環境規制の端境期にあり、世代交代の節目を迎えているバイク。ラインナップに大変動が起きるのは必定だ。そこでヤングマシン創刊48年の知恵とカンをベースに、願望&妄想も織り交ぜながら、バイク未来予想を導き出してみた。
過激なモデルが続々登場する流れは当面続きそうだが、実は大幅な強化が予想される排ガス規制ユーロ6が未来に控えており、現在のようなハイパフォーマンスのガソリンエンジン車はこれでラストとなる可能性がある。バイクの近未来を大予想する前に、まずは現状を押さえておきたい。
想定内のユーロ5は”ツワモノどもが夢の中”
厳しい逆境で生物が進化するように、バイクも環境規制が厳しくなるたびに世代交代が進んできた。古くは2ストロークが、12〜13年前にはキャブレター車が消滅。しかし4ストロークやFI(フューエルインジェクション)が台頭し、高性能化を果たした。
近年は、ユーロ4および平成28年排ガス規制でOBD(車載式故障診断装置)やタンク内の燃料蒸発ガスを抑えるキャニスターなどが義務付けられ、ほぼ日本専用だったモデルが殿堂入り。一方で基準調和が進み、海外モデルが国内仕様として登場する例が増えた。
そして、’20年から欧州でユーロ5が新型車に導入され、国内にも’20年12月から順次適用される。’20年から’21年にニューモデルが相次ぐのは、これが理由。有害物質の一層の削減が必要な上に、全排気量で同じ値が求められる。厳しい要求だが、ユーロ4と5はセットで計画された2段構えの規制。従ってユーロ4をクリアしていれば、多くの場合、OBD(車載式故障診断装置)の変更や触媒の大型化で対応できるのだ。
現に大部分のモデルが規制適合しつつ、パワーは横並びか増加している。ユーロ3→4移行時より生産終了モデルは少なくなるだろう。これで規制レベルはクルマにほぼ追いつき、目指すべき一定の水準に達したことなる。
内燃機の究極は残り3年で出し切る!
が、次に控える「ユーロ6」で、大幅な強化が噂されている。詳細や導入時期は今後煮詰められるが、馬力ダウンや重量増、コストアップを余儀なくされるとの情報。車両メーカーはそれを見越し、ユーロ5時代(’20年から少なくとも’23年末まで)に、可能な限りパフォーマンスを絞り出した記念碑的マシンを送り出す動きがある。その一例にして先兵がホンダのCBR1000RR-R。今回の大予想特集では、ユーロ5移行に伴う世代交代に加え、究極マシンが数多く登場するが、こうした背景を汲んでいるのだ。
そして10年後の’30年以降、電動化の流れがイッキに加速するハズ。つまり’24モデルまでが”究極”のマシンを買える最後の時代になるかもしれないのだ。とはいえ技術の進化で未来が覆る可能性もある。そんな目で本特集を眺めると、より楽しめるに違いない。
“これまで”と”これから”のバイク関連規制年表
〈1998〉平成10年排出ガス規制
〈1999〉ユーロ1+平成11年排出ガス規制
【さよなら2スト】バイクを対象とする大規模な規制がここからスタートした。オイルとガソリンを燃やす2ストローク車は、250クラスが全滅。同じく燃費の悪い4ストレプリカ勢も姿を消した。またGSX1100Sカタナなど基本設計が’80年代のバイクも絶版に。GPz900Rは、2次エア導入装置などで延命したが、’03年に殿堂入りした。
〈2005〉ユーロ2
〈2006〉平成18年排出ガス規制
〈2007〉ユーロ3
【さよならキャブレター】大幅に規制値が強化され、スクーターや125クラスで生き残っていた2ストは全車が絶版に追い込まれた。4ストはFI化や触媒の大型化が必要となり、特にキャブレターのビッグバイクはほぼ淘汰。ただし中にはSR400のように全面改修でFI仕様になったモデルもある。なお測定モードが欧州と異なり、国内入荷しない車両も出た。
〈2012〉平成24年排出ガス規制
〈2016〉ユーロ4+平成28年排出ガス規制
【さよなら日本専用】H24年規制で、国内独自の試験方法から、国連で定めたWMTCモードに変更。さらにユーロ4と同内容のH28年規制で一層グローバル化が進み、ZRX1200ダエグなどのビッグネイキッド、400アメリカン、モンキーといった、ほぼ日本専用だったモデルが軒並み終了に。
〈2020〉ユーロ5+令和2年排出ガス規制
【さよならロングセラー】そして現在。メガスポーツとして人気だったZX-14R、’85年の初代225から代を重ねたセロー250が終了に。セローは排ガスに関してはまだ猶予があるが、灯火類などの規制もあって殿堂入り。’21年10月以降発売の126㏄以上に対し、ABSも原則的に義務化される。
〈2024〉ユーロ6
【さよなら超パワー】ユーロ4の延長線上にあった5に対し、次期規制はよりクリーン化が求められるとの情報。残念ながら、最新スーパースポーツが達成した220㎰オーバーのような馬力は、ユーロ5限りで終了となりそうだ。具体的な内容や実施時期は今後決定されるが、これまでの通例から4年後になるだろう。
〈2030〉欧州を中心に内燃機関が販売禁止に
【さよならガソリン】既に世界各国がガソリン&ディーゼル車の販売禁止を表明しており、北欧やドイツで’30年から開始予定。イギリスや台湾は’35年、フランスとスペインは’40年までに全面禁止となる。東京都が’40年代までに販売ゼロを目指すなど日本も流れから逆らえない。電動バイクの時代は近い?
●文:沼尾宏明/ヤングマシン編集部 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ヤングマシンが長年の知見とカンにより導き出したバイク近未来予想。次ページからは希望のニューモデルリストを一挙公開。まずはスーパースポーツ編から。
〈特集〉バイク新車近未来予想
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