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トルクフルで、スロットルレスポンスも申し分ない。ハンドリングもシャープで、コーナーでは狙ったラインを外さない。ハーレー史上最大/最強となるパワーユニット=ミルウォーキーエイト117を搭載し、走りでは最強と名高いローライダーSの進化をレポートしよう。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:磯部孝夫 ●外部リンク:ハーレーダビッドソンジャパン
’22 ハーレーダビッドソンFXLRSローライダーS
【RIDING POSITION/身長175cmの場合】シート高は720mmと低く、カカトまで両足がベッタリ届き、足着き性に不安はない。ステップはミッドコントロールで自然な位置。膝が曲がり、長時間の走行でもストレスや疲労感が少ない。グリップは真っ直ぐに腕を伸ばしたところにあり、リラックスのできる乗車姿勢。上半身は若干ながら前傾し、車体をコントロールしやすい。
ローライダーS試乗インプレ:圧倒的パフォーマンスですべてを置き去りにする快感
立ち上がりの加速では駆動輪にしっかりとトラクションが掛かり、右手と直結したかのようなダイレクトな加速が味わえる。う〜ん、なんとも爽快っ! どうだ、これぞハーレーダビッドソンが誇る最新パフォーマンスクルーザーの走りだ!!
ハーレー専門メディア『ウィズハーレー』編集長である筆者にとっては、出来栄えの良いニューモデルに乗ると、つい嬉しくなってしまい、まるで自分が開発に関わったかのように「どうだ、すごいだろう!」と自慢げに吹聴してしまうから、我ながら呆れてしまう。ハーレーダビッドソン開発エンジニアにとって、’22年式のFXLRSローライダーSは、満足のいく完成度であったのではなかろうか。
なんといっても、従来まではCVOだけが搭載を許されてきたミルウォーキーエイト117(排気量1923cc)を心臓部としたことが大きい。ハーレー史上最大/最強となるパワーユニットは、スクリーミンイーグル ハイフローエアクリーナーキットとの組み合わせで、最大トルクを155→168Nmへと大幅に増強し、より力強い走りを実現している。
これは英断であるとともに、ローライダーSならではともいえる。2016年に登場した初代FXDLSローライダーSもまた、スタンダードエンジンがツインカム96(1584cc)であったのに対し、CVO用のスクリーミンイーグル ツインカム110(1801cc)が特別に奢られた。
余談だが、このとき「Sシリーズ」として、ファットボーイSとソフテイルスリムSもラインナップされ、3兄弟としていたが、いまのところ両車がカムバックするニュースは耳にしていない。『ウィズハーレー』誌としては、そろそろ「ニューSシリーズ」のデビューを記事にしたいと願っている。
それはさておき、初代ローライダーSは、圧倒的パフォーマンスで絶大な人気を誇ったまま、ダイナの終焉とともにわずか2年間の販売だけで姿を消してしまった。
そして’20モデルにて、よりスポーティな走りを実現するモノサスペンション装備のニューシャーシでFXLRSローライダーSとして蘇る。エンジンはミルウォーキーエイト114(1868cc)へと進化。
オールドハーレーのような味わい深さを求め、腰下にあるツインカムを1本に戻し、フライホイールの慣性マスを増やすなどした。低回転域のふくよかなトルクを重要視しつつ、ロングストローク設計はもちろん、4バルブとツインスパークで俊敏な加速性能も両立している。
今回の’22年式ローライダーSは、102mmだったボアを103.5mmに拡げ、114mmのストロークをそのままに排気量を55ccアップ。追い越し時の加速や高速巡航などで、よりいっそうのゆとりが生まれだ。なんと言っても、ミルウォーキーエイト117搭載車の中では、308kgの車体重量はもっとも軽い。
報告するべきことは、エンジンのスケールアップだけではない。新型ローライダーSは、車体の細部に至るまでブラッシュアップがなされている。
まず、初代FXSローライダー(’77)から連綿と受け継がれてきたタンクオンのデュアルメーターをついに廃止。アナログ式のタコメーターとデジタルスピードメーターを組み合わせたコンビネーションメーターを、ライダーの視線により近く見やすいハンドルマウントに配置転換しているのだ。
タンクコンソールをロープロファイル化し、上面をスッキリとさせつつ「FXLRS」のパッチが埋め込まれた。
ビキニカウルをセットしたフロントマスクは、相変わらずふてぶてしく無骨な表情。アルミ製のフォークトリプルクランプにセットされるインナーチューブ径43mmのショーワ シングルカートリッジ倒立式フロントフォークは、キャスターアングルを28度に立てられ、ステアリングフィールを軽快にするとともに、前輪の接地感をより際立たせている。
コーナーアプローチではスッと車体が寝ていき、フロント19インチに110mmと太すぎないタイヤの組み合わせの恩恵を感じる。
前後ホイールはマットダークブロンズ仕上げのアルミキャストホイールに刷新され、兄弟車として新たにデビューしたFXLRSTローライダーSTとお揃いに。足まわりの印象を大きく変えた。
ハードな走りにも対応するモノサスペンションは、初期荷重では滑らかにストロークし、路面追従性に優れ、大きな入力が瞬時にかかってもしっかりとダンパーが踏ん張ってくれる。
走りでは最強と名高いローライダーSが進化し、ますますアグレッシブになった。日欧のスポーツバイクに比較すれば、重量級と言わざる得ない手応えのある車体を、大排気量にモノを言わせて突き進む感覚はビッグツインモデルならでは。
トールバーとミッドコントロールによって上半身が起きたまま、伏せることなどせず風圧を受けたまま味わう猛ダッシュは、実際の数値を上回る荒々しさがあり、勇ましい走りは病みつきになる。ぜひ味わってほしい!!
ローライダーS ディテールチェック
ノンビリゆったり走るだけでは物足りない。そんな要望に応えた“パフォーマンスクルーザー”という新ジャンルを牽引し、いまやラインナップに欠かせない人気モデルとなった「ローライダーS」。’22年式ではシリーズ共通のダブルクレードルフレームに、ハーレー史上最大となる排気量1923cc“ミルウォーキーエイト117”エンジンを搭載した。2000ccに迫る超弩級エンジンは、最大トルクを155Nm/3250rpmから168Nm/3500rpmへと大幅に増強している。
倒立式フロントフォークを28度と立ててセットし、フロントブレーキには対向4ピストンキャリパーと300mmフローティングローターを組み合わせた。ダークブロンズで仕上げられキャストアルミホイールは新作で、精悍な足もとを演出した。
1977年の初代FXS誕生以来、ローライダーのアイコンであった縦列配置のデュアルメーターを排し、燃料タンク上をスッキリさせた。ブラックのタンクコンソールはロープロファイルのテクスチャード加工。車体色はベーシックなビビッドブラックに加え、ニューカラーとなるガンシップグレーの2色を設定した。
メーターはライダーの視界に入りやすいハンドルマウントへ移設。走りに重きを置いたことがこうしたところからもわかる。
ローライダーS 主要諸元
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