
フロントフォークの摺動部にサビがあると、オイルシールリップに傷が付き、新品オイルシールに交換したにもかかわらず、すぐにオイル漏れが始まるなどなど、過去にそんな経験で悩んだことがあるサンデーメカニックは数多いはず。新品部品が供給されていれば安心だが、機種によっては、決してそうとも限らないのが今も昔も旧車の世界だろう。そんな「困った…」を正面から解決してくれる、東洋硬化(福岡県)を紹介しよう。
●文/写真:たぐちかつみ(モトメカニック編集部) ●外部リンク:東洋硬化
旧車部品再生だけでなく“イオンプレーティング処理”にも注力
機械部品の再生業務を手がける東洋硬化(福岡県)は、旧車部品の再生ばかりではなく、ワークスマシンにも施されているような「イオンプレーティング処理」にも注力している。アークイオン化する金属の材質によって、さまざまな色味を帯びるのが同処理の特徴だが、たとえば、切削工具のドリルやエンドミルなどに採用され、ホームセンターにも陳列例があるゴールド色のツールが、まさにこの処理例である。
ゴールドに変色するのはチタン素材をアークイオン化したときの特徴で、高性能スポーツバイクのインナーチューブにも採用例がある。『モトメカニック』編集部では、連載車両にイオンプレーティング処理の「パープルブラック」を実践した。HV(ビッカース硬さ)値で比較すると、一般のハードクロームめっきがHV900、チタンコーティングでHV2000。一方、パープルブラックだとその表面硬度はHV2500〜3000となる。
旧車レストアなどのハードクロームめっき再生なら、1本あたり税別2万3000円。同処理+イオンプレーティング処理は、1本あたり税別4万5000円だ。
新品チューブへのイオンプレーティング処理のみなら1本あたり税別3万円(分解可能なリアショックならダンパーロッドの処理もできる)。社内一貫で複層膜(ハードクローム+イオンプレーティング)処理が可能な東洋硬化の技術には、今後も注目したい。
上からクロムナイトライド/マルーングラデーション/パープルブラック/ブレードシルバー/ゴールドチタン/バイオレット。この色味の中から好み色をチョイスできる。
旧ハードクロームめっきや浸食したサビを円筒研削&研磨処理した後に行うのが、密着性が極めて良いニッケルめっき工程。ニッケル下処理後にハードクロームめっきが施される。
シェアが大きなハードクロームメッキ仕上げ。量産性優先の純正メッキ仕上げに対して、下処理を含めて防錆性能が高まり、サビにくいのが東洋硬化の再生技術だ。連載プロジェクト車両CS90Rのフロントフォークもイオンプレーティング仕上げに!!
イオンプレーティング処理とは、さまざまな素材(ターゲット)をアークイオン化して、インナーチューブ表面に密着させる処理技術を言う。通常のハードクロームめっき仕上げに対して、表面硬度も摺動抵抗も、圧倒的に高まるのが大きな特徴だ。
新品部品をベースにしたイオンプレーティング処理を依頼するレーシングチームがある一方で、旧車再生+高性能化を目的としたサビ部品の依頼も年々増えている。
円筒研磨処理には、砥石をチューブと並行に研磨するタイプと回転軸を立てたバーチカルタイプがあり、いずれの作業もめっき工程前後に組み込まれている。バーチカル研削(ロール研磨)は、表面の粗さを整える倣い研磨の要素を持つ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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