
[Q] 熱い闘いが繰り広げられるMotoGPやSBK。毎レース観ていて気になるのがタイヤです。前半にペースを上げると最後にグリップしなくなるとか、後半に備えて温存するとか、タイヤのグリップ性能はそんなに変わるのですか?
●文:ライドハイ編集部(根本健)
[A] トレッド面のゴム層が摩耗すると、ダンピング性能も落ちるからです
レース結果を左右するタイヤですが、最後までグリップの変わらないモノを用意できれば問題ないはず。なぜタイヤメーカーが開発しないのか、疑問に思われるかもしれません。
レーシングタイヤ=溝のないスリックタイヤは、技術的にもさまざまな要素が絡んでいて、簡単に説明できない部分もあるのですが、ここでは細かいコトは抜きにして概要だけでお話ししましょう。
タイヤが摩耗するとグリップしなくなるのは、路面と接しているトレッド部分のゴム層が薄くなるからです。タイヤのグリップ力は、もちろん一般的にコンパウンドと呼ばれるゴム質の粘着力がベースですが、じつはもっと大事なのがダンピング性能。
つまり、滑り出しそうになったとき、一気にスリップさせない減衰特性が大切になるのです。この特性は、ゴムの層がたわむことで得られるため、摩耗して薄くなると徐々にたわむ余裕がなくなり、厚みがなくなってしまうまで薄くなると、いきなり滑りやすくなります。
たとえば地震対策で使われる免震ゴムをイメージしてみましょう。あのゴム層が薄ければ横揺れに対し減衰できる性能は低くなりますよね。
トレッドのコンパウンドがどんなに柔らかく粘着力があっても、ゴム層が薄くなってしまうと、GPライダーでさえ深くバンクしたときのコントロールが難しくなるのです。
【レースでは一定のグリップ性能が求められる】摩耗によってトレッドのゴム層が薄くなると、MotoGPライダーでさえ思い切った走りができなくなる。レースでは一定時間グリップ性能が維持でき、ライダーが信頼できるバランスのいいタイヤが求められる
ゴムを分厚くすれば減りにくくなるんじゃない?
だったら、ゴム層を厚くすれば良さそうですが、これも厚すぎるとグリップ力の変化が常にある、とても乗りにくいモノになってしまいます。レースでは、一定のグリップ性能が維持されるコトが重要なのです。
もちろんグリップ性能が高くなければ、好タイムもマークできませんし、闘えません。そうなると、ベストなグリップがある一定時間以上は得られて、ライダーに信頼されるバランスを有しているのが、現在使われている仕様というワケです……
※本記事は2021年5月20日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ライドハイの最新記事
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
A.クラッチを切らずにギヤチェンジできるクイックシフターは便利なはずですが、確かに操作するときの状況によっては仰るようにギクシャクしたりショックがあって怖い思いをするかも知れません。加速(増速)側の場[…]
ホンダのVFやNRの影もカタチもない1977年の東京モーターショーにYZR1000デビュー! 1977年の第22回東京モーターショーのヤマハ・ブースに、白に赤ストライプのワークスマシンカラーの謎のマシ[…]
車体色が圧倒的に黒が主流の中に、ひとり華麗な光を放っていたヤマハ! このYDS1は1959年のヤマハ初のスーパースポーツ。パイプフレームに2ストローク250cc2気筒を搭載した、創成期のレースから生ま[…]
2005年に新しいフラッグシップとして東京モーターショーに出現! 2005年の東京モーターショーに、スズキは突如6気筒のコンセプトモデルをリリースした。 その名はSTRATOSPHERE(ストラトスフ[…]
最新の関連記事(教えてネモケン)
[A] 猛暑日はライダーへの負担がハンパなく大きい。自分で絶対守る何箇条かを決める覚悟が必須 避けるべきシチュエーション 真夏にバイクに乗る経験がまだ少ない方は、照りつける直射日光と照り返すアスファル[…]
[A] より剛性を高め、スムーズな動きを追求るために開発された フロントのサスペンション機構、“フロントフォーク”には正立タイプと倒立タイプがある…と聞いて、何のこと? と思われた方は、まず写真を見て[…]
