エンジン音、振動、ギヤシフトのキックバック、パワーバンドまで……

【映像】2スト250ccにも4スト600ccにも化ける?! 電動バイク「EMULA」はエンジンを操る感覚を完全再現

  • 2020/6/9
Emula-2electron

イタリアの2electionが発表した「EMULAコンセプト」という電動バイクは、モーターとバッテリーを搭載していながら、内燃機関が発する音や振動といった体感要素を発する。しかも、2ストロークエンジンや4ストロークエンジン、排気量の違いや気筒数の違いまで感じさせるというのだから驚きだ。

足りないのは焼けたオイルの匂いだけ?

イタリアで突如発表された2electionの「EMULA コンセプト」は、その名の通りエミュレーション技術(疑似的な手段で模倣して代替動作させること)を生かした、電動バイクならではの新しいアイデアに満ちたスポーツバイクだ。EMULA コンセプトは、「McFly」と名付けられたテクノロジーによって電動モーターを制御することで、無数にある燃焼エンジンのパフォーマンス、ギヤ段数、ギヤ比、パワーバンド、サウンド、振動を正確にエミュレートするのだという。

人間の感覚というのは面白いもので、たとえば日産ノート(四輪)などが採用するシリーズハイブリッドは、発電のためだけにエンジンを回して駆動はモーターによって行う仕組みなのだが、多くのドライバーはエンジンが回っている音と振動を感じ取ることで、駆動力を発生しているのもエンジンであるかのように感じてしまう。これと同じような、いやそれ以上のエンジン感覚を味わうことが、EMULA コンセプトならできそうなのだ。

エンジンを懐下に抱えて走るバイクの場合、走行フィーリングの違いを生み出す要素としてエンジンの占める割合はとても大きい。回転とともに上昇/下降するサウンドや、身体に伝わる振動、スロットルを開けたときのトルク感などの違いをイメージしてみてほしい。それらは、趣味のバイク選びにも多大なる影響を与えるものだろう。2ストロークの振動と劇的なパワーバンドの虜になっていれば、あの頃のバイクをもう一度買えないかと夢想してしまう。またはビッグシングルの鼓動とトルク、また4気筒の突き抜けるような加速感……。

しかし燃焼エンジンは通常、バイク1台に対して1基となっている。カスタムでもフィーリングは変わるが、2ストロークが4ストロークになるような劇的な変化を求めるなら、手間とコストをかけて積み替えるしかない。これをエミュレートしてしまおうというのが、EMULA コンセプトの最大の面白さと言えるだろう。

【映像】ベンチ上で再現しているのは4気筒スーパースポーツ600cc、 Lツイン800cc、そして1989年のNSR250Rか

テストベンチ上では3種類のエンジンをエミュレートして見せている。まずは1999年の4ストローク4気筒600ccだ。1万3000rpmという最高出力発生回転数から見るに、初代YZF-R6だろうか。100馬力(下記パワーグラフ参照)となっているのはモーターの最大出力によるものだ。クラッチを操作しながらギヤチェンジし、各操作によってエンジンサウンドが響き渡る。

そして次に、2004年モデルの2気筒800ccだ。こちらは90度Lツインの可能性が大。270度並列2気筒はこの頃、ヤマハの850ccしかなかったはずで、800ccといえば空冷のモンスター800が登場したばかり。

最後に登場したのは1989年の2ストローク2気筒250cc。90度Vツインの音と思われるので、年式的にはNSR250RもしくはRGV-Γだろうか。乾式クラッチの音はしない。燃料タンクの位置にはサブウーファーがあり、シート後部やハンドルバーの付け根、ステップには振動エミュレーターが設置されているようだ。

これらを変更するには8インチのTFTダッシュボードを使う。イメージしてみてほしい、簡単なスワイプ操作で2ストローク125ccから4気筒750ccまで、思いのままのエンジンに切り替えていくさまを。

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EMULAがダイノ上でエミュレートした3種類のエンジンスペックがこちら。『エモーション・チャージャー』というサブタイトルからもわかるように、心に訴えてくるエモさがある。 [写真タップで拡大]

