全10バリエーション展開、乗るならどれ?

’20ホンダCRF1100Lアフリカツイン、限定足長モデル〈S〉と電サスの関係を考察インプレ

’20モデルでフレーム刷新を伴うモデルチェンジを敢行したホンダCRF1100Lアフリカツインシリーズ。市場の要望に応える形で期間限定のロングストロークモデル〈S〉が追加投入されることになり、選択肢がさらに広がった形だ。ここであらためて長短ストロークモデルおよび電子制御サスペンション搭載モデルの試乗比較インプレッションをお届けする。


●文/まとめ:谷田貝洋暁 ●写真:関野温 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

’20新型ホンダCRF1100Lアフリカツインは、後から加わったロングストロークモデルの〈S〉を含め5種、MT/DCTの別を合わせて全10モデルのバリエーション展開となる。

  • STD
  • STD〈S〉
  • STD DCT
  • STD DCT〈S〉
  • アドベンチャースポーツ
  • アドベンチャースポーツ DCT
  • アドベンチャースポーツES
  • アドベンチャースポーツES〈S〉
  • アドベンチャースポーツES DCT
  • アドベンチャースポーツES DCT〈S〉

(上左)CRF1100Lアフリカツイン アドベンチャースポーツES (上右)同アドベンチャースポーツ(下左)同STD〈S〉 (下右)同STD

全グレード共通で6軸IMU搭載やフレームを大刷新

まずは車両本体に関するインプレッションから。特筆すべきはやはりフレームだろう。車体全体で4kg、フレーム単体で1.8kgもの軽量化が行われたとのことだが、走ってみればしなり具合の設定が本当に素晴らしい。開発陣いわく「重量車としての剛性を持たせながら、より積極的にしならせる工夫をすることで軽快感のある乗り味に仕上げた」とのことだが、まさにその通りなのだ。コーナリングひとつとってみても、非常に走りが軽快になった印象を受ける。

適度なしなりを与えることで軽快な操作感を創出。

軽量化を主眼に完全リニューアルされたスチール製フレーム。サブフレームがボルトオン式となり、アルミ化されたことで1.8kgもの軽量化を達成。またぎ部分も-40mmスリム化された。

IMUの搭載でさらに磨きがかかったという電子制御に関してもかなり感心させられた。一般道での試乗中には、狭くタイトなコーナーが続き、しかも路面は苔むし、その上に濡れた落ち葉が堆積する…なんていう最悪の状況をウエットコンディションで走るなんて場面に出くわしたのだが、まったくもって安心なのである。緻密さを増したトラクションコントロールとABS、また電子制御サスペンションがしっかり働いているのだろう。たしかに、走行モードとして一番マイルドな出力でトラクションコントロール制御も強い”アーバン”を選んだこともあるが、慣れてくれば積極的にブレーキをかけてアクセルを開けられるほど。こんな状況では普通、とにかくマシンを路面に対しての垂直を保ち、アクセルコントロールに全神経を集中したくなるものだが、この電子制御サスペンションを備えた新型アドベンチャースポーツなら鼻歌交じり。電子制御を信用するほどに気軽にというか、普段通りの操作ができるようになってくることに驚いた。もうこの電子制御サスペンションとさらに緻密さを増したトラクションコントロールとABSの組み合わせは、二輪車のツーリングモデルとして最強レベルと言っていい。

STDにはコーナリングライトがないため間違いやすいが、IMUはSTDもアドベンチャースポーツにも搭載されている。車両の走行状況、姿勢などをリアルタイムで計測。トラクションコントロールやウイリーコントロール、コーナリングABSといった電子制御をを行う上での情報として活用している。

STD:足長モデル〈S〉が限定登場

ツーリング性能を存分に確かめたところで、ステージをモトクロスセクションへと移す。やはり気になるのは、前述のとおり電子制御サスペンションがどれほどのモノか? ということ。手始めに電サス仕様のないSTDについて、ロングストロークモデル〈S〉とSTDモデルを乗り比べると、やはりSTDはストローク不足を感じることになった。ちょっと高めのジャンプをするとストロークを使い切ってしまうのだ。STDでしっかりオフロード走行をするつもりなら、ロングストローク仕様の〈S〉を選んだ方がより楽しめるだろう。 

