マシンのカテゴリーとライダーの自己申告で4クラスに分けて、定期的に鈴鹿ツインサーキットを走行するサーキット走行イベント「アストライド」。このイベントを主催するモトジョイ・佐藤会長の願望のひとつが、“ガレージで眠っている1970〜80年代レーサーの復活”であり、F-1/F-3マシンに加えて、2ストロークレーサーのエントリーも順調に増えてきた。そして今回ついに、TA/TDからTZに至る往年のヤマハレーサーの出場台数が20台となった!! 次シーズンはヤマハ以外のレーシングマシンの参戦も期待したい。
●文/写真:モトメカニック(栗田晃) ●外部リンク:オーヴァーレーシングプロジェクツ
4クラスとも定員いっぱいでフルグリッドを達成!! サーキット走行の楽しさをフルコースで満喫
往年の世界GPファンの中には、近年のMotoGPより1978〜80年にかけてのケニー・ロバーツGP500ccクラス3連勝の方が記憶が鮮明という人もいるだろう。その理由のひとつが、市販レーサーTZ250/350の先にファクトリーマシンのYZR500が存在した、というストーリー性にある。
事実、1960年代終盤の世界GP参戦終了後、ヤマハはモータースポーツ普及のため市販レーサーに注力し、1973年にTZ250/350、1979年にTZ125、そして1980年にはTZ500を販売。
ホンダMT125/RS250、スズキRGB500など他メーカーにも市販レーサーは存在したが、たとえばTZ250は、鉄/クロモリフレーム時代だけでも10年間の歴史があり、それなりの数が今も現存する。
そうしたヒストリックレーサーを存分に走らせることができるサーキット走行イベントが「アストライド」だ。主催者であるモトジョイ佐藤会長の“眠っている往年のレーサーを引っ張り出す”という狙いは、競技性が高いクラシックレースとも、さまざまなバイクが混走するスポーツ走行とも異なる、アストライドならではのもの。
往年のマシンに興味のあるサンデーメカニック、ひっそりとレーサーを所有しているオーナーは、今シーズンにぜひともアストライドに足を運んでみてほしい。2024年は6月1日(土)/10月26日(土)の2回開催だ。
レジェンドライダー、米寿のお祝いで登場。リバースヘッドのTZ500
1960年代のヤマハワークスライダー・宇野純一郎さんの米寿を祝い、Classic YAMAHA Racing Clubから出場したTZ500。ライダーはモーターサイクルジャーナリストの和歌山利宏さんだ。
このマシンは、和歌山さんがヤマハ社員だった時代の先輩・飯田正道さん(右下写真ツナギ姿左側)が所有する、USインターカラーの1982年型。TZ500は1980年に市販が開始され、1982年型は並列4気筒エンジンの左右両方が後方排気なのが特徴。
アルミフレームに並列4気筒エンジンを搭載。目まぐるしく仕様が変更された1981年型YZR500
1980〜1982年の市販期間、ずっとクロモリフレームだったTZ500に対して、ファクトリーレーサーのYZR500は、1980年シーズンからクロモリに加えてアルミフレームをテスト。1981年シーズンの0W53から本格導入となった。
エンジンは1980年で実績のある両側ヘッド後方排気の並列4気筒に加えて、ロータリーバルブのスクエア4も投入、こちらは0W54と呼ばれた。1973年以来の並列4気筒最終モデルとなったマシン。
長期間不動状態だったかつての愛車。シニア割を活用してアストライド初参加
モータースポーツの普及を目的にTZ125が発売されたのが1979年。市販車改造のプロダクションレースより本格的なレース活動をするため、1980年代にこのマシンを購入したYさん。
その後知人に譲ったものの、ガレージの隅で眠っていると聞いて引き取り、レストア後にサーキット走行を楽しんでいる。カウル類の一部にリプロパーツを使用しているが、大半は当時の状態を維持している。
消音対策のサイレンサーはドリーム50用。クランクが360度なのでマシン名はCD
CB72/CB77の後継モデルとして、1968年に登場したのがCB250/350シリーズ。水谷さんは350ccのベース車を手に入れたつもりだったが、よく確認するとエンジンはCD250のボアアップ版で、クランクは180度ではなく360度だった。そこで気持ちを切り替え、CD350と名付けて楽しんでいる。
20年ぶりのサーキット走行。当時モノのツナギを着るため6kg減量
XL250S用をベースとしたキック始動専用のシングルエンジンにより、乾燥重量125kgという250ccトップクラスの軽量さを武器にしたCB250RS。20年ぐらい前に知人からタダで譲り受けて、しばらくサーキットで楽しんだ後に放置状態だったものを復活させてエントリーしたOさん。ツナギも20年モノだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
小ねじカッター:テコの原理でズバッと切断でき、バリ取りなしで使えるのが画期的 ESCOの小ねじカッターは、本体先端部分のピボットやテコの原理を活用した3枚合わせの本体構造など、オリジナリティに富む設計[…]