こちらは、昨年のEICMA2019で発表された際にイタリア人ジャーナリストが取材した模様を伝える映像だ。残念ながらイタリア語は全くわからないが、燃料タンクの上を触ると振動が伝わってくる様子などが収録されている。

2electionの「McFly テクノロジー」と「EMULA コンセプト」の概要

■2electronはMcFlyテクノロジーを開発して、モーターおよびモーターサイクルの世界でユーザーエクスペリエンスのレベルをかつてないほど高めた。

■McFlyシステムは電気モーターを管理して、ほぼ無制限の数の燃焼エンジンのパフォーマンス、ギア数、ギア比、パワーバンド、音、振動を正確にエミュレートする。

■McFlyの最初のアプリケーションである「EMULA」電動バイクは、燃焼エンジンを動力源とする従来のバイクでアクセルをひねり、ギアを変更し、クラッチを使用したときと同じ感覚を与えてくれる。

■McFlyの仮想化により、電気モーターをさまざまな異なる燃焼エンジンとまったく同じように動作させることができる。必要なのは、ただディスプレイ上で望むものを選択するだけだ。

■EMULAによって、夢に描いたバイク、16歳のとき最初に乗ったバイク、または街で目を惹いたスーパースポーツのエンジンを“使う”ことができる。

■ヘルメット内でエンジン音を鳴らすことにより、外部ノイズゼロで乗ることが可能。もちろんローカルエミッションと環境ノイズもゼロとしながらライディング体験を実現する。

■McFlyテクノロジーは、2輪または4輪のすべての電動ビークルに対応できる。

■システムは完全にまたは部分的に無効にすることができる。EMULAは、ギヤボックスとクラッチなしで、アクセルとブレーキだけを使用して、他の電動バイクと同様に乗ることも可能だ。

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8インチのタッチスクリーンディスプレイによってさまざまなエミュレーションを切り替えることができる。 [写真タップで拡大]

今までの電動バイクに欠けていたのは……

エンジンが回転する感触、シフトアップしたときにリヤタイヤが路面を蹴る感じ、排気音の咆哮……。これらが、今までの電動バイクに欠けていたものだ。ここに目を付けた2electionが開発したのは、EMULAコンセプトに搭載したMcFlyテクノロジーだった。EV体験をガラリと変え、燃焼エンジンを搭載したバイクと同じ感覚を味わえる、初めての電動バイクになる可能性があるわけだ。

McFlyシステムは加速や回生ブレーキのコントロールにとどまらず、ライディングで使うアクセル、クラッチレバー、シフトペダルにセンサーとアクチュエーターを使用してバイクからのリアクションを再現。さらには、動力制御でトルクとパワーカーブ、エンジンブレーキを、スピーカーとバスウーファーによってメカニカルノイズ、排気音、さらには振動といった、内燃機関の持つ特徴が忠実に再現されている。

そして、これらを総合的にコントロールするMcFlyシステムはさまざまなエンジンをエミュレート可能。将来的には、1980年の2ストローク125ccから最新の4気筒750ccレーサーまで、簡単な操作で“エンジンを”オンラインストアからダウンロードできるようになるという。

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多彩なオプションを表示。本来は存在していないギヤポジションを表示しているのもイカス。 [写真タップで拡大]

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右はMcFlyシステムを使うモード。左は「退屈」と題された、ノークラッチ、ギヤチェンジ不要の『普通』の電動バイクモードだ。 [写真タップで拡大]

仮想エンジンで、どうやって実際のライディング体験を提供するの?

