『バイクで巡るニッポン絶景道』シリーズは、ヤングマシンの姉妹誌であるモトツーリング編集長カン吉(神田英俊)が案内人。第37回は、関東の定番“いろは坂”を紹介したい。アップダウンと緩急に富んだワインディングがライダーを魅了するが、それ以上に絶景にこそ注目すべきだろう。
TEXT:Hidetoshi KANDA
定番ながら感激の大展望! 48のカーブを絶景が彩る
日光とセットで語られることも多く、その知名度は群を抜く。もはや名道と呼んで差し支えないであろう絶景ロードが“いろは坂”だ。当然のように“日本の道100選”にも認定される、一大観光地である日光へのメインルート。ライダーのみならず多くの一般観光客が訪れる。
なんといってもその特徴は、いろは歌になぞらえて命名され、ひとつひとつのカーブに“い”“ろ”“は”などと名前がついていること。連続する豪快なアップダウンとワインディングがライダーを出迎え、コーナーの数は(いろは歌のとおり)実に48カ所! しかも、その名称に関しては執念に近いこだわりがある。“いろは坂”と呼ばれるようになったのは昭和29年の大規模工事の後だが、線形改良や路線増設等を行う際に、コーナーの数を“48”に合わせて工事をしたこともあるのだ。このルートは確かに国内屈指の絶景ロード。しかし、名称へのこだわりも国内屈指ではないだろうか?
さて、いろは坂の真の名物はその展望だ。なにせ、440mもの標高差を約16kmで繋ぐため、坂道の斜度も半端ではない。それがゆえの展望風景は特に人気がある。新緑(春)の溢れるような緑、また全てが燃え上がるような紅葉(秋)。万人がいつ、何度見ても感動間違いない、絶景の金字塔とも言える風景が下界一面まで広がっている。新緑と紅葉の時期は特に観光客が多く、観光バスやマイカーも大挙して押しかけるので渋滞も頻発するが、それでもなお人気の止まないスポットである。
また、いろは坂は登り線“第二いろは坂”と下り線“第一いろは坂”がそれぞれ別になっており、巨大な一方通行のルートを成している。行きと帰りで異なる風景・道路線形を楽しめるのも人気の理由のひとつなのだ。この道は大変古く、元祖は奈良時代に山岳信仰のために開拓された古道。この古道が整備され、現在の第一いろは坂(下り線)となっている。つまり、1200年以上前の踏み跡をバイクで走ることができる、大変貴重なルートなのだ。あの世界遺産である熊野古道より古いと言えばその貴重さが想像できるかもしれない。
現在は登りが完全2車線&全線高規格で舗装されており、下りは道幅を広めに取った1車線。大型ツアラーでの走行も快適そのものだ。絶景・歴史浪漫・爽快さと3拍子揃った、定番ながら一度は走っておきたい名道を訪ねてみない手はないだろう。
ロード情報
交通量:国内屈指の観光地の為、休日は常に混む。特に紅葉シーズンは観光バスやサンデードライバーも多く、渋滞も頻発。午前中早いうちがベストだが、風景は日中がお勧め。悩みどころだ。
路面:山岳ワインディングながら管理は素晴らしく、不安要素の無い走りが楽しめる。交通量が多いため細心の注意が必要だが、走り応え抜群の日本を代表する絶景ロードだ。
~いろは坂~
秘境感★★★
天空感★★★★★
潮風感
爽快感★★★★
根性感★★★★
開放感★★★★
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