
以前の記事で、SP武川製ハイパーチューニングセットを購入したことを報告しました。それはFIコン TYPE-e(インジェクションコントローラー)/スポーツカムシャフト/ハイコンプピストンがセットになった、排気量を変えずにパワーアップできるお得なキット(10万1640円)。一度にすべての製品を装着すると、その機能や変更後の特性変化を感じられないので、徐々に組み立てアップデート。第1段階(前回)はFIコンの装着。レブリミッターを解除し、SP忠男マフラーに対応するべく燃調マップも変更し、全域でのパワーアップを体感しました。そして今回は“ハイカムに交換”。さてどんな性格に様変わりするのでしょうか?
●文/写真:モトメカニック編集部(ミヤシーノ宮下豊史) ●外部リンク:スペシャルパーツ武川
2022年に引き続き2023年夏も北海道に上陸!! 広大な大地でテスト走行 ホンダCT125ハンターカブのエンジンは1万回転以上回るらしい、という話を聞いた。ノーマルエンジンのレブリミットは8500回[…]
今回はSP武川製ハイパーチューニングセットのハイカムを交換
筆者がホンダの4ミニのエンジンを開けるのは初めて。今回はカムシャフト交換のみなので、カバーを外したぐらいの軽作業ですが。今までは、エンジンチューニングにトライしたことも、致命的な不具合を抱えていそうなエンジンを開けることもありませんでした。
ただし、スズキチョイノリは除きます。旧モトメンテナンス時代の記事を参考に、面研やポート研磨をした思い出が。とはいえそれも20年近く前のお話。今回のハイカム交換作業はモトメカニック編集部・栗田氏が終始横で指導してくれたので、不安なく進めることができました。納得の行くバルブクリアランスするのに時間はかかりましたが。
前回の記事で、インジェクションコントローラーを導入し燃調マップを変更したところ、トルク感が向上して、アフターファイヤーが減少するなどその効果を実感しました。また、レブリミットも8千回転から9千回転に変更。スロットルを全開にし、徐々にタコメーターの表示が上がっていくのを我慢することで、上限値が変わったことを体感できましたが、そこにパワー感はなく、最高速が上がることもありませんでした。
しかし、今回のカム交換では、劇的に面白いエンジンに様変わりしました。低回転時のトルクは薄れましたが、レッドゾーンまでスムーズに吹け上がるエンジンに変化。前とは違い、6千回転から9千回転まで回していくと、しっかりとしたトルクがついてきます。
なので、しっかりと回転を引っ張り上げてからシフトアップすると、メットの中が自然と笑顔になるぐらい、ハイカムへ変更したチューニングの効果を体感できます。下に今回の交換工程の写真を掲載しています。
さて、SP武川製ハイパーチューニングセットに同梱されていたパーツの中で、未装着品はハイコンプピストンのみ。カム交換作業以上の工程があるので大変そうですが、変更後どんなエンジンになるか楽しみです!!
ついにCT125ハンターカブのエンジンに手を入れることに。まずはカムスプロケットカバーを外す。大きなOリングがはまっているので、取りにくい場合はブラスチックハンマーでコンコンと叩き外す。
ヘッド部上下の吸気/排気のバルブアジャストホールキャップを外す。とくに排気側を外す際にオイルが垂れるので、床に垂れ流さないよう、下にバットを敷いておくのを忘れずに。Oリングが張り付いているので注意。
中央のクランクシャフトホールキャップと左上のタイミングホールキャップを取り外す。クランクシャフトホールからレンチを差し込み、クランクシャフトを反時計回りで回転させる。
クランクシャフトを反時計回りで回転させ、タイミングホールからフライホイールを確認。Tマークの頭にある印とカバー左上の切り欠きをあわせることで、圧縮上死点となる。この位置で作業する。
マークを合わせるだけではなく、ロッカーアーム側でも確認をする。ロッカーアームを指で掴み、若干の遊びがあれば、圧縮上死点と判断できる。吸気側/排気側の両方ともチェックする。
ワッシャー状のガスケットも一緒に外れるので、カム交換後、復元する際に忘れないように。このボルトを押すことでカムチェーンテンショナーがフリーになり、カムチェーンが緩んで分解しやすくなる。
作業は1時間ほど。慣れれば簡単な作業だが、その割にフィーリングが劇的に変化
回り止めの特殊工具をカムスプロケットの小さな穴にかけて固定。スプロケットのセンターのボルトを回し緩める。電動工具があると効率が格段に上がる。今回は電動のインパクトレンチでガガガガガ。
オイルまみれのカムスプロケットをカムシャフトから取り外し、いったんシリンダー側に移動させることでチェーンのテンションを緩める。チェーンの自由度が増すので、隙間からスプロケットの歯からカムチェーン外す。
ロッカーアームのシャフトが抜けないように押さえているプレート状のシャフトストッパーを外す。裏表があるので、装着時に間違えないように向きを確認し記録しておこう。
フリーとなったロッカーアームシャフトをプライヤーで引き抜く。バルブアジャストホールからロッカーアームを外すが、排気側はシャフトを引き抜くと下へ落下するので注意。
カムシャフトを取り外す前にシャフトの溝部が地面に対して上向きの位置になっているかを確認。その位置でカムをシリンダーヘッドから外す。外れないときはスライディングハンマーを使用。今回はそれを使用しなくてもすんなりと外れた
新しいカムシャフトにオイルを塗布。このシャフトにも溝があるので、それを上向きにしつつ、シリンダーヘッドへカムを挿入。部品同士がガチャガチャと当たらないように優しく。
ロッカーアームを復元する前に、バルブを押す先端の当たり面の摩耗や傷をチェックする。ロッカーアーム/ベアリング/シャフトにオイルを塗布し、シリンダーヘッドに装着。