McFlyシステムは、選択したギヤと他で取得&計算したデータに基づいて電気モーターの出力を管理し、エンジン速度と負荷に対して予想されるエンジンおよびドライブトレインノイズと排気音を生成するという。

そしてギヤセレクターとクラッチレバー、およびデータをMcFlyに送信するために必要なセンサー、トランスミッターなどにより、機械的フィードバックを作成するシステムまで構築している。従来のクラッチやギヤボックスとまったく同じように、クラッチを斬ったり繋いだり感触をクラッチレバーに生じさせ、ギヤを変更する直前にシフトペダルが「硬く」なる。ギヤの噛み合い(だけでなくシフトミスのクラッシュ音までも!)は、バイクの前部に組み込まれたスピーカーによってシミュレートされ、さらにリアルになるようにランダム化されているため、毎回音が同じになることはない。

スピーカーは、機能に応じてバイクのさまざまな場所に設置。フロントスピーカーは、エンジンの吸気音やバルブトレインのノイズ、およびギヤボックスの音などを生成する。一方、リヤスピーカーは、スロットルを戻した際の排気音とバックファイア音を生成。そしてウーファーは、燃焼エンジンの典型的な振動を生成する。これらの振動は正確にエミュレートされ、エンジン速度だけでなく、エンジン負荷、選択したエンジンのタイプ、およびその他の測定/計算されたパラメーターにも基づいて変化するのだ。

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アクチュエーターによって現実のエンジンと変わらないリアクションをするというシフトペダル。 [写真タップで拡大]

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シートカウル下にはリヤスピーカー。それ自体をデザイン要素としてしまっているのもイタリア人らしい? [写真タップで拡大]

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サイドカウルはカーボン。音響的な考えからこの素材にしているのかは不明(特に書いてなかった)。 [写真タップで拡大]

McFlyテクノロジーはカスタマイズ機能が豊富

・Emulaダッシュボードには、8インチのタッチスクリーンディスプレイが組み込まれる。タッチ操作だけでなく、ハンドルバーの右側にあるジョイパッドも使用可能。

・ギヤ比と最高速度は、選択したエンジンによって変化。800ツインは6速1万rpmで200km/hに達し、4気筒600は1万4000rpmで250km/h以上に。エンジンが特定の速度に達すると回転リミッターに「ぶち当たる」感触も!

・McFlyシステムは、選択されたエンジンの動作をエンジンブレーキやトルクの供給など、細部にわたって再現。 4気筒600ccのスポーツバイクエンジンは、低回転域ではトルクが細くなるが、高回転域でパワーバンドに突入すると伸びのある加速感となる。800ccツインは低回転からミッドレンジで力強いトルクを発生。1万rpmでレッドラインに達する。また、McFlyシステムは低回転でのトルク変動などエンジンごとに異なる癖まで再現し、ギヤを激しく落としてエンジンブレーキが作動すると、後輪をロックする挙動まで出る(安全上の理由からそれほど厳しくはない)。2ストローク250の場合、エンジンブレーキは弱く、パワーバルブが排気ポートを開くと、パワーバンドに突入する。

・エミュレートした音量と人工的な振動の強さは調整可能。

・ギヤボックスのエミュレーションは、EMULAパワートレインの制限内で全てのギヤ比をカスタマイズ可能。これについては、ダッシュボードまたはアプリを使用してギヤボックスの変更を即座に行うことができ、実際にボックス内のギヤを変更する必要がないため、トラック上では顕著な利点となる。

・チューニングも瞬時に反映。スポーツエキゾースト、ハイフローエアフィルター、またはその他のオプションを選択するだけだ。そうすると、例えば高回転型になるとパワーが増加し、同時に低回転域のトルクが小さくなる。エンジンと同じようにサウンドとパフォーマンスが変化するのだ。

・車重と空気抵抗の係数は、エミュレーションを可能な限り現実的にするために考慮。選択されたエンジンに応じて、McFlyは関連する重量と空力抗力を計算される。EMULAプロトタイプの重量は200kg未満だが、250ccの2ストロークは通常150kg未満。しかし、このエンジンをエミュレートすると、McFlyは余分な重量を補うだけのパワーを提供するので、バイクは実際のバイクのエンジンと同じレスポンスを持っているように感じられる。仮想バイクがエミュレートするバイクより実際に軽い場合、システムは逆の調整を行う。これにより、EMULAはライダーに実在するバイクと同じパフォーマンスとフィーリングを提供できる。カウル付きのバイクを想定するなら、そのぶん空気抵抗も小さく計算されるのだ。

