マシン・オブ・ザ・イヤー2018
2018 NEW NAKED TEST

MT-10とCB1000R、どっちが買い?!

ヤマハを代表する人気シリーズのMT。ネイキッドの新基準を打ち立てたシリーズにライバルも新機種で対抗し、2018年はNK戦線が加熱している。今回は、YZF-R1をベースとするMT-10と同じくSS譲りの心臓を抱くCB1000Rを比較試乗だ。 ※ヤングマシン2018年9月号(7月24日発売)より

●テスター/丸山浩(写真左):ご存じ国際ライダーにして本誌メインテスター。プロの視点からMT を分析する。MT-10 はSTD/SPとも試乗済みで、過去にサーキット走行も敢行している。
●まとめ/沼尾宏明(写真右):本誌をはじめ、バイク雑誌で活躍するライター。腕前はフツーのツーリングライダーだ。MT開発者へのインタビュー経験が豊富で、今回の2台に興味津々。

上質vsスポーティ 同じ直4ながら好対照

’14年にデビューしたMT-09から始まる新生MTシリーズは、ライバルと一線を画す唯一無二のキャラクターを持ち、圧倒的な支持を得ている。中でもMT-10は、“最強スーパースポーツ”と名高いYZF-R1をベースとする、MTシリーズのフラッグシップだ。 乗車して、やはり際立つのは、直4クロスプレーンエンジンの個性だ。一般的な直4が180 度クランクシャフトを採用するのに対し、MT-10はR1を除いて唯一無二の位相90度クランクを備える。これは、モトGPマシン=YZR︲M1譲りのメカで、右手の動き対し、V4に似たリニアなトルクを発生するのが持ち味。だがMT-10は、R1とも異なり、実に表情豊かだ。

(ヤマハ:MT-10/SP)●税込価格:167万4000円/199万8000円●色:灰、青、艶消し黒/銀 YZF-R1譲りの直4ユニットとアルミフレームの車体をストリート向けに最適化。バーハンドルや攻撃的な外装を与えたスーパーネイキッドだ。※写真はSP

5000回転以下では、アクセルのレスポンスが穏やかで、ドロドロしたパルス感と、やわらかいエンジンフィーリングが味わい深い。それでいて振動がほぼ皆無で、疲れにくいのだ。 この特性は、街乗りと高速クルーズで存分に活きる。右手を開けても緊張感がなく、流してマッタリ走ったり、交差点の右左折やUターンも楽々だ。

一方のCB1000Rは、同じ直4ながら伝統的な180度クランクを採用し、右手の動きにダイレクトに反応。パワーバンドが幅広く、MTより1速高くても十分加速できる。街乗りからスポーティな本性を体感可能だ。 対照的なエンジン特性だが、車体も大きく違う。MTは大柄で安定感があり、CBはコンパクトでキビキビと動く。ライポジに関しても上体が起きたMT、やや前傾のCBと好対照だ。

(ホンダ:CB1000R)●税込価格:163万6200円●色:黒、赤 専用のスチールバックボーンフレームに、初代CBR1000RR をベースとする180度クランク直4を積むスポーティカフェ。従来型は海外専用だったが、全面刷新した本作から国内仕様が登場した。

MT-10SPは、高速クルーズがとてもラクだ。大柄で安定感に溢れた車体をはじめ、衝撃吸収性に優れ、乗り心地のいい電子制御サス、レスポンスが穏やかで振動の少ないエンジン、と実に快適。ビキニカウルとサイドパネルにより、上体や足元への防風性も適度にある。シートも座面が広く、クッション性に優れており、CBより総合的に疲れにくい。極めつけにクルーズコントロールまで装備しているのだ。 CBは公道でのスポーティさを追求したマシンと言える。高速巡航時でも、そのテイストが色濃い。とにかく動きがクイックで、車線変更や追い越しが得意。常に操りたくなる。偶然2車ともに6速100㎞ /hで4200 回転を示すが、ここからアクセルを開けると、CBがドンと加速するのに対し、MTはスーッと平和。淡々と長距離を流すのに適した特性で、300㎞程度のツーリングはお手の物だ。

街中では、MTの低回転域でマイルドな特性が光る。落ち着いて走れるので、意外にも移動手段として優秀。近所への買い物や通勤通学までこなせるし、疲れていても乗る気にさせてくれる。ただしCBと比べハンドル切れ角は少なく、Uターンはやや大回りしがちだ。一方のCBは、コンパクトな車体に加え、キビキビしたレスポンスと軽い寝かし込みで、小回りが得意。低速域の粘りがあり、Uターンもしやすい。街乗り向きだが、本領はスポーツだ。

ステアリングの高さはCBとほぼ同じだが、若干絞られ、手前にあるハンドルのため上体が起きる。車体にボリューム感があり、雰囲気はいかにもビッグネイキッドらしい。足着き性は、横に足が広がるため、両つま先が接地する程度。(身長:168㎝/体重:61㎏)