シャフトストッパーを装着し、カムスプロケットに打刻されている丸印の位置/フライホイールのTマークの位置を説明書通りに復元。最後にトルクレンチを使用し締め付ける。
バルブクリアランスをシックネスゲージで計測し、指定の隙間が開くように調整。吸気0.10mm/排気0.17mm。どちらも±0.02mmの範囲内に収める。カバー/ボルトを復元する前に、若干のオイルを注油。
カムシャフトは単品購入可能
【スポーツカムシャフト(N-15) デコンプレス仕様】正確なデータがメーカーから出ていないが、カム山をノギスで計測すると0.2mmほど高いことがわかった。デコンプがないので、排気量アップするとセルのパワーが足りないかも。 ●価格:1万3200円(単体での販売価格) ※マフラー交換している場合はFIコン TYPE-e(インジェクションコントローラー)が必要
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
構成要素のすべてに技術的な裏付けがあるSP2シリーズ そもそも山口県のバイクショップからスタートしたASウオタニ。SP2フルパワーキット/SP2パワーコイルキット/SP2ハイパワーコイルセットといった[…]
エンジンと同時進行で開発されるオイルの重要性を再確認 シリンダーとピストンやクランクシャフトのジャーナル部分、クリアランスが狭い部分など、エンジンの隅々にまで行き渡って潤滑や冷却などの役割を果たしてい[…]
メッキのプロが開発したクロームメッキ専用品!! 鉄素材のさまざまな表面処理の中で光沢や質感、高級感のいずれにおいても秀でているのがクロームメッキだ。しかしながら近年では、メッキ工程で使用される六価クロ[…]
“機械遺産”のコンディションをどう維持するか 電気自動車や電動バイクの普及が進めば進むほど、旧車や絶版車ムーブメントは一段と熱くなりそうだ。内燃機関に対する注目度が高まるのと同時に、ユーザー自身は“機[…]
擦らず拭くだけでOK。デリケートな素材も傷つけることなく赤サビを除去できる バイクや自動車の部品はもちろん、橋梁/建築物/工具/アウトドア用品の材料として当たり前のように使われている鉄素材。豊富な埋蔵[…]
最新の関連記事(CT125ハンターカブ)
最短2日間で修了可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付を除い[…]
125ccクラスは16歳から取得可能な“小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり[…]
2020年モデル:初代は2色ラインナップ スーパーカブシリーズ中で究極のアウトドアマシンとして支持されていた“ハンターカブ”が、8年ぶりに復活を遂げたのは、2020年6月26日のこと。名称は、CT12[…]
ナチュラルカラーの「パールシュガーケーンベージュ」と「パールスモーキーグレー」を追加 「CT125ハンターカブ」の2025年モデルが発売されたのは、2024年12月12日のこと。新色はいずれもアースカ[…]
“ターメリックイエロー”爆誕ッ!! CT125ハンターカブの2024年モデルが発売されたのは、2023年12月14日のこと。新色の「ターメリックイエロー」が追加された。ホンダいわく“市街地や郊外で映え[…]
人気記事ランキング(全体)
懐かしの四角ライトに極太のブロックタイヤ 1987年に発売されたやまは「TW200」は、フロントに130/80-18、リヤには180/80-14という極太タイヤを履いたファットなオフロードスタイルで人[…]
1位:直4ネオクラシックZ400RS最新情報/予測 最強400ccモデルであるニンジャZX-4Rをベースとした直列4気筒のヘリテイジネイキッド「Z400RS」(仮称)が開発されているという噂。77ps[…]
ライディングポジション変更のおかげで操縦性も大幅アップ! 私が参戦する全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスは、5月下旬にシーズン初戦を迎え、私自身も今季のさらなる走りの進化に期待しているのですが[…]
日本でも人気、コンパクトな車体と味わい深いエンジンの軽二輪モデル カワサキは欧州において、日本でいう軽二輪のレトロバイク「W230」と「メグロS1」の2026年モデルを発表した。注目はW230のニュー[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
最新の投稿記事(全体)
2025年モデルではさらなる排熱&快適性を徹底追求! 空冷式ジーンズは2022年の登場以来、完成度を高め続けてきた。2024年には走行風取り込み効率を150%にまで高めたフィン付き空冷式ジーンズを投入[…]
姫川沿いダートからの北アルプス(飛騨山脈):大出(おいで)の吊橋で知られる大出公園へと姫川本流沿いのダートが続いている。田畑の遥か向こうには北アルプスの山並みが横たわっていた。 どこを見ても絶景の白馬[…]
身体の内側から危険を察知する「熱ごもりセンサー」内蔵 猛暑が続く夏がやってきた。ヘルメットを被り、革ツナギやジャケットをまとうバイク乗りにとって、もっとも警戒すべきは熱中症。いくら風を切って走っていよ[…]
講習内容を検討する“指導検討委員会” が開催 2025年1月29日、埼玉県知事公館において「令和6年度 高校生の自動二輪車等の交通安全講習に係る指導検討委員会」(以降、指導検討委員会)が開催された。本[…]
日本時間16時(欧州時間9時)に“スペシャルなニュース”が! スズキは、国内サイトとグローバルサイトのそれぞれに、同社を代表するスーパースポーツ「GSX-R」シリーズが初代「GSX-R750」の発売か[…]
- 1
- 2