’19年秋の東京モーターショーやEICMAが大いに盛り上がったことからもわかる通り、今年’20年は新車の当たり年。中でもスーパースポーツ1000㏄クラスは、究極の「走る・曲がる・止まる」を追求するとともに、レースを視野に入れた公認取得マシンとしての性格も併せ持つため、国産各メーカーの威信を賭けた戦いが繰り広げられるカテゴリーだ。前ページのホンダCBR1000RR-RとヤマハYZF-R1Mに引き続き、本ページではスズキGSX-R1000R、カワサキNinja ZX-10R/Ninja H2カーボンを紹介する。
●文:沼尾宏明、宮田健一 ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
各社の威信を賭けた最先端メカを満載し、さながら技術の博覧会の様相を呈する大型スーパースポーツ(SS)。スーパーバイク世界選手権(SBK)や8耐など耐久レースのベース車としても活躍する。大台の200ps[…]
SUZUKI:SS界のオールラウンダー〈GSX-R1000R〉
“OWN THE RACETRACK”を標榜し、’01年にデビュー。当初からストック状態での速さとコスパの良さが評判を呼び、’17年型でMotoGPマシン譲りの技術を継承する6代目に進化した。直列4気筒ユニットは国産勢で唯一の可変バルブ=SR-VVTが特徴。従来から自慢の低中速トルクを活かしたまま圧巻の高回転パワーを獲得する。ライバルと比較してもとりわけコンパクトな車体や従順な特性、MotoGPマシン譲りの空力ボディも魅力だ。GSX-R1000RはコーナリングABSやショーワ製バランスフリーフロントフォークを与えた上級版。’19で初のマイナーチェンジを受け、スイングアームの可変ピボット機構とステンメッシュフロントブレーキホースを導入。STDとともにマフラーのヒートガードを大型化した。
KAWASAKI:SBKの覇者〈Ninja ZX-10R KRT EDITION〉
“扱いやすい故に速い”をコンセプトとするカワサキの最高峰SS「Ninja ZX-10R」。’04年に初代がデビューし、’11でいち早く200ps、’19で+4ps(RR)を達成した。レースで強く、SBKではジョナサン・レイが5年連続でタイトルを獲得。’19年の鈴鹿8耐では、5連覇を狙うヤマハR1から見事栄冠を奪取し、26年ぶりにカワサキに優勝をもたらした。等間隔爆発の直列4気筒は、’19年型で高回転化を促進するフィンガーフォロワーを採用。全域でトルクが立ち上がりキレイに回転が伸びるため扱いやすく、頭打ち感もない。サブタンク付きのショーワ製バランスフリーフロントフォークをはじめ、電子制御スロットルやボッシュ製6軸IMUなど、SBKワークスマシンのノウハウを随所に注入するのも特徴。’20年型では、KRTカラーを最新SBKマシンと同様に変更し、ジョナサンの気分を存分に味わうことができる。
Ninja ZX-10RR
レースを想定したRR仕様は、通常版より102g軽量なチタンコンロッドを採用。レブリミットは+600rpmとし、1ps上乗せした204psを発生する。加えて、専用チューンを施した前後サス、マルケジーニ鍛造ホイール、シングルシートもRRならではのアイテムだ。’19年に世界500台で限定生産され、シリアルナンバープレートも与える。
Ninja ZX-10R SE
減衰力の反応速度が抜群に速いセミアクティブサス=ショーワ製KECSを備えるSE。ロード、トラック、マニュアルの3モードからサス設定を変更でき、SSながら日常からサーキットまでカバーする懐の広さがウリだ。RRと同様にマルケジーニ鍛造ホイールを備え、シリーズで唯一、小キズを自己修復するペイントを採用している。
KAWASAKI:二輪版スーパーカー〈Ninja H2 CARBON〉
ここまで紹介してきた大型SSとは異質な1台で、ラップタイムより「圧倒的な加速」という独自の世界観を追求したモデル。これを実現したのが二輪市販車で世界初のスーパーチャージャー(SC)だ。川崎重工業ガスタービン部門の協力を得て、SCを自社設計。クランクの動力で回転する羽根車によって機械的に過給し、中速域では排気量以上の太いトルクを、8000rpm以降では強烈な加速を生み出す。これを支えるフレームは、軽さと剛性、しなやかさを兼ね備える鋼管トレリス製。航空宇宙カンパニーの空力専門家と共同設計したエアロボディ、迫力あるデザインも白眉だ。’15年の初登場から熟成を重ね、’19では26ps増で驚異の231psに到達。最新のブレンボ製Stylemaキャリパーも獲得した。さらに同社初のスマホ接続機能やETC2.0車載器も導入し、使い勝手も増している。
Ninja H2R
保安部品を外したクローズド専用のRは、本来の性能である310psを発揮。ラムエア加圧時は326ps(!)まで高まる。チタンマフラーやダウンフォースを稼ぐウイング付きのカーボン外装を奢るスペシャルな仕様だ。
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