
最近のランボルギーニは高性能だとわかっちゃいるが、どうにも野蛮さや獰猛さに欠けると、お嘆きの方もいらっしゃるかと。オーバーヒートしなくなったとか、エアコンが効くなんてのは国産車に任せておいて、ランボはやっぱり猛り狂う雄牛の勢いあってこそ。さりとて、カウンタックまでいっちゃうと「ビンテージ臭」が強まってアクセルのベタ踏みなんてためらいがち。ならば、アウディ買収前のランボルギーニが自由奔放だった時代のマシン、ディアブロこそ最後の狂える雄牛かもしれません。とりわけ、ワンメイクレース用にファクトリーメイドされたGTRなんて猛牛は、この先決して生まれてこないこと間違いないでしょう。
●文:石橋 寛(ヤングマシン編集部) ●写真:RM Sotheby’s
V12をミッドに縦置きした「まぎれもなきスーパーカー」
ランボルギーニ・ディアブロは、1990年にデビューした5.7リッターV12をミッドに縦置きしたまぎれもないスーパーカー。
時あたかもクライスラー傘下の真っただ中で、ランボルギーニにとって唯一の商品でした(V8のジャルパは前年に生産終了、LM002はきわめて少量の受注生産)。
当然、力のこもったモデルには違いありませんが、エンジンはカウンタック・アニバサリオの使いまわし、デザインにしてもガンディーニがずいぶん前に描いたレンダリングをクライスラーの社員が引っ張り出してきたもの。
市場でこそ歓迎されたものの、専門家は「新鮮味に欠ける」と酷評する声の方が多かったような気がします。
公道向けのディアブロGT。ウィングやホイール以外のスタイルはフードとルーフ上のエアダクトを含め、今回紹介する「GTR」とほとんど変わりがない。
世界限定30台の「GTR」はかなりのレアモデル
とはいえ、ほぼ1車種で会社を支えねばならなかったディアブロは、苦肉の戦略からバリエーションが驚くほどリリースされています。
全輪駆動のVTをはじめ、ロードスターやらランボ創立30周年モデル(SE30)やら、エンジンだって6.0リッター仕様もあれば、GTレース向けのスペシャルチューンなどなど、専門家ですら把握しきれていないのではないでしょうか。
そんなバリエの中でも、世界限定30台の「GTR」というモデルはかなりのレアモデルに違いありません。
だいたい、ランボといえば脊髄反射的にイオタの名が上がるかもしれませんが、ディアブロのイオタ(SE30イオタ)は制御系こそ手が入っているものの、コスメティックチューンの域を大きく越えるものでもありません。
そこへいくと、GTRはベースコンストラクションからサーキット、レースを見据えたものであり、またドアとルーフ以外(スカットル&バルク含め)カーボンマテリアルで再構築という本格派。
ワンメイクレース向けといえども、後のFIA GT仕様のテストベッド的な役割を担ったことは想像にがたくありません。
限定30台のみが製造されたディアブロGTRは、1999年にリリースされた6.0リッターV12搭載のGTをベースにレーストリムを施したモデル。
もちろんレース仕様でもシザースドアは健在。このドアとルーフ以外はカーボン素材に置き換えられ、GT比-50kgの1400kgという車重。
GTから流用した5992ccにプレナムチャンバーを装備
エンジンはロードバージョンのGTから流用した5992ccのV12。
ここにプレナムチャンバーを装備したほか、個別インテーク、および可変吸気バルブタイミング、(ほぼ直管の)レーシングエキゾースト、加えてチタン製コネクティングロッドと軽量クランクシャフトといったカスタムが施され、GTの575馬力から590馬力へとパワーアップ。
また、巨大なGTウィングはフレームに直付け、ホイールはマグネシウム合金製のセンターロック仕様(スピードライン製)、室内にはロールケージが張り巡らされ、無論エアジャッキも標準装備。
ジェントルマンの遊びにも等しいワンメイクレースとはいえ、さすがランボルギーニだけに手抜かりや妥協は一切見られません。
排気量5992cc、ボアストロークは87×84mm、圧縮比10.7:1、590ps/7300rpm、640Nm/5500rpmが公表されたスペック。
お値段そのものも”暴れる猛牛”
なお、こちらのマシンは2000年と2001年のランボルギーニGTRスーパートロフィーに参戦、その際はイタリアのミグ・パワーがプリペア。2年目にはシリーズ2位の成績を残した実車。
オークションでの指し値は77万5000~87万5000ユーロ(約1億3000万~1億5000万円)とされています。お値段そのものも暴れる猛牛といったところでしょうか。
ロード仕様のGTでも採用されたボンネットフード上のエアダクト。フロントエプロンは同形状ながらカーボンに変更されている。
シート後方に30台中9番目をアピールするプレート。このほか、そこら中にGTRのロゴが配されている。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(自動車/クルマ)
