[ワイヤーケーブルの動きが重い/ざらつく] ワイヤーグリースを使ってメンテナンスしてみた

ワイズギア|ヤマルーブ

ライダーの意思を確実に伝えるワイヤー類は、メンテナンス次第で操作性が向上し寿命も延びる。性能低下が分かりにくいためついつい先延ばしにしているうちに、ある日突然「ブツッ!」と切れないよう、定期的に洗浄とグリースアップを行い、コンディションの維持を心がけよう。


●文/写真:栗田晃(モトメカニック編集部) ●外部リンク:ワイズギア

定期的なグリースアップで操作性を向上しよう!

最高出力が200馬力近い1000ccクラスのスーパースポーツモデルであっても、クラッチレバー操作力が拍子抜けするほど軽いのが最新のバイクの特長だ。アシスト&スリッパークラッチといったデバイスの効能もあるだろうが、レバーを握る力が小さければ疲労は少なく、デリケートな操作も可能になる。

クラッチの圧着力をクラッチスプリングの張力に頼る従来モデルの場合、操作力の軽さは現行車にかなわないかもしれない。だが動きの滑らかさなら日常的なメンテナンスによって維持できる。現在普及している一般的なワイヤーは、テフロンチューブとステンレスワイヤーの組み合わせで、摺動時のフリクションロスを軽減している。そこに適切な潤滑ケミカルを与えることで、さらなるフリクションロスの軽減と、ワイヤーの長寿命化を両立できる。

今回使用したヤマルーブのワイヤーグリースは、潤滑成分の中にフッ素樹脂の微粉末が配合されている。フッ素樹脂はそれ自体の摩擦係数がとても低く滑りが良いのが特長で、テフロンチューブとワイヤーの当たりが強くなる屈曲部の抵抗軽減に効果を発揮する。グリースの粘度が高すぎると抵抗になり、低すぎると流れ落ちやすくなるので、ワイヤー潤滑専用の粘度に調整されている。

その潤滑効果を引き出すには、グリースがワイヤーの内側にくまなく行き渡るよう、汚れたグリースをブレーキ&オイルクリーナーで事前に洗浄することも重要だ。念入りに作業すれば手間と時間はかかるが、操作性向上に効果のあるグリースアップは忘れずに行いたいメンテナンス項目である。

フッ素樹脂微粉末配合で潤滑性と耐久性を向上

どんなスプレーオイルでも一定の潤滑性は期待できるが、ヤマルーブのワイヤーグリースはワイヤーの潤滑に特化している。泥水をかぶることもあるモトクロスや、クラッチ操作がシビアなトライアルなどの悪条件下でも、潤滑性と減摩効果が持続するよう開発されている。

ワイヤーグリースの潤滑性能を引き出すには、長くて狭いワイヤー内部に詰まった汚れた油分をヘキサンやエタノールで溶解し、エアゾールのガス圧で押し出すことが重要。アウターとインナーワイヤーの隙間に金属ノズルが入らない場合は、ケーブルインジェクターを併用する。

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クリーナーとグリースの使用前にレリーズアーム側の準備が重要

クラッチホルダーからクラッチケーブルを外す際は、ロックナットを緩めてアジャスティングボルトをホルダーにねじ込み、スリット部分を一直線に合わせる。

アウターワイヤーを引きながらクラッチレバーを握りゆっくり離していくと、アジャスティングボルトをねじ込んで遊びが増えた分、ケーブル自体がボルトから浮き上がるので、スリット部分から引き抜く。

クラッチレバーからワイヤーのタイコを外して、アウターワイヤー先端にケーブルインジェクターを取り付ける。インジェクターはゴムガイド内径がアウター金具外径とマッチしたものを使用する。

ケーブルインジェクターにスーパーブレーキ&オイルクリーナーをセットしてスプレーする。インジェクターからクリーナーが逆流する時はゴムガイドの取り付け状態を確認して再度スプレーしてみよう。

クリーナーやグリースはケーブルの反対側から流れ出るまでスプレーする。その際にレリーズアーム周辺が汚れないよう、事前にケーブルを取り外してドレン経路を作っておく。

ワイヤー内部にクリーナーが残ったままグリースを注入しても、定着しにくく洗い流されてしまうので、洗浄が終了したらエアブローガンで押し出す。汚れがドバッと出たら再度洗浄しよう。

ワイヤーグリースを注入する際に、ある程度インジェクター側に逆流するのは仕方がない。そこでケーブルの反対側に「シューッ」と空気が流れてくる音がするかどうか、耳をそばだてて確認する。

ケーブルの反対側からスプレーガスの音が聞こえれば、やがてワイヤーグリースが流れ出してくる。音がしない場合、ケーブルインジェクターの取り付け方やノズルの差し込み方を変更してみる。

ケーブルを復元する前に、クラッチレバー/レバーホルダー/レバーピボットボルトを洗浄してグリースアップしておく。レバー可動部はリチウム系やウレア系グリースを厚塗りしすぎないように塗布する。

グリースが行き渡ることで、レバー操作が軽くなりワイヤーの動きは滑らかになっているはず。その状態を覚えておいて、ザラついたフリクションを感じるようになったらメンテナンスを行おう。

グリースアップのついでにケーブルレイアウトも再確認しよう

オフ車でコースを走行すれば、砂まみれ泥まみれになるのが当たり前。日頃から洗車していても、スロットルホルダーの内側には砂が入り込んでいる。これがワイヤーのザラつきの原因になるのだ。

スロットルケーブルはクラッチのようにアジャスターを緩めれば簡単に取り外せる構造ではないが、徹底洗浄するにはスロットルドラム側のアジャストナットをダルダルに緩めて取り外す。

スロットルケーブルもクラッチケーブルも、通し方で作動性が変わる場合がある。ハンドルを左右に切った時に違和感が出るといった時には、サービスマニュアルの図で確認してみよう。

スロットルケーブルは端部にケーブルインジェクターが取り付けできない形状だったため、漏斗状にしたビニール袋を巻き付けてブレーキ&オイルクリーナーをスプレーした。臨機応変に対処しよう。

クリーナーのガス圧でゴミや汚れが押し出された。インナーワイヤーの一部に光沢がある場合、ケーブルガイドの端部と擦れている可能性があるので、切断の原因となるほつれがないかチェックする。

ワイヤーグリースを注入する際もビニール袋を利用する。クリーナーより粘度が高いので、ワイヤー内部に行き渡るのにある程度の時間を要するが、反対側から出たことを確認してから復元する。

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