’18年8月に復活したヤマハ セロー250が’20年7月31日に生産終了となり、35年の歴史に幕を下ろした。”二輪二足”をキーワードに誕生したマウンテントレールの元祖。そのファイナルエディションにあらためて試乗した。
[◯] 操縦技術も場所も不問。扱いやすさを再確認
私が原付免許を取得したのは昭和63年(’88年)のことで、その3年前にセローの歴史がスタートした。当時はレーサーレプリカブームの全盛期で、4ストのオフロード車、しかも223ccという中途半端な排気量のバイクに、高校のクラスメイトは誰も見向きもしなかった。ところがその2年後、初めて北海道に渡って驚いた。すれ違うオフ車の4分の1はそうじゃないかと思えるほど、大量のセローが走っていたのだ。当時はまだ未舗装区間が多く、だからこそ”二輪二足”をキーワードに開発されたセローが重宝されたのだ。
今回試乗したのは、これで最後となるファイナルエディション。1年の休止期間を経て復活した’18年モデルをベースに、初代を彷彿させる塗色を採用したもので、このほかにスクリーンやリヤキャリアを追加したツーリングセローも用意される。
’05年のフルモデルチェンジで排気量を249ccに引き上げ、フューエルインジェクションを採用した空冷SOHC2バルブ単気筒は、低回転域で粘り強く、スロットルを開ければストレスなく伸び上がる。最高出力は20psなので決してパワフルではないが、同じ250ccのMT-25より車重が36kgも軽く、しかもレスポンスがいいので、数値から受ける印象以上に街中でもキビキビと走ってくれる。タコメーターがないのでギヤ比とタイヤ径から計算したところ、トップ5速100km/hでの回転数はおよそ6500rpm。その領域でも高速巡航を余裕でこなせる一方で、林道ではトコトコと流せるだけの柔軟性がある。実に良く調教されたエンジンなのだ。
ハンドリングは、トレール車のお手本といっても過言ではない。スロットルのオンオフだけでスムーズに車体がピッチングするので、操縦に意識を向けなくても気持ち良く旋回する。その上で、舗装された峠道ではステップを擦るほどペースを上げられたり、林道ではトライアル的な走りにチャレンジすることもできてしまう。こうした懐の広さはスペックに現れない部分であり、セローらしさとして支持されてきた最大の理由。それをあらためて実感した。
[△] 流通在庫はあるものの欲しい人は急ぐべし
本記事執筆段階(9月中旬)で検索したところ、新車の流通在庫を何台か発見できた。だが、ツーリングセローも含めて絶対数は多くないので、欲しい人はプレミアム価格になる前に購入を。そんな私もこの試乗を機に悩み始めた一人だ。
[こんな人におすすめ] これでサヨナラ35年間本当にありがとう!
ABSや灯火類、排ガスなど今後の各種規制に対し、現実的な価格で提供するのが難しくなるというのが生産終了の理由。各社がライバル車を投入するもことごとく敗れたことから、セローという王者の終焉はやはり寂しさしかない。
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