止まらぬ川重パワー “レジェンド”も再建へ

往年の名車・伊ビモータがカワサキH2エンジンを得て現代に蘇る!【テージH2】

  • 2020/1/12

2019年、無双の存在感を見せつけたカワサキ。そのクライマックスとして発表された、あの伝説的ブランド・ビモータ復活にひと肌脱ぐというニュースには世界中が驚かされた。カワサキのこの勢い…、もう誰にも止められそうにない!? 本稿ではEICMAで発表された新型「テージ H2」についてあらためて解説する。

買収やブランド利用ではない、共同再生プロジェクト

近年になって、”超”が付くほどの絶好調モードを維持しているカワサキ。だからと言って、カワサキがビモータの復活に尽力するというのは、誰にとっても予想外の展開に違いない。’70~’80年代中盤に、カワサキ並列4気筒+ビモータ製シャシーのKB1~3が販売されたことはあるけれど、以後の両社に接点はなかったのだから。

「今回のプロジェクトの発端は、今から3年前に投資銀行から、イタリアの2輪メーカーに興味はあるか?と相談を持ちかけられたことです。当初は社名は伏せられていましたが、資料を見た時点ですぐに、ビモータだと気づきました。私を含めたバイク好きにとって、かつてのビモータは憧れの対象でしたからね。それで、まずは旧ビモータのCEOだったマルコ・キアンチアネージ氏、続いて伝説的なデザイナーのピエルルイジ・マルコーニ氏と連絡を取り、2人とじっくり話をしたうえで、再始動の準備を始めました」

そう語るのは、川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニーの企画本部長を務める伊藤浩氏だ。

川崎重工業株式会社モーターサイクル&エンジンカンパニー 企画本部長 伊藤 浩さん

【川崎重工業株式会社モーターサイクル&エンジンカンパニー 企画本部長 伊藤 浩氏】「ビモータはイタリアで生まれ育った高級ブランド。イタリアを拠点にイタリア人がデザインし、イタリアで作らなければ、その価値は失われてしまう。となればすべきことは明らか。我々は裏方に徹して、カワサキエンジンの新生ビモータをサポートしていきます」

’72年創業のビモータは、市販車とレースの世界で数々の偉業を成し遂げたが、近年は業績不振で実質的な活動を停止。また、マッシモ・タンブリーニとフェディリコ・マルティーニに次ぐ第3のテクニカルディレクターとして、’80代末〜’90年代のビモータを支えたピエルルイジ・マルコーニは、’00年代はアプリリア/ベネリで手腕を奮い、’15年にビモータに復帰していたが、業績不振の状況で理想の追求はできなかった。

「私が’16年秋にイタリアを訪れた際は、マルコーニ氏はすでにビモータを離れていましたが、新規プロジェクトの概要を説明したところ、復帰を快諾してくれました。いずれにしてもマルコーニ氏と丸一日に渡って、時間を忘れてバイクの話をする中で、私は新生ビモータの成功を確信したんです」 

今回の新規プロジェクトで興味深いのは、カワサキが’19年4月に立ち上げたIMIという会社を母体としたうえで、買収ではなく、カワサキ:49.9%、旧ビモータオーナー:50.1%という比率で、合弁会社のビモータS.P.A.を新設すること。つまりカワサキには、ビモータを自社の意向に従わせようという意識はないのである。「ビモータはイタリアのブランドですから、日本人がしゃしゃり出て、ああだこうだとやるべきではないでしょう。マルコーニ氏を筆頭とするチームが仕事をしやすいように環境を整えること、イタリアの至宝にかつての輝きを取り戻してもらうことが第一義で、今回発表したテージH2に関しても、カワサキは開発にタッチしていません。もちろん、ビモータが当社のパワーユニットや電装系を使うことで、カワサキのブランド力が上がってくれれば……という期待はありますけどね」

KAWASAKI H2

’90年代末に発売した500Vドゥエを除く歴代ビモータは、他社製エンジンを転用して開発。新生ビモータが世に送り出す「テージH2」のエンジンドナーはニンジャH2で、もちろんスーパーチャージャーを装備する。

装備やエンジンはH2ながら、ほとんど別物のようなスタイリング

KAWASAKI×BIMOTA TESI H2

ホワイト×レッドのカラーリングはビモータの定番で、’73 年発表の第1号車・HB1(CB750Fourエンジン搭載)以来、数多くのモデルが採用。ボディの左右に備わるカーボン製ウイングは、フェアリングに後付けしたパーツではなく、エアインテークと一体成型。

KAWASAKI×BIMOTA TESI H2

ヘッドライトやテールランプ、バックミラーなどもH2と共通だが、デザインが巧みなためか、悪い意味での流用感は皆無。ナンバープレート+リアウインカーをスイングアームマウント式としたため、テールまわりはH2よりスッキリした印象。

KAWASAKI×BIMOTA TESI H2

カウル前面はインテークらしき造形だが、ダクトを介してエアクリーナーボックスにつながるのは、左ウイング下の開口部のみ。

KAWASAKI×BIMOTA TESI H2

’90~00年代には、オリジナルメーターを採用したビモータだが、テージH2では原点に返る形で、ドナーの計器をそのまま踏襲。左右スイッチやグリップ、ブレンボ製マスター、オーリンズ製ステダンなども、H2と共通だ。

KAWASAKI×BIMOTA TESI H2

今回はスペックの発表はなし。一部のエンジンカバーは変更されているが、パワーユニットは231㎰を発揮するニンジャH2用を、そのまま搭載すると思われる。マフラーもH2用をそのまま踏襲する。ちなみにかつてのビモータは、ほぼすべての車両でマフラーを自社開発していた。

次稿では、ビモータ・テージ H2に搭載されるカワサキ製スーパーチャージドエンジンH2のパワーを車体側がどのように受け留めるのか、独創的なハブセンターステアリングなどについて解説する。

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