
人気の絶版車であれば、リプレイス部品でフロントフォークのインナーチューブの販売例は複数ある。しかし、不人気モデルとなると、純正パーツはもちろん、どこをさがしてもリプレイスパーツを見つけることができなかったりする。それならは、サビたインナーチューブを再生すれば良い!! 本記事では、インナーチューブメッキのプロ・東洋硬化さんにお願いをして、不人気車のフロントフォークの再生を試みた。
●文:モトメカニック編集部 ●写真:東洋硬化 ●外部リンク:東洋硬化
充実した個人向けサービスも展開する東洋硬化
再生めっきを引き受けてくれる業者が減りつつあるその一方で、以前ではなかなかなかった、個人向けのサービスが充実した“めっき”業種もある。レストアや絶版車好きのライダーならならご存じだろう。東洋硬化(福岡県)が、まさにそのめっき業種である。
東洋硬化が得意としているのは、ハードクロームめっき=硬質クロームめっきの分野。バイク部品としては、フロントフォークのインナーチューブやリヤショックのダンパーロッドの再生クロームめっきに需要がある。
前後フェンダー/ライトケース/チェーンケースなど、旧車の外装部品に多いのは、装飾系のクロームめっき処理。サスペンションパーツなどの精密機能部品に施されるめっきは「ハードクロームめっき」と呼ばれ、表面硬度が高く、寸法精度をシビアに指定することができる、いわば機能めっきとも呼ぶことができる処理技術だ。
大型建設機械のシリンダーロッドやガイドバーなど過酷な条件下で使われることが多い建機は、外的ダメージを受けやすく、露天放置されるケースもあってサビも発生しやすい。
そんな業界のニーズに応えて、長年にわたって再生ハードクロームメッキの分野を担当してきたのが東洋硬化。20年ほど前からは、バイクユーザー向けの部門を立ち上げ、現在では、イオンプレーティングなどの表面処理技術の施工も請け負っている。
正立フォークのインナーチューブの場合、納期は2〜3週間、倒立フォークは、それにプラス1週間ほど見てほしいそうだ。気になる再生コストは、今回採り上げたホンダCBX250S・250ccモデル用正立フォークで、4万4000円(2本)。サビが深かったり、曲がり修正があるとプラス数千円のコストになるそうだ。それでも純正部品を再生リフレッシュできるのだから嬉しい!
不人気モデルで互換性がなく、しかも点サビが酷くオイル漏れが止まらない…。そんなインナーチューブは、新品を探すのではなく、専門業者に依頼して“再生”するのが確実かつ手っ取り早い!! しかも仕上がりクオリティが純正部品以上になるケースも多々ある。
作業後、インナーチューブと一緒に送られてきた検査表。
受注時の寸法を記録してビフォアデータを残し、作業完了&出荷前には、厳密な仕上がり寸法や精度を測定。管理表に記載した上で納品される。今回のように不人気モデルの場合、パーツ探しに苦労してしまうが、この仕上がりなら何も心配はいらない。
曲がり修正した後に、円筒研磨機でサビた硬質クロームめっき層を研磨除去。当然ながら、サビの深さによって研磨寸法は変わってくる。程度が良ければ作業時間も短かいのだ。
サビが深いと円筒研磨量が増え、インナーチューブが細くなってしまうことになるが、その肉厚を稼ぐ目的にもニッケルめっき処理は都合が良い。金属地肌への密着性や柔軟性が高く、防錆性が良いのも大きな特徴だ。
東洋硬化が新たに導入した超大型の円筒研削盤。なんと太さΦ1650ミリ/長さ8000ミリまで対応可能になった。大型建設機械のシリンダーロッド再生には必要不可欠な設備だ。
金属地肌が露出した研磨状態なら、ダイレクトにハードクロームめっき処理を施せるが(メーカー純正部品やリプロパーツの手順)、東洋硬化では、防錆処理およびメッキ膜厚のコントロールを目的に、ニッケルめっき処理を素地の上に施している。
装飾クロームめっきの仕上がり後は洗浄と乾燥工程だが、ハードクロームめっきの場合は円筒精密研磨によって1/100ミリ台の精度へ仕上げられる。一気に削るのではなく、徐々に仕上げられていく。
研磨作業中のインナーチューブがビビらないように、サポートで保持される。純正部品よりもハードクロームめっき層が厚く防錆処理も施されるため、東洋硬化で再生したインナーチューブはサビにくい。
目視確認されながら、最終仕上げのバフ研磨処理が行われる。表面を平滑に、そしてさらなる光沢出しも行われる。めっき作業前のインナーチューブ表面を整える作業もこの工程で行われる。
高精度な再生ハードクロームメッキが可能な福岡県久留米市の東洋硬化は、海外からの受注も多い。数多くの工作機械が並ぶが、これは工場のごく一部にすぎない。
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