・このテクノロジーでは高性能バイクをエミュレートすることができるため、McFlyにはペアレンタルコントロール機能が付属している。これを使用すれば、それほど強力でないエンジンのみ選択できるように制限できる。

・他のエンジンをダウンロードできるEMULAオンラインストアがあり、将来的にはより多くのエンジンを利用できるようになる。プロトタイプは4気筒600cc、800ccツイン、2ストローク250ccだ。

・McFlyシステムには汎用性と可能性があり、あらゆるEV(4輪車も含む)、または燃料電池で動く車に使用できる。

・とはいえ、EMULAの車体はフルサイズのスポーツバイク。エミュレート可能なエンジンは多岐にわたるが、たとえば原付の出力でスーパースポーツバイクに乗ることに、あまり意味はないだろう。

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サーキットでもアプリやダッシュボードを使用して次々にセッティング……というよりもエミュレートするエンジンそのものを変更していける。さらに細かいチューニングも可能というから、遊びの可能性は無限大だ。 [写真タップで拡大]

ゲームの機体のようにライディングモードを変更可能!

McFlyテクノロジーにより、選択した各エンジンにさまざまなライディングモードも適用可能。主要なモードは2つある。

【BORING(退屈)モード】McFlyシステムを無効化し、EMULAは普通の電動スポーツバイクになる。音は歩行者の安全のために低速時のみ生成され、ライダーが使うのはアクセルとブレーキのみ。ただし最高速度は250km/hなので、それほど退屈とは言えなそうだ。

【McFlyモード】エミュレーション項目のすべてまたは一部を有効化する。ギヤボックス、クラッチ、音、振動、エンジンブレーキなど。

さらに、McFlyシステムは多様なエミュレーションモードで多様なライダーにフィット

【リアルエミュレーション】低回転でクラッチを素早く離しすぎるとエンジンが失速し、低回転で走行しているとエンジンストールを起こす。クラッチを適切に使用せずにギヤチェンジしようとすると「クラッシュ音」が聞こえ、シフトミスしてしまう可能性さえある。

【イージーエミュレーション】リアルエミュレーションを踏襲しつつ、ソフトウェアによってライダーの操作ミスを修正。低回転でクラッチをつないでもエンストしない。ギヤチェンジもミスが修正される。低回転ではレスポンスが穏やかになる。言ってみればハードモードとイージーモードだ。

【アーケードエミュレーション】イージーエミュレーションの派生。このモードではクラッチを使用せず、クイックシフターを実装したのと同じように操作できる。また、発進/停止時にクラッチを使用する必要がないのも利点。

【ビギナーエミュレーション】アーケードエミュレーションに基づきつつ、McFlyシステムがギヤをシフトする。ライダーはアクセルとブレーキを使用するだけ。McFlyシステムは、ライダーからの入力に応じて、多かれ少なかれスポーティな方法でクラッチとギヤボックスを管理する。退屈モードとは異なり、音と振動がある。パワーバンド、ギア数、ギア比は、エミュレートされたエンジンのものだ。

【重要:サイレントファンモード】McFlyシステムのすべてのエミュレーションがONになるが、バイクのスピーカーからは音が出なくなる。その代わり、Bluetoothを介してヘルメットのインカム等に接続され、エンジンを搭載したバイクに乗っているような感覚を再現できる。振動はエミュレートされるが、近所迷惑を発生させるリスクはない。たとえば、夜の住宅街でも2ストロークのオフロードバイクにも乗れるし、同じように森の中でも排気ガスや騒音を発せずに走ることがでる。

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シビアな『リアルエミュレーション』でも、オートマ感覚に近い『アーケードエミュレーション』でも、それぞれに楽しむことができる。 [写真タップで拡大]

「2electronは革新的な新興企業で、Jonathan Duòのアイデアに触発されたZener Srl(イタリア・トリノ)のスピンオフであり、自動車メーカー向けエンジニアリングおよび品質サービスを専門とする会社と自動車業界向けのコンポーネントを提供する会社であるZenerの支援を受けているという。この新会社は、自動車業界におけるZenerの経験と成功のおかげで、EV設計の発展途上にニッチ市場を作り出した」

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