やや前傾するハンドルが特徴的。高さは、腰骨の上程度だが、ハンドルに絞りがほぼなく、肩幅から拳1個分開くため、やや遠め。足着き性はシートとフレームが絞り込まれているため、両つま先の腹まで接地する。

●押し引き:MTは、なぜか大柄で重く感じるが、ハンドルに手が届きやすい位置にあるのがグッド。CBは、取り回しがイージーだが、小柄な人の場合、ハンドルを切った時に右手のグリップが届きにくい

トガった速さのMT、操る楽しさが濃いCB

ワインディングでは、MT-10の違う一面が発揮された。5000rpm以上の領域になると走りが豹変。ギュンと強烈に加速し、スロットルに対する反応も鋭くなる。まさにR1エンジンの本領発揮だ。ただしR1のようにフロントに荷重をかけなくても自然にバンクし、寝始めればスパッと曲がる。ブレーキは初期タッチが穏やかで扱いやすく、奥で踏ん張るサスもいい。

コーナーの立ち上がりで、さらに右手を捻ると簡単にウイリー! R1よりパワーを落としているとはいえ、ネイキッドとしてはギリギリのレベルと言えるほど速い。フロント荷重は失われがちだが、モードを変えれば開け始めのツキを緩和できるし、スピードを抑えれば普通に流すことも可能だ。ステージとしては、タイトな峠道を俊敏に走るには乗り手の技術が必要な一方で、高速コーナーでは誰でも爽快に走れる。 MT-09も同様だが、過激なエンジンとオフ車的なハンドリングを組み合わせた欧州モタード風のアンバランス感が楽しい。MTの親分だけあって「凄いバイクに乗ってる」感はピカイチだ。

片やCBは、正統派のスポーツマシンだ。エンジンと車体のバランスが抜群で、右手を開けたぶん加速し、バンキングも軽快。前後とも高い接地感を伴いながら旋回でき、ライダーの意志どおりコーナーを駆け回れる。MTより小さく感じる車体をはじめ、ソリッドに効くブレーキ、カッチリ変速するオートシフターもキレのよさに貢献。シンプルにスポーティさを追求しており、峠を流すのが最高に愉快だ。 絶対的な速さのMTと、操って楽しいCB。2台は非常に対照的だ。

●タンデム:MTはタンデムグリップがなく、後席ステップが高いのがネックだが、クッション性や滑りにくさが良好だ。CBは持ち手はあるものの、前後の挙動に踏ん張りが利かない位置にあり、シートカウルがないのも不安。リヤの居住性がいいのはMT、操縦性に影響が少ないのはCBだ。

革新のMTか、王道のCBか

唯一無二のクロスプレーン直4をネイキッドに仕上げたMT-10は、超個性派にも関わらず、スポーツランもこなせるし、クルマのように移動手段としても使える。他人と同じバイクはイヤ、でも街乗りからツーリン グまで幅広い用途で楽しみたい――そんな人にピッタリだ。 CB1000Rは、「直4スポーツネイキッド」という昔ながらのホンダらしいバイク。軽く吹け上がり、レスポンスのいいエンジンは、いかにもホンダで、ヨンフォアから連綿と続く直4の面白さを継承している。

革新的なMTと王道を歩むCB、というのが結論。とにかく同じ直4なのに全く対極的な2台だ。クルマを所有しておらず、何でもバイクで済ませたい人はMT、普段はクルマで休日にスポーツランを楽しみたい人はCBが似合うと思う。ちなみに昔の話で恐縮だが、今回の2台は万能ツアラーのXJ400、スポーツのCBX400という対比に似ていて、懐かしかった!

●エンジン:MTは、160psを発生するクロスプレーン直4を搭載。対するCBは’04〜’07CBR1000RR譲りの180度クランク直4を積み、最高出力は145ps。2車ともオートシフターで、MTはアップのみ、CBは上下に対応。

●メーターパネル:MT-10SPのみカラー液晶で、トラコンや出力特性、減衰力を一括で4段階に変更できるYRCを搭載。STDは3段階のパワーモードを備える。ともに左側に電源ソケットを装備。CBはカラーバー付きのモノクロ液晶で、4モード式。

●フロントサスペンション:SPはオーリンズ製のセミアクティブサスで減衰力を自動制御。STDはKYB製AOSⅡフォーク、CBはショーワ製SFF-BP倒立フォークを装備。

●リヤサスペンション:SPの電サスは、伸圧減衰力を前後とも32段階から設定可能。STDは機械式のフル調整タイプ、CBは分離加圧式リヤショックを採用。

撮影:山内潤也

ヌマ王

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ヤングマシン編集部出身の敏腕フリーライター。特にバイクの社会&時事ネタに詳しく、20年以上にわたって特ダネを追い続けている。趣味はユーラシア大陸横断。

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