MT-09トレーサーが’18年のモデルチェンジを機に車名を欧州と同じ“トレーサー900”に変更。同時に追加された充実装備の上級版“GT”に試乗したぞ!
【〇】運動性はそのままにツアラーとして熟成
外装を刷新したものの、ヘッドライトと燃料タンクは先代からそのまま引き継いでいるので、全体のイメージは大きく変わっていないトレーサー900。今回試乗したのは追加設定されたGTで、フルアジャスタブルの倒立式フロントフォークや油圧プリロード調整付きのリヤショック、フルカラーTFT液晶メーター、クイックシフター、クルーズコントロール、グリップヒーターなどを標準装備している。それでいてSTDとの価格差は9万円以下というのは驚きだ。
幅を狭めるなど形状を見直したハンドルバーと厚みを増したシートにより、ライポジは先代よりもごく自然なものに。そして、走り始めてまず感じるのは、いい意味で落ち着き感が増したことだ。先代はベースとなったMT-09の刺激的な走りを色濃く残しており、長距離のクルージングにあまり向いていないという印象を持っていた。ところが、新型はスイングアームの60mm延長が利いているのか、しっとりと落ち着いて巡航できるようになった。それでいて旋回力はほとんど鈍っておらず、大きめに発生するピッチングを生かすことで気持ち良く向きを変えることができる。安定性が増したことでそういう操縦がしやすくなった、という言い方が正しいかもしれない。
845ccの水冷トリプルは相変わらず楽しくて実用的だ。低回転域での粒立った鼓動感、中〜高回転域にかけてのシャープな伸び上がり、ライダーの意志に忠実なスロットルレスポンスなど、どれを取っても不満がない。なお、GTに標準装備されるクイックシフターはシフトアップのみに対応。低回転域ではややショックが大きめだが、クラッチレバーの操作なしで変速できるのは疲労軽減に効果大だ。また、クルーズコントロールも優秀で、この二つの装備だけでもGTを選ぶ意味は大きい。
ウインドスクリーンは片手で高さが調整できるようになっただけでなく、面積と形状を見直したことで防風効果がさらにアップした。付け加えると、ハンドガードは小型化されたものの、防風性は従来と同等レベルにあり、特に不満はなかった。
【×】価格差が少ないためSTDを残す意味は?
GTの追加装備はどれも過剰なものではなく、実際のツーリングで重宝するものばかり。それらがまとめて付いて差額が約9万円しかないと考えると、あえてSTDを残した意味が不明瞭。トレーサー900を買うならGTを強くお勧めしたい。
【結論】日本の道でも実力を発揮する本格ツアラー
群雄割拠のアドベンチャークラスにおいて、水冷トリプルという個性を放つトレーサー900。ホイールベースの延長で走りが落ち着いたものとなり、ツアラーとしての資質が底上げされた。17万円を超える純正パニアケースがもっと安ければ……。
撮影:飛澤慎
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