ユーロ5対応のため排気量をアップするとともに、車体まで全面刷新した’20ホンダ CRF1100Lアフリカツインシリーズ。そのフル装備タイプ「アドベンチャースポーツES DCT」に試乗した。
[◯] ストローク短縮するも、電子制御がネガを解消
’16年にデビュー、’18年に電子制御系を進化させつつビッグタンクのアドベンチャースポーツを追加したアフリカツインシリーズ。’20年モデルで早くもフルモデルチェンジを実施し、正式車名の数字を1000→1100とした。
今回試乗したのは、アドベンチャースポーツの有段自動変速であるDCT仕様、さらに今回から設定された電子制御サスのESタイプという、まさに”全部盛り”のモデルだ。なお、車両価格はベース仕様で約25万円アップし、ESはプラス14万3000円。その結果、試乗した最上位仕様は200万円の大台を超えた。

【’20 HONDA CRF1100L AFRICA TWIN ADVENTURE SPORTS ES DCT】([ ]内はMT車) ■全長2310 全幅960 全高1580~1520 軸距1560 シート高810-830(各mm) 車重250[240]kg ■水冷4スト並列2気筒 SOHC4バルブ 1082cc 102ps[75kW]/7500rpm 10.7㎏-m[105Nm]/6250rpm 変速機電子式6段変速(DCT)[6段リターン] 燃料タンク容量24L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=90/90-21 R=150/70R18 [写真タップで拡大]

【電サス仕様のみ黒が用意される】全幅が930→960mmへ。IMUの採用でトラクションコントロールの制御が緻密になり、ウイリーコントロールを追加。さらにクルーズコントロールやアップルカープレイの新設、ESはジャンプ時やブレーキング時の姿勢制御など、電脳化を一気に推進。 [写真タップで拡大]
電子制御サスペンションは、これを採用する多くの車種がそうであるように、ライディングモードと連動している。アドベンチャースポーツの場合、ツアー/アーバン/グラベル/オフロードの順で減衰力がソフトになり、合わせてエンブレの強さやABSのモード、DCTのクラッチ制御の時間を切り替えるGスイッチの設定も変化する。また、全ての項目を任意に選択できるユーザーモードも2パターンが登録可能だ。
先代のローダウン仕様とほぼ同等の短いサスストロークとなった新型だが、少なくともESタイプはそのネガを感じさせないどころか、むしろ扱いやすく、乗り心地も向上している。特にオールラウンドに使えるアーバンモードが秀逸で、先代の大きなピッチングを生かした走りも良かったが、ロングツーリングでの疲労の少なさはESの圧勝だろう。
ストロークを伸長して排気量を998→1082ccとした水冷並列2気筒エンジンは、吸排気系も含めて刷新。ユーロ5をクリアしながら約7%の出力向上を実現した。最高出力102psは、直接のライバルとなりそうなKTMの1050アドベンチャーRより20psほど低いが、制御が見直されたDCTとの組み合わせによって、徹底的に扱いやすさが磨かれた印象だ。追加されたIMUの情報がシフトタイミングの判断にも使われるようになり、さらに違和感が少なくなっている。新採用のクルーズコントロールの速度維持性能も秀逸で、長旅にはマストな機能と言えるだろう。

【排気量をアップしつつ軽量化も】270度位相クランクやユニカムバルブトレイン採用の水冷並列2気筒は、ストロークを6.3mm増やして排気量を998→1082ccに。ピストンやクランク形状など細部を見直して、MTで2.5kg、DCTで2.2kgも軽量に。 [写真タップで拡大]

【ショーワ製の電子制御サスペンションはESのみに設定】サスペンションストローク速度と車両の走行状態に応じて瞬時に減衰力を最適化するショーワ製電子制御サスペンションがEERA(イーラ)だ。手元のスイッチ操作で簡単にモード変更が可能だ。 [写真タップで拡大]

【シートレール別体化で-1.8kg】別体式となったシートレールはアルミ製で、前方の幅を40mm狭めた。メインフレームは右側ロアパイプを別体→一体構造とし、モナカ構造のピボットプレートは内板を高強度鋼に。クロスパイプは位置を見直す。 [写真タップで拡大]

ADVはバンク角に応じて照射範囲が変化するコーナリングライトをヘッドライト下に新設。

タンク容量はSTDの18Lに対して24Lを公称。フロントサイドパイプはオプションとなった。
シンプルなSTDは電サスの設定なし
ショートスクリーンを筆頭に快活なスタイリングを与えられたSTDのCRF1100L。ESのタイプ設定はないが、同じ仕様ならADVよりも12kg軽いのは魅力だろう。ホイールはチューブタイプとなる。

【HONDA CRF1100L AFRICA TWIN】●価格:MT161万7000円 DCT172万7000円
[△] 裏方に徹したエンジンはケレン味が欲しいところ
DCTのDモードでは、スナッチしないギリギリの2000rpm付近で足早にシフトアップし、100km/hでの回転数は3250rpmぐらいか。ライダーの意志に忠実に、機械として正しく進化した結果、先代よりも内燃機関としての印象が薄まってしまったような気がしてならない。
[こんな人におすすめ] 希少な21インチ。予算が許すなら電子制御サスペンション一択だ
21/18インチの大径ホイールで悪路走破性を狙いながら、日本仕様は短いサスストロークを標準としたことに矛盾を感じていたのだが、電子制御サスペンション仕様のESならオンもオフも両立できるであろうことを確認。価格上昇分も納得の内容だ。
●まとめ:大屋雄一 ●写真:真弓悟史
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