ホンダが誇るスーパカブ系における究極のアウトドアマシンだった“ハンターカブ”ことCT110が生産終了となってから7年、最新スーパーカブC125をベースとしたハンターカブコンセプトの「CT125」が第46回 東京モーターショー2019(10月23日開幕)で初公開される。
“ハンターカブ”の名に恥じないタフ装備で、実車の発売も遠くない?
草むらや泥濘地、なんなら水の中でも……。アップマフラーや、それと同じくらいの高さの大型キャリアに配置された吸気ダクト、懐かしいパターンのブロックタイヤなど、アウトドアの厳しい環境でもタフに走り抜けるための装備が、とにかくカッコいい!
ホンダが東京モーターショー2019で世界初公開するコンセプトモデル・CT125は、“ハンターカブ”の愛称で知られる往年のCT110を、現代の技術で復刻するもの。これをつくり上げたのは、スーパーカブC125やモンキー125の開発で知られる、ホンダがタイに開設したデザインR&Dセンターだ。CT125のベースとなっているのは、上質な運転感覚や高品質なディテールで人気となっているスーパーカブC125――。
……ここで思い出してほしい。モンキー125やスーパーカブC125が登場したとき、最初に「デザインスタディのためのコンセプトモデル」などとして公開され、それから長い時を待たずして市販化に漕ぎつけていることを。
ホンダの「東京モーターショー出展モデル事前撮影会」に出席した我々取材班は、CT125のあまりのカッコよさ、かわいさに、すっかり魅了されてしまった。多分に希望も含んでいるが、これを発売しないなんてあり得ない! ディテールの完成度も高いことから、我々は2020年の発売を予想……いや、熱烈希望しますホンダさん!
そもそもハンターカブって何?
残念ながらヤングマシン創刊よりもだいぶ昔なので公式資料も写真も残っていないが、1961年にアメリカ向けに開発されたC100Tという、初代スーパーカブC100ベースのトレールバイクが先祖のようだ。釣りや狩猟、農作業などに使われて大ヒット。同じく北米で1963年にはC105Hという54ccの後継機種が登場した。これが日本ではハンターカブC105Hとして発売され、ハンターカブの名が誕生している。1964年に北米発売された90ccのCT200は、ホンダ公式にて「スーパーカブの持つポテンシャルを生かしたトレールモデルで、豊かな自然が多いアメリカ市場を考慮、大型ハンドル、キャリアなど装備充実のハンター向けモデル」とされる。アップマフラーやガード類による悪路対応、減速比の異なる2枚のドリブンスプロケットを装備するなどして、タフな走りを披露した。
日本国内独自の動きとしては、1968年8月20日にC105Hに次ぐトレールモデルとしてCT50を発売。こちらの発売当時資料には、「2輪車で初めての副変速機〈スーパートルク〉を採用し、大量積載や登坂性能にすぐれ、ユニークな車体機構により、釣り、キャンプ、狩猟のレジャーから、河川、森林、ダムなどの工事、山間部の業務用として、我国で初めて登場した個性的な2輪車です」と書かれている。発売時の価格は6万5000円で、生産計画は当初月産1万台とされた。ちなみに当時は消費税が存在しなかった。
ホンダは前年の1967年にスーパーカブの総生産台数500万台を突破し、単機種で世界新記録を打ち立てたばかり。その勢いもあって、同じく1968年8月20日にはスーパーカブC90およびスーパーカブC90M(セル付き)も発売されている。
“ハンターカブ”という名は、アメリカで発売されていたCT200以降のトレールシリーズが狩猟シーンを多く広告に使っていたため、日本でつくられた和製英語が通称として定着したもの、という説もあるが、1963年発売のハンターカブC105Hが元祖と見ていいだろう。
CT125の直接的なモチーフはトレッキングバイクのCT110
アメリカやオーストラリアなどで受け入れられたCTシリーズは、1981年に105ccの空冷SOHC単気筒エンジンを搭載したCT110へと発展。これは1981年10月2日に日本でも発売された。このバイクには“ハンターカブ”の名は冠されず、カタログには「ワークブーツ感覚のトレッキング・バイク」と表記された。わずか2年程度で国内販売を終了するが、輸出先のオーストラリアでは2012年まで販売され、これが日本にも輸入されて“ハンターカブCT110(シーティーヒャクジュウ/ヒャクトオ/ワンテンなど)”として親しまれていたのだ。
CT110の特徴は、エンジンガードやアップマフラー、大型リヤキャリア、アップマウントの吸気口など。輸出仕様ではスーパーローギヤに切り替えられる副変速機を備えているが、日本仕様では省略された。また、輸出仕様ではヘッドライトの上にあったフロントキャリアも日本仕様には装着されていない。この日本仕様のカタログ掲載の姿が、ほぼそのままCT125コンセプトモデルのモチーフになったと言えそうだ。
CT125のスタイリングをCT110(オーストラリア仕様:2005年撮影)と徹底比較!
さて、本題のCT125コンセプトモデルである。ホンダから具体的な発表はないものの、「普段使いの気軽さを持ちながら、自然の中でも楽しめる機能性を持ったトレッキングCub。かつての“CT”のコンセプトを受け継ぎ、スチール製フロントフェンダーやアップマフラー、幅広大型キャリア、ハイマウント吸気ダクト&サイドエアクリーナーなどを装備しながらシンプルで他にないスタイリングを実現。オフロードの走破性に配慮したつくりと冒険心をくすぐるデザインで、スーパーカブシリーズの新たな価値を提案するコンセプトモデルです。」とされている。実際には各部が試作パーツのため、触って確かめることはできなかったが、撮影した大量のカットとともに可能な限り解説していこう。