金属加工で培ったワンオフパーツ製作や溶接技術を生かし、マニアも納得の“サンキュッパフレーム”を製作 初期型/前期モノと呼ばれるモデルが尊重される多くの絶版車と異なり、後期型が好まれているのがホンダCB[…]
オーバーホール完了後の初期型用純正キャブレターを車体に装着。初期シリーズはツインキャブ!! 不動状態で近所のバイク屋から引き上げてきたGB250クラブマンですが、走行距離の少なさとその素性の良さを信じ[…]
キャブレターボディ内部の汚れは漬け込みタイプのクリーナーが効果的 キャブレターやガソリンタンク内に長期間溜まったガソリンは、時間の経過とともに劣化、変質します。どの程度の期間で劣化するかは保管状況など[…]
フレームを塗装する際にパウダーコートがおすすめな理由 外装部品をどれだけ磨き上げていても、フレームや足まわりが錆びたり塗装がヤレていると、バイク全体の印象は悪くなる。逆に外装がくたびれていても、黒いパ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
真摯な取り組みから生まれたスズキの良心だった 日本初のナナハンことホンダ「CB750フォア」に対し、GT750は2年後の1971年9月に登場しました。何に感動したかって、低回転のままスルスルっと滑るよ[…]
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
特別な存在をアピールする“衝撃”=IMPULSEと名付けたバイク スズキには、1982年から400ccネイキッドのシリーズに「IMPULSE(インパルス)」と銘打ったバイクが存在した。 IMPULSE[…]
ホンダの英国車風シリーズ「GB」 ミドルクラスで大人気のバイクのひとつといえば、ホンダのGB350だよね! じつは、このGBという名前、かつてのホンダ、英国風カフェレーサーシリーズから引き継がれている[…]
250ccの4気筒はパフォーマンスで不利。それでも届けたかった4気筒の贅沢な快適さ 250ccで4気筒…。1982年当時、それは国産ライバルメーカーが手をつけていないカテゴリーだった。 1976年にD[…]
最新の関連記事(イベント)
保険料500円でヨシムラ車、乗り放題ッ!! ヨシムラファンにとって秋の定例イベントとなっている「ヨシムラミーティング」。ヨシムラが那須モータースポーツランドでイベントを行ったのは2014年の60周年記[…]
あの頃の憧れが、目の前に 展示の目玉は、1975年に登場した初代GL1000。当時としては革新的な、水平対向6気筒エンジンを搭載し、大型ツアラーの新時代を切り開いた伝説のマシンだ。若かりし日に、ショー[…]
BMWオーナーズクラブの親睦を深める大宴会! 日本最大規模を誇るBMWモーターサイクルのオーナーズクラブである『BMW Clubs Nippon(以下BCN)』。全国で9つの地区に分けられ、ふだんから[…]
コヨーテミーティング、2024年は会場を変更して開催 2023年までは渡瀬川の河川敷が会場だったコヨーテミーティング。毎年多くの来客があるイベントとして定着しているが、実は2023年の秋に今回の新会場[…]
ハーレーコンテスト/トークショー/愛車撮影会などの人気イベント 開催されたのは2024年5月19日。毎年、梅雨前の天気が安定している時期での開催なので、今年も絶好のツーリング日和となり、数多くのライダ[…]
人気記事ランキング(全体)
小椋藍選手のファンならずとも注目の1台! MotoGPでは小椋藍選手が来季より移籍(トラックハウスレーシング)することでも注目のアプリリアから、新しいミドルクラスのスポーツモデルが登場した。欧州ではす[…]
電熱インナートップス ジャージタイプで使いやすいインナージャケット EK-106 ポリエステルのジャージ生地を採用した、ふだん使いをしても違和感のないインナージャケット。38度/44度/54度と、3段[…]
グローバル展開では『500cc』のほうが有利になる地域も ホンダ「GB350」シリーズといえば、直近ではクラシカル要素を強化したGB350Cも新登場し、走りのフィーリングまで変えてくるこだわりっぷりが[…]
125ccスクーターは16歳から取得可能な“AT小型限定普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限[…]
4気筒CBRシリーズの末弟として登場か EICMA 2024が盛況のうちに終了し、各メーカーの2025年モデルが出そろったのち、ホンダが「CBR500R FOUR」なる商標を出願していたことがわかった[…]
最新の投稿記事(全体)
洗うことが楽しくなる魔法のアイテム 2024年夏にサイン・ハウスより発売された「ポケッタブル高圧洗浄機 SWU-1」。800gという業界最軽量・最小クラス(※サイン・ハウス調べ)で3段階の圧力、5つの[…]
2024年は鈴鹿8耐3位そしてEWCで二度目の王座に ポップが切り拓