
●文:ライドハイ編集部(根本健)
4気筒Z1の次は6気筒の目論みに見切りをつけ、コンパクトでアグレッシブな900に再挑戦!
カワサキが大成功を収めた1972年のZ1は、1976年にはZ1000へと進化し、1981年にはZ1100GPへと発展を遂げた。
しかし同じ頃、ライバルはV型エンジンや4バルブ化、さらにはターボチャージャーと、パワフルさに拍車をかける真っ只中。
カワサキもZ1で得た頂点の座を守るべく、新たなエンジン開発に取り組んでいた。1980年9月に下された新規開発の決定は空冷6気筒。ところがシックスならではのウルトラスムーズなパワーフィーリングに、なんと開発陣はZ1を凌ぐ衝撃には当らないと見切りをつけたのだった。
コンセプトを根底から見直した結果、ライバルの1000cc化に対してあえて900で挑み、エンジンにバランサーをつけてフレームとのラバーマウント化を避けた、剛性メンバーとして思いきりコンパクトな構成を目標に決定。
そのため、カムチェーントンネルを4気筒の中央に置く左端のサイドカムチェーンを量産4気筒で初採用。そうなるほど高まる熱量に、最後発となった水冷化で開発は急ピッチで進められた。
デザインもCD値0.33の驚異的な空力特性を得ながら、当然のフルカウルで進行していたが、カワサキの個性を重んじる考えから、サイドカムチェーンが“左右非対称のカッコ悪さ”に見えるかもしれないネガティブ要素を、反対の武器にしようと、両側面を切り欠いてエンジンを見せる、ニンジャ人気を決定づけた大英断も下された。
GPZ900Rは、1983年のパリサロンでデビュー。続く12月にアメリカのラグナセカスピードウェイでワールドプレス発表。900ccながら115psで250km/hのトップスピードと、0-400mを10.976秒のパフォーマンスは、世界の注目を集めていた……
※本記事は2022年12月13日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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