
1980年代のグループBレギュレーションを思い起こすまでもなく、ゲームのルールになんでもあり的なニュアンスが加わると、最終的には破綻しがち。とはいえ、大メーカーがなんでもありを執拗に追い求めていくと、凄まじいクルマが走り出すこともまた事実に違いありません。クルマ好きが喜ぶべきは、そうしたクルマがホモロゲーションマシンとしてリリースされたこと。ここにご紹介するのはグループBほどの過激さはなくとも、ラリーテイストが漲るグループNのホモロゲマシン。マツダが初めて「GT-R」を名乗ったモデルです。
●文:ヤングマシン編集部(石橋 寛) ●写真:RM Sotheby’s
マツダGT-Rを名乗るは「マツダ323」、つまりは…
いうまでもなくマツダ323とは日本名ファミリアのこと。こちらは1989年デビューの7代目(BG)のGT-Xをベースに数々のカスタムを加えたモデル。
ちなみに、先代ファミリアは日本初のフルタイム4WDを発売し、こちらのサンプル同様にラリー選手権へと果敢にチャレンジしていました。
が、車名は最後までマツダ323GT-Xのまま。一方で、7代目ホモロゲモデルはGT-Rという勇ましいネーミングでのエントリー。後にも先にもマツダがGT-Rを名乗ったのはこのファミリアだけでしょう。
また、当時のターボエンジンならば、ブーストアップや大型タービンへの変更によってそれなりにパワーアップが楽しめましたから、チューンナップに高じた方もいらっしゃることでしょう。
1989年に登場したファミリアの5000台限定ホモロゲーションモデル。フルタイム4WDターボのGT-XをベースにカスタムされGT-Rを名乗ることに。
ボンネット上にはエアアウトレットを装備。外装の変更が最低限に抑えられているグループNレギュレーションだけに、リアル機能してくれるものが装備されています。
当時のターボエンジンだからパワーアップの「お楽しみ」も
エンジンは1.8リッターの4気筒DOHCターボで、180ps(仕向け地によっては185ps)を発揮。なお、先代モデルではインタークーラーの位置が悪かったため、7代目からは位置を車体前方に変更。冷却性能の適正化に成功しています。
0-100km/h加速:7.2秒、最高速218km/h(ヨーロッパ仕様)というデータは今となっては目を見張るほどのパフォーマンスではありませんが、1280kgという比較的軽量な車重を考えればそこそこなフィーリングを味わえたはず。
また、当時のターボエンジンならば、ブーストアップや大型タービンへの変更によってそれなりにパワーアップが楽しめましたから、チューンナップに高じた方もいらっしゃることでしょう。
1.8リッター4気筒DOHCターボはストックで180psながら、タービンやインタークーラーを大型化したラリー仕様は210psまでパワーアップされています。
「4輪すべてがトラクションする楽しさは峠道で炸裂する」
足回りに関してもGT-Xからの変更はなされていない模様で、前後マクファーソンストラット、リヤに追加ウィッシュボーンといった装備。
それでも、マツダ大好きドイツ人によるインプレは「4輪すべてがトラクションする楽しさは峠道で炸裂する。魔法のじゅうたんにフルスロットルをくれたかのような爽快さ」とべた褒め(笑)。
実際、センターとリヤデフにビスカスカップリングを用いたのは大正解だったと思われ、WRCでも同じパッケージで参戦しています。ちなみに、ラリー仕様ではタービン、インタークーラーともに大型化されて210psほどにチューンナップ、足回りにも軽合金製パーツが多用されるなどグループNなりの戦闘力となった模様。
ホモロゲモデルとしてのスタイルは大型化&ランプ追加がなされたフロントスポイラー、ボンネット上のエアアウトレットくらいでしょうか。
フロントスポイラーはランプが追加されただけでなく、吸入口がしっかりあけられた複雑な設計。コンセプトモデルのSPORT-4とはかなり違います。
リヤガーニッシュが装備されたのも7代目ファミリアのトピックス。どういうわけか、ヨーロッパでは人気のあるパーツです。
「分かる人だけが分かる」くらいの地味加減も良き
同じく、インテリアは革巻き3本スポークのステアリング(MOMO)、革巻きシフトノブ、そしてサイドサポートが大きめのスポーツシートへと変更されています。
今なら限定仕様を表すプレートやシリアルナンバー、あるいはレーシーなデコレーションなどが盛られるのでしょうが、「分かる人だけが分かる」くらいの地味加減もよろしいのでは。
さて、こちらのサンプルはオークションの落札価格が3万6500ユーロ(約615万円)と、ホモロゲモデルらしい価格となりました。
1989/1991/1993年にグループNのタイトル獲得モデルという輝かしいリザルトを鑑みるまでもなく、マニアックな価値が分かる人は世界中にいるのだと実感できますね。
MOMO製の3本スポークステアリングを採用。当時のチューニングカーでは、こんな感じのコブラタイプが大人気でしたね。
このサンプルが高値をつけたのは、ホモロゲモデルという価値に加えて8900kmという走行距離や内外のコンディションが良好だったことが要因かと。
タイヤサイズは4輪ともに195/50 R15 82V、装着しているホイールは純正。ホモロゲモデルにしては、ちと地味なデザイン(笑)。
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