STDのアフリカツインには、MT仕様とDCT仕様があり、カラーリングはグランプリレッドの単色設定。IMU関連の電子制御装置はアドベンチャースポーツと共通だが、ホイールはチューブ仕様となる。

ロングストロークモデルの〈S〉は、MT/DCTの両方にタイプ設定。つまり電子制御サスではない長足を手に入れるためには、STD〈S〉を選ぶ必要がある。

当初、日本国内ではフロントストローク185mm、リヤアクスルトラベル180mmの仕様のみが発売される予定だったが、市場からの強い要望で、230/220mの長足仕様も〈s〉としてタイプ追加されることになった。2020年5月31日まで受注期間限定発売となる。

ES仕様のタイプ設定がないノーマルアフリカツイン。ストローク185mmの標準仕様は、スプリングが2段レートとはいえジャンプで使い切る印象。ガンガン攻めるタイプならロングストローク仕様がオススメだ。

アドベンチャースポーツ/ES:電子制御サスペンションとストローク長の関係性は?

さて、一方のアドベンチャースポーツはというと? ESについては、ショートストロークモデルでも底突きしないのである。STD比で14kgほども重量が増しているにも関わらず、同じような跳び方をしても着地でサスペンションが破綻しなかった。確かに、あえてサスペンションに強い負荷がかかるような走りをすれば、ストロークの最後の最後で不自然に踏ん張る感覚があるにはある。しかし、それは底突きによる破綻とは別物。少なくとも僕レベルの腕でコース走行するぶんには、まったくもってショートストローク仕様で不足がない。確かに、ロングストロークモデルの方が懐が深く奥行きのある動きをするし、ナーバスな場面でのタイヤのトラクション状況をつかみやすいとは思う。だが、ショートストロークモデルであれば、しっかり足がつくおかげで、250kgの車体で軽々とアクセルターンが行え、あわやというときもがっつり踏ん張れる。よほど体格に恵まれたライダーならともかく、僕レベルの一般ライダーが駆るなら、足つきがいいことで得られる利点の方が多そうなのだ。

他の電子制御に関してもかなりダートで使える装備だ。特に6軸IMUを備えたことで、さらに緻密な制御を行うようになった印象。トラクションコントロールはよりテールスライドがやりやすくなった印象だし、DCTの変速タイミングもダートでは実に絶妙。正直な話、旧型アドベンチャースポーツに乗る僕を新型に乗る僕が追いかけるとしたら、ものの数週で周回遅れにできるだろう。それほどの性能差を新作には感じることになった。

アドベンチャースポーツには、マニュアルミッション仕様のSTDと、AT仕様のデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)仕様があり、それぞれのモデルで電子制御サスのES仕様が存在する。

トラクションコントロールの介入度は7段階。一番介入度が低い「1」にして、アクセルをワイドオープンすれば、気持ちよくリヤがスライド。ある程度滑ると電子制御が介入し、リヤが戻ってくる。

アドベンチャースポーツのカラーリングはトリコロールとブラックの2色設定。ブラックのダークネスブラックメタリックは、フレーム加えてスイングアームもブラックアウト。かなり引き締まった印象だ。

アドベンチャースポーツESには、MTにもDCTにもショーワ製電子制御サスペンションのEERA(イーラ)が組み込まれている。乗車人数や荷物有無などでプリロードを変更できるほか、走行中もサスストロークやIMUからの情報で減衰力を調整。ツアー/アーバン/グラベル/オフロードの各走行モードに合わせた減衰設定がプリセットされており、さらに細かいセッティング変更も可能だ。また、ジャンプの頂点で0Gを感知すると、着地の衝撃に備えて減衰調整を行うというジャンプ制御も初搭載。フロントストローク185mmとは思えない吸収性を見せる。

今回はモトスポーツランドしどきのコースを走ったが、正直なところ、電子制御サスペンションがあれば、よほど攻めるか、体格のいいライダーが乗らない限りストロークを使い切ることはないだろう。少なくとも一般のライダーならノーマルストロークで十分こと足りる。

’20年型で劇的な進化を遂げたホンダCRF1100Lアフリカツインの試乗インプレッション、次ページでは装備面の特徴とライディングポジションについて補足する。お楽しみに。

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