[A] 軽いことにデメリットはありません。ただ…好みのバイクに出会えるか? 正直に言って、ボクも大きくて重いバイクの扱いには腰が引けています。乗って走り出してしまえば気になりませんが、停車時の押したり[…]
[A] スポーツ性を追求するなら1本ショック。2本ショックはルックス重視 昔ながらのネイキッド系のバイクの多くが今も2本ショックユニット仕様ですが、これはオートバイらしい伝統的なルックスを重視している[…]
[A] リムの裏側にスポークが貫通しているホイールにはチューブが必要 ご存知のとおり、バイク用のタイヤにはおもにチューブ入りとチューブレスの2種類があります。 チューブ入りはホイールとタイヤの間にゴム[…]
最新の関連記事(タイヤ)
オンロードに的を絞って新規開発 主な適合車種 ※[120/70R15・160/60R15]は、ほかにKYMCO AK550(生産終了モデル)、Honda FORZA 750(輸出専用モデル)などにも適[…]
Q5の技術を転用しながらα-14の遺伝子を継承 サーキットを主戦場とするQ5と、スポーツ&ツーリング指向のQ5Aの間に位置する存在にして、α-14の後継となるハイグリップスポーツラジアル。それが、ダン[…]
純正以外では世界では初のゴールドウイング専用品 GL1800・ゴールドウイング専用にサイズ展開 そして2つ目の画期的な要素は、ゴールドウイングに適合する既存のアフターマーケット製タイヤが、あくまでもク[…]
リヤタイヤにはフルバンクした痕がつくのに、フロントだと浅いバンク痕になってしまう……これって乗り方の問題!? 最近そこそこ乗れるようになってきた。リヤタイヤのトレッドに端っこのほうまで路面に接した痕が[…]
優れたグリップ力とハンドリング性能を誇るスポーツツーリングラジアル ミシュランが大型スクーター向け新型スポーツツーリングタイヤ「MICHELIN POWER SHIFT(ミシュラン パワー シフト)」[…]
人気記事ランキング(全体)
使わないのは「どうせ利かない」もしくは「踏んでもよくわからない」…… リヤブレーキをかけているライダーは、驚くほど少ない。 ブレーキペダルを踏んでも利いているかわからない、すぐABS(アンチロック)が[…]
振動の低減って言われるけど、何の振動? ハンドルバーの端っこに付いていいて、黒く塗られていたりメッキ処理がされていたりする部品がある。主に鉄でできている錘(おもり)で、その名もハンドルバーウエイト。4[…]
足着きがいい! クルーザーは上半身が直立したライディングポジションのものが主流で、シート高は700mmを切るケースも。アドベンチャーモデルでは片足ツンツンでも、クルーザーなら両足がカカトまでベタ付きと[…]
ホンダ新型「CB400」 偉い人も“公認”済み ホンダ2輪の総責任者である二輪・パワープロダクツ事業本部長が、ホンダ新ヨンヒャクの存在をすでに認めている。発言があったのは、2024年7月2日にホンダが[…]
一回の違反で免許取消になる違反 交通違反が点数制度となっているのは、よく知られている。交通違反や交通事故に対して一定の基礎点数が設定されており、3年間の累積に応じて免許停止や取消などの処分が課せられる[…]
最新の投稿記事(全体)
片手で食べられるハンバーガーはバイク乗りにおすすめ いよいよ始まるゴールデンウィーク。気候も暖かくなり、梅雨や猛暑を迎える前のこの時期はツーリングにうってつけだ。 ちょっとバイクで遠出しようか…そんな[…]
1位:スズキ『MotoGP復帰』&『850ccで復活』の可能性あり?! スズキを一躍、世界的メーカーに押し上げたカリスマ経営者、鈴木修氏が94歳で死去し騒然となったのは、2024年12月27日のこと。[…]
1105点の応募から8点の入賞作品を選出 株式会社モリタホールディングスは、このたび「第20回 未来の消防車アイデアコンテスト」を実施、受賞作品が決定となりました。 全国の小学生から集まった、1105[…]
「ETC専用化等のロードマップ」の現状 2020年に国土交通省が発表した「ETC専用化等のロードマップ」。その名の通り、高速道路の料金所をETC専用化にするための計画書だ。これによると、ETC専用化は[…]
一大ブームが巻き起こった1986年 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年に公[…]