新世代CBシリーズの旗艦としてフルモデルチェンジしたCB1000Rは、スポーツバイクの根源的な楽しさを追求。電脳化が進んだマシンをじっくりと試したぞ。
【〇】意のままに操れる快感
まずはエンジンから。初代CBR1000RRに端を発し、’08年に登場したスポーティネイキッド、初代CB1000Rにも搭載された998ccの水冷並列4気筒は、145psという最高出力を発揮する。注目すべきは電子制御スロットルを採用したことで、合わせてライディングモードの切り替えシステムも導入。パワー&スロットルレスポンス、トラコン、エンブレの3種類が3つのモード(スポーツ、スタンダード、レイン)ごとに連動して切り替わるほか、それぞれを任意にチョイスできるユーザーモードまで用意する。
最もエンジンの素の状態が発揮されるスポーツモードは、思わず身構えてしまうほどパワフルで、低中回転域での加速感ならスーパースポーツを上回るほど。基本設計が15年近く前とは思えないほど伸び上がりが洗練されており、質感のいい回り方とはまさにこのことだ。ただ、高速道路での巡航や市街地ではレスポンスがやや過敏なので、そんなシーンではスタンダードモードがいいだろう。なお、レインモードでは1〜3速での出力が制御され、レスポンスは最も穏やかになる。個人的にはここまで反応が緩慢だと返って扱いにくいと感じたので、実際に試して使いやすいモードを選んでほしい。
標準装備されるクイックシフターは、シフトアップだけでなくダウンにも対応。回転数の合わせ方が絶妙で、ワインディングだけでなく信号の多い街中でも非常に重宝した。
【〇】日本車もここまで来た
ハンドリングは、入力に対する反応が非常にダイレクトで、いい意味で日本車離れしている。ブレーキングからの倒し込みで自信を持てるのは、フレームの縦剛性の高さが寄与しているはず。また、スロットルを開けてからの旋回力の高さは、リヤサスの過度な縮みを抑えるアンチスクワット率の見直しによるものだろう。倒し込みや切り返しの際に感じる重さは確かに1000ccクラスではあるが、入力後の反応の早さは600ccとクラスと同等であり、気付けば無心でワインディングを楽しんでいた。ブレーキもコントローラブルであり、公道で質の高い走りが楽しめる稀有なマシンと言えよう。
【×】走りに振っただけに使い方が見えづらい
シートカウルを省略するなど徹底的に無駄を削ぎ落としたデザインだけタンデムシートが小さく、荷物の積載が困難だった。純正アクセサリーのシートバッグでも容量が最大で約22Lなので、ロングツーリングするならそれなりの工夫が必要だろう。
【結論】所有欲を満たす高品質な外観と次元の高い走り
CB-R シリーズはこれまでに125、150、250を試乗したが、1000も含めてハンドリングのベクトルが共通することに感心。リヤ2本サスやクレードルフレームに固執しない、新たなCB 像を生んだ記念すべきシリーズであり、今後の発展に期待大だ。
写真:飛澤慎
「MT-10とCB1000R、どっちが買い?!」はこちらへ