クルーザーと言えば、大排気量にものを言わせて優雅に旅するもの、そうしたイメージだけの時代は、もはや終わろうとしている。日本&ヨーロッパ製のクルーザーは、そこに優れたハンドリングや、街でも軽快に付き合えるカジュアルテイストといった新路線を開拓中。最新のモデルたちは、そのスタイリングからは想像できない走りを見せてくれる。最も目からウロコが落ちやすいのは、実はこのジャンルかもしれない。
- 1 アメリカ相手に巻き返しなるか
- 2 DUCATI Diavel 1260/S[メガモンスター]原点回帰を遂げたビッグネイキッド
- 3 DUCATI X Diavel/S[クルーザーも全開系]やはりドゥカティ
- 4 BOSS HOSS ZZ4 Super Sport[なにもかもが常識外]5.7リッターV8
- 5 HONDA Goldwing/Tour[現時点での最強ツアラー]その中身に肩を並べる者はいない
- 6 現行型はバガーがSTD
- 7 BMW K1600GTL/B[バガーはスキが無い]独車がアメ車を喰った
- 8 YAMAHA Bolt/R-Spec[作り込みは負けてない]ライバルはハーレー883
- 9 YAMAHA SCR950[とにかくパワフル]ボルトの兄弟分
- 10 HONDA NM4-01/02[速度は背中で感じろ]乗り味も独特
- 11 KAWASAKI Vulcan S[走りはまるでネイキッド]外見だけで判断してはいけない
- 12 HONDA Rebel 500[名車の名に恥じない]とにかくラクラク
- 13 関連する記事/リンク
- 14 オートバイの写真をまとめて見る
アメリカ相手に巻き返しなるか
クルーザー=“アメリカン”の代名詞が今でも通用するとおり、このジャンルは米国ハーレー・ダビッドソンの力が根強い。一時期は隆盛を誇った国産クルーザーも度重なる環境規制を経るなどして、今では数えるほどになってしまった。そんな中にあって、日欧勢は独自の個性で巻き返しをねらう。
ドゥカティ初のクルーザーとして誕生したXディアベルは、同社らしいLツインの元気よさとコーナリングの妙味を忘れず、ホンダのゴールドウイングは遥かなる地平線の彼方に向けて続く直線を優雅にどこまでもクルージングする……そんなこれまでのイメージにバイク本来の操る楽しさを加えるためにダブルウィッシュボーンのフロントサスやDCTを組み込んできた。
BMWもアメリカ発祥のバガーブームをみごとに吸収。このほか都市部でも軽快に楽しめるヤマハ・ボルトやSCR、ホンダ・レブルといったマシンもある。さらに異色の姿を持った2台も……。
DUCATI Diavel 1260/S[メガモンスター]原点回帰を遂げたビッグネイキッド
イタリアの方言で“悪魔”を意味するディアベル。派生モデルであるXとの大きな違いはライディングポジションでステップ位置は後退し、シート高も上がっている。全体的にはニュートラルなネイキッド的ライポジに近い。まず感じるのは軽さで、車重は244kgもあるがマスの集中により様々な場面で得られる人車一体感が秀逸。
エンジンはさすがビッグツイン。少し強めに加速すると、いとも簡単にトラコンが介入する。だがそれも自然で、妙な挙動も感じられない。太いトルクを楽しみながらゆったり走るも、回転を上下させて力強く走るも思いのままだ。旋回力自体はそれほど高くはないものの常にニュートラル。安心感を主体としながらスポーツ性を引き出せる。巨大版モンスターシリーズ的なマシンだ。
DUCATI X Diavel/S[クルーザーも全開系]やはりドゥカティ
ドゥカティ初のクルーザーとして登場したが、既存のものとは一線を画すカットビ系モデル。可変バルブライミングのDVTを搭載し低速トルクも増しているがドロドロした脈動感ではなく、ドゥカティLツインならではのダカダカッという軽快さが際立つ。しかも、回すほどにレスポンスが良くなり刺激的。
ハンドリングも同様でフォルムからは想像できないほどよく曲がる。サスは初期からよく動き乗り心地は良好でありながら、ほどよく締め上げられている。スロットル全開でクラッチをつなぐだけで最良の発進加速を得られるDPL(ドゥカティ・パワー・ローンチ)が、このマシンの性格を端的に物語っている。今現在も攻めに攻めてる男向け。人生をリタイヤしてから乗るようなバイクじゃない。
BOSS HOSS ZZ4 Super Sport[なにもかもが常識外]5.7リッターV8
355psを発揮する4輪コルベットの5.7LV8エンジンにはスロットルを全開するのはちょっとヤバイかも、とビビる。車体もそのエンジンを運ぶためだけの台車のように見え、そびえ立つタンク、ありえないポジション。もうバイクと呼んでいいのかすら分からない異形の存在だ。
車重は約500kgとさすがに一気にドンと発進はしない。しかし、200mを過ぎてからの全開加速は異常。キュキュッと鳴って滑り出すリヤタイヤ、ちょっとでも横に傾いたらどうなるのか分からない。坂道を転がる台車の上で十字架にはりつけられているようなもので、もう何もできない。加速に身を任せるだけだ。無事にゼロヨンアタックを終えたとき、「やり切ったオレもスゴイ!」と心から思えたマシンだ。
HONDA Goldwing/Tour[現時点での最強ツアラー]その中身に肩を並べる者はいない
