MotoGP・Moto2クラスの独占エンジンサプライヤーとなることを発表したトライアンフ。現在のホンダエンジン(CBR600RRベース)によるレースは2018年までで、2019年以降のMoto2クラスはトライアンフエンジン搭載車で争われることになる。ドルナとの契約は2022年までの3年間となるが、この契約は3年間延長される可能性があるという。今回、トライアンフでプロジェクトを統括するスティーブ・サージェントさんが来日、同社Moto2プロジェクトの説明を行った。
排気量は765cc。トラのお家芸・3気筒を採用
既報ではあるが、トライアンフのMoto2プロジェクトの概要をおさらいしておくと、ベースとなるエンジンはストリートトリプル765シリーズが搭載する765cc3気筒エンジン。これを基に80箇所以上が変更されており、具体的にはクランクシャフト/コンロッド/ピストン/バランサーシャフトを新設計し、ポート形状を変更したシリンダーヘッドやニカジルメッキのシリンダー、チタン製のバルブ&バルブスプリングを採用。カムやギヤボックスなども変更され、レース用スリッパークラッチやマレリと共同開発の専用ECUも投入される。
性能的には133ps/8.2kgm以上を目標(ストリートトリプル765は、最強グレードのRSで123ps/7.8kgm)としており、ストリートトリプル765で1万3000rpm弱のレブリミットは、レースディスタンスの耐久性を踏まえつつ1万4000rpm以上を目指しているという。すでに9ヶ月前から開発はスタートしており、ドルナのパートナーで、現在Moto2エンジンの管理/供給を担当しているエクスターンプロ社と共にテストが進行中。テストライダーは現役モト2ライダーでもあるジュリアン・サイモンが務めており、今後はレース用ECUの開発をマニエッティ・マレリと行っていくとのことだ。
「Moto2レプリカ」は発売される?
まずは2019年からのMoto2参戦を楽しみに待ちたいが、気の早いヤングマシンとしてはさらにその上、MotoGPをどう捉えているかも気になるところ。欧州勢ではドゥカティやKTM、アプリリアなどはすでに参戦中だし、Moto2で弾みを付けてイッキにMotoGP参戦! なんて青写真を描いているのではないか? スティーブさん、そのへんはどうですか?
スティーブ:「現状ではノープランです。でも、将来的にMotoGPに参戦しない……ということでは決してない。いろんな可能性があると申し上げておきましょう」
否定はせず、といったところか……。さらに気になるのは「公道Moto2レプリカ」の可能性だ。デイトナ675が生産終了となって以降、トライアンフのスーパースポーツは空座。もともとデイトナのネイキッドバージョンだったストリートトリプルが新型となったのだから、そのSSバージョンも期待したいところだし、Moto2で存在感を示すとなれば、そのレプリカたる「デイトナ765」がラインナップにも欲しい。どうですか? スティーブさん。
スティーブ:「考えないといけないのはミドルSSのマーケットです。世界的に縮小傾向で、新しいバイクを開発することは困難な状況といえます。しかしその一方で、我々のMoto2プロジェクトに皆さんがエキサイトし、興味を持ってくれていることも理解しています。現時点で“デイトナ765”の開発計画が存在するわけではありませんが、今は皆さんの声を集め、需要がどのくらいあるのかを確認している段階です」
とりあえず、完全に否定はしない……という点に望みを繋ぎたい! 旧デイトナ675はラップタイムで国産4気筒勢と伍して戦える実力を持ちつつ、3気筒エンジンの豊かなトルクでストリートでも扱いやすい、ジャーナリスト達の評価も非常に高い稀有なミドルSSだった。2017年は「自社の歴史上、最大の新製品構成」とあって販売絶好調、さらにMoto2参戦とノリまくりのトライアンフだけに、その勢いを駆ってミドルSS界にも再参入を期待したい!
※MotoGPでMoto2エンジンの管理を行うエクスターンプロ社に関しては、以下のサイトが詳しいです。