後、別のエンジニアの手によってテージ2D/3Dが製作された。ちなみに個性的なイタリア車・ヴァイルス(Virus)は、元ビモータのエンジニアによるものだ。

写真左はテージH2を設計したピエルルイジ・マルコーニ氏とホンダV4エンジンを搭載したテージP1、右はヤマハFZ750の並列4気筒エンジンを搭載したテージP4だ。この他に耐久レーサーなども存在した。

H2とは異なるエンジン搭載の可能性もあった!?

上で紹介したように、”テージ博士”=ピエルルイジ・マルコーニ氏という人物は、ボローニャ大学院生だった’81年に、イタリア語で”論文”を意味する「TESI(テージ)」の研究を始め、翌’82年には仕事/研究プログラムの一環としてリミニの工場で6か月間働いた。その間に開発した、油圧を用いたハブセンターステアのテージデザインは、大学のコンピュータを予備設計作業に使い、カワサキGPz550のエンジンを使用した。

マルコーニ氏が’83年にビモータでフルタイムの仕事を得た直後に、テージのプロトタイプが登場。VF400のV4エンジンを搭載したテージP1は、その年のミラノショーで発表され注目を集めた。そしてTT-F1クラスの耐久レース用にHRCから直接購入した750ccファクトリーレースエンジン(V4)を搭載したP2へと続いていく。

テージP1は複合接着素材による剛性の高いフレームを使っていたが、VFR750RエンジンのテージP2ではエンジンの大きさからこれを断念。その代わりに重量わずか5kgのカーボンファイバーハニカム複合材のツインスパーフレームを使用した。フロントサスはDSCと呼ばれる平行四辺形のセンターハブデザインに変更され、P1で水平マウントだったショックユニットは、P2ではリヤサスと同じようにプログレッシブリンクで垂直にマウントされた。

さらに、鋼管スペースフレーム使用のP3を経て、ヤマハFZ750エンジンを使用したP4へと発展。これが並列4気筒を搭載した最初にして唯一のプロトタイプテージである。その後、’91年にドゥカティエンジンの「テージ1D」が発売され、’95年にテージの旅はいったん終了することに。

そして話は現代へ。マルコ・キアンチネージ氏らが’13年にビモータを買収しBB3等を生産するも、エンジン供給の問題から’16年に会社を閉鎖。その後、大手メーカーとの親密なパートナーシップが必要だとして、日本4社を含む11社に連絡し興味があるかどうかを確認。これに対し、カワサキと某日本企業が呼応したという。そして’16年11月にカワサキの伊藤浩氏と会談を持ち、’19年11月の復活劇へと繋がっていった。仮にもう1社の方が選ばれた場合、どんなエンジンが搭載されていたのだろうか…。

【ピエルルイジ・マルコーニ氏】テージH2の生みの親。ビモータでのテージ1DやSB6(最大のヒット作)、2スト500ccの500-V Dueのほか、ベネリ・トルネード900なども開発した。

吸排気系もニンジャH2を踏襲したテージH2。エンジンスペックも同一だ。ヘッドライト下後方に斜めに取り付けられたラジエターなども独特のレイアウトとされる。


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