’19年秋の東京モーターショーやEICMAが大いに盛り上がったことからもわかる通り、今年’20年は新車の当たり年。中でもスーパースポーツ1000㏄クラスは、究極の「走る・曲がる・止まる」を追求するとともに、レースを視野に入れた公認取得マシンとしての性格も併せ持つため、国産各メーカーの威信を賭けた戦いが繰り広げられるカテゴリーだ。
●文:沼尾宏明、宮田健一 ●写真:真弓悟史(CBR1000RR-R FIREBLADE SP) ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
SS1000クラス ’20展望:ホンダ渾身の意欲作でスーパースポーツの勢力図が塗り替わるか!?
各社の威信を賭けた最先端メカを満載し、さながら技術の博覧会の様相を呈する大型スーパースポーツ(SS)。スーパーバイク世界選手権(SBK)や8耐など耐久レースのベース車としても活躍する。大台の200psが一般的となったが、近頃ではさらなるパワー競争がトレンドとなっている。’19年にはカワサキNinja ZX-10RRが204ps、ドゥカティ パニガーレV4Rが221psをマーク。しかも、一段と厳しくなった排ガス規制=ユーロ5相当をクリア済みというのだから驚異的だ。
そして’20年は、ホンダCBR1000RRが’08年以来となる2度目のフルチェンジで217.6psに到達した。車名をCBR1000RR-Rとし、国産勢初となるダクトウイングまで獲得。従来の優等生的な設計から、レースでの”勝ち”を狙った本気のパッケージに熱い視線が注がれている。
これに対するライバルは、全日本JSBや鈴鹿8耐の常勝マシン・ヤマハYZF-R1が’20年型でエンジン内部パーツや足まわり、電子制御など全身を熟成し、ホンダを迎え撃つ。SBK5連覇中のZX-10Rと’19世界耐久を制したスズキGSX-R1000はともに静観の構えだ。
- CBR1000RR-Rが国産勢でもっとも進化したパッケージを獲得
- YZF-R1がリファイン
- スズキ、カワサキは静観
HONDA:勝利のための総力を結集〈CBR1000RR-R FIREBLADE SP〉
’92年の初代CBR900RR以来、進化を重ねてきたホンダの旗艦スーパースポーツが、12年ぶりに完全刷新する。従来から”トータルコントロール”をコンセプトに掲げてきたが、その主要ステージを公道からサーキットへ移行。その決意は「R」をひとつ増やした車名にも現れている。すべてが白紙から設計され、心臓部の直列4気筒は192psから217.6psへと劇的にパワーアップ。ボア×ストロークやピストン、チタン鍛造コンロッドなど、各部にMotoGPマシンRC213Vや公道版RC213V-S譲りのノウハウが息づいている。車体は’04年から継続採用してきたユニットプロリンク式リヤサスと決別し、軽量なメインフレームを投入。さらにセンターラムエアを獲得するとともに、クラス最小の空気抵抗値0.270を実現した。車体安定性に貢献するダクトウイングまで獲得し、まさにホンダの本気が詰まった最先端SSとなる。
【CBR1000RR-R FIREBLADE〈STD〉】第2世代のオーリンズ製電子制御サスを装備するSPに対し、STDは機械式のショーワ製前後サスを備える。双方向対応のクイックシフターもSPのみ標準採用だ。SP/STDともにトリコロールと単色ブラックをラインナップする。 ●YM予想価格:245万3000円 ●予想発売時期:3月20日
YAMAHA:人機官能の革命児〈YZF-R1M〉
’98年の初代から22周年を迎えるヤマハ渾身のスーパースポーツ。’15年の8代目で、国産勢に先駆けて全面刷新し、MotoGPマシンの血統を色濃く継いだサーキット指向のマシンに生まれ変わった。最大の特徴は、クラス唯一の不等間隔爆発を採用したクロスプレーン直列4気筒。”スイート”と評される圧巻のトラクション性能が武器だ。’20年型では動弁系パーツのリファインや吸気レイアウトの更新など細部にわたる変更を実施。排ガス規制ユーロ5に先行対応しつつ200㎰を堅持し、高回転域のトルクアップも果たした。さらに電脳も強化。アクセルグリップ自体にセンサーを備えるAPSGライドバイワイヤを採用したほか、2モードのコーナリングABS、3モードのエンジンブレーキ制御とタイムに影響するブレーキ特性を引き上げた。ボディは空力特性を向上し、上級版Mの足まわりを向上するなど、一切手抜かりはない。
【YAMAHA YZF-R1】STDは樹脂製カウルとKYB製の機械式前後サスを備え、Mよりも1kg軽量だ。車体カラーは2色設定。●YM予想価格:230万円~ ●予想発売時期:’20年8月頃
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