13台しか作られなかった964モデルのうちの1台 ポルシェのカスタムと聞いて、世代の違いで思い浮かべるファクトリーが変わってくるかと思います。ベテラン勢ならば、クレーマー、ルーフ、あるいはDPやアンデ[…]
排気量拡大路線から4バルブヘッド開発へ 1980年代の後半はAMGにとって重要な分岐点だった気がします。もともと、彼らはメルセデスベンツが作ったエンジンをボアアップ、強固な足回りへと改造することに終始[…]
車内エンタメを最新化する注目製品をチェック GetPairrは、「誰でも簡単に車内エンタメを自由に楽しめる環境をつくる」ことを理念に製品開発を行っており、ポータブルディスプレイオーディオ、CarPla[…]
1903年以降、ナンバーはずっと使い続けることができる英国 ナンバープレートがオークションなどの売り物になること、じつはイギリスではさほど珍しいものではありません。 イギリスでは一度登録したナンバーを[…]
7.3リッターとなる心臓部はコスワースがカスタマイズ 今でこそアストンマーティンの限定車はさほど珍しくもありませんが、2000年代初頭、すなわちフォード傘下から放り出された頃の彼らにとってスペシャルモ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
テールデザインでトラディショナルから新世代を意識させる! 1992年に発表後、実に30年間という史上まれにみるロングセラーだったCB400 SUPER FOUR。 その経緯にはいくつか節目となるモデル[…]
過渡期に生まれながらもマシン全体の完成度は抜群 ’59年にCB92を発売して以来、各時代の旗艦を含めたロードスポーツの多くに、ホンダはCBという車名を使用してきた。そして昨今では、ネイキッド:CB、カ[…]
レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化! 1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。 なぜ衝撃的だったかとい[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
人気記事ランキング(全体)
250cc水冷90°V型2気筒でDOHC8バルブが、たった2年でいとも容易くパワーアップ! ホンダが1982年5月、V型エンジン・レボリューションのVF750Fに次ぐ第2弾としてVT250Fをリリース[…]
インカムが使えない状況は突然やって来る!ハンドサインは現代でも有効 走行中は基本的に1人きりになるバイク。たとえ複数人でのマスツーリングだとしても、運転中は他のライダーと会話ができないため、何か伝えた[…]
悪質な交通違反の一つ、「無免許運転」 今回は無免許運転をして捕まってしまったときに、軽微な違反とはどのような違いがあるのか紹介していきます。 ■違反内容により異なる処理無免許運転の人が違反で捕まった場[…]
6/30:スズキの謎ティーザー、正体判明! スズキが公開した謎のティーザー、その正体が遂に判明したことを報じたのは6月30日のこと。ビリヤードの8番玉を写した予告画像は、やはりヤングマシンが以前からス[…]
RZ250の歴代モデル 1980 RZ250(4L3):白と黒の2色で登場 ’80年8月から日本での発売が始まった初代RZ250のカラーは、ニューヤマハブラックとニューパールホワイトの2色。発売前から[…]
最新の投稿記事(全体)
500km/hの速度の鉛玉も防ぐ! SHOEIがキャリーケース事業をスタートする。これまでに培ってきたヘルメット製造技術を活かした新規事業で、GFRPを用いた質感と堅牢性、強固なフレーム構造による防犯[…]
機能美を実現したナップス限定ビレットパーツが登場 カワサキZ900RSは、最高出力111ps/8500rpmを発揮する水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ、948ccエンジンを搭載したネオクラシ[…]
バッテリーで発熱する「着るコタツ」で冬を快適に ワークマンの「ヒーターウエア」シリーズは、ウエア内に電熱ヒーターを内蔵した防寒アイテム。スイッチひとつで温まることから「着るコタツ」として人気が拡大し、[…]
知られざる黎明期の物語 最初の完成車は1903年に誕生した。シングルループのフレームに搭載する409cc単気筒エンジンは、ペダルを漕いで勢いをつけてから始動させる。出力3psを発揮し、トランスミッショ[…]
充実してきた普通二輪クラスの輸入モデル この記事で取り上げるのは、日本に本格上陸を果たす注目の輸入ネオクラシックモデルばかりだ。それが、中国のVツインクルーザー「ベンダ ナポレオンボブ250」、英国老[…]
- 1
- 2















