17年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたホンダの大型プレミアムツアラー。7速DCTを採用して全面刷新された水平対向6気筒エンジンは、排気量こそ先代とほぼ同じ1833ccながら最高出力は17ps増の126psへ。シーン別ライディングモードが追加され、ツアー/スポーツ/エコノ/レインのそれぞれで出力特性だけでなく、DCTの変速プログラム、電動アジャストサス、ブレーキ特性まで連動して変更される。基本となるツアーモードではDCTの変速ショックはゼロに近く、必要なシーンでは適切にキックダウン。クルーズコントロールやアイドルストップにも不満なしだ。これがスポーツモードになるとレスポンスがよりダイレクトになり、高回転域を多用する変速プログラムでパワフルな走りになる。
フロントサスはダブルウィッシュボーンという特殊なシステムとなったが、微速域でハンドルを大きく切ったときの操縦感はテレスコピックフォークとほぼ変わりなし。電動調整式サスと組み合わされた乗り心地は、まるでアスファルトの上を滑空していくかのごとく上質で、それでいて接地感は絶妙に伝えてくる。電動スクリーンによる完璧といえる防風効果、前進と後退が可能なウォーキングスピードモード、音質のいいオーディオなど全てが快適なツーリングを目指して作り込まれている。Appleカープレイ対応も目新しい。
現行型はバガーがSTD
これまではトップケースレスのバガーモデルが派生モデルという扱いだったが、現行型からSTDはこちらになり、トップケースありは“Tour”となって主客逆転。STDはスクリーンもショートで軽快さを出している。
BMW K1600GTL/B[バガーはスキが無い]独車がアメ車を喰った
わずか1500rpmで最大トルクの70%を発生するエンジンはシルキーな直6フィーリングを加減速時もクルージング時も堪能できる。クラッチ操作なしでシフトアップ・ダウンできるシフトアシスタントプロは変速ショックが皆無なのが、特に感動的だ。 バガーのBはローダウンされている割にホイールトラベル量はGT、GTLと共通で非常に素直で扱いやすい。防風性、バックモーター、オーディオ、トラコンなども充実し、米国発祥のバガーを完全にモノにしている。
YAMAHA Bolt/R-Spec[作り込みは負けてない]ライバルはハーレー883
スロットルを開けたときにVツインらしい脈動感がしっかりと伝わってくる。それに排気音まで作り込んでいる印象だ。高速道路ではトップ5速のままでも押し出されるように加速する。ハンドリング面は、低シート高を実現するために極端に短くしたリヤショックがネックで突き上げ感が大きく、バンク角も少なめなのが惜しいが、全体的には速度を上げるほど剛性バランスの良さが際立ってくる。クルーザーだがフロントブレーキも積極的に使っていける。
YAMAHA SCR950[とにかくパワフル]ボルトの兄弟分
1速に入れてクラッチをつないだ瞬間に「おっ!」。ホールドしにくいライポジなのにトルクが強大なので身体が置いてかれそうになったのだ。まるでパワーを上げまくったSRカスタムみたい。スロットルを開ければとにかく速い。トップ5速、100km/hでの回転数は計算上、最大トルク発生回転数付近。だから80km/hからの加速は非常にたくましい。ハンドリングはネイキッドに近いが、バンク角が浅いのと長い車体で旋回力はそれなり。独特の世界観の持ち主だ。
HONDA NM4-01/02[速度は背中で感じろ]乗り味も独特
近未来のデザインが個性的な新感覚クルーザー。デザイン同様、走りも我が道を行くもので、バックレストに腰から背中を付け足を前に投げ出して乗るフィーリングは、乗り物に身を任せる、例えるならジェットコースターに乗っているような新しい感覚だ。しかも、同じエンジンを使うNC750と比べても加速感や速さを背中からダイレクトに感じるから面白い。ビルトインサイドケースのある02と無しの01があるが、02の収納力も小物程度とそれなりのサイズだ。
KAWASAKI Vulcan S[走りはまるでネイキッド]外見だけで判断してはいけない
この外観からは想像できないほど走りがスポーティだ。エンジンは鼓動感を味わいながらの巡航からメリハリのある走りまでおまかせ。6000rpm付近までのトルクは650ccとは思えないほど力強く、しかもツインらしい鼓動感が明瞭なので、高めのギヤに入れておけば息の長い加速が味わえる。クルーザーらしいディメンションを持つが、フロントはホイールは18インチと無闇に大径でないことからハンドリングはネイキッドのそれに近い。
HONDA Rebel 500[名車の名に恥じない]とにかくラクラク
クルーザーにありがちな微速域でのハンドルの切れ込みが皆無。タイヤが温まる前から潤沢に接地感が伝わってくる。ハンドリングはネイキッドのようなニュートラルさで旋回中は地を這うような安定感にも優れている。エンジンもトルクが厚く、シフトダウンをサボっても立ち上がりでググッと加速する。特に高めのギヤでスロットルを大きく開けたときの脈動感と重厚な吸排気音はクルーザーらしいもので、同じ車体を使う250とはひと味もふた味も違う感覚だ。
※表示価格はすべて8%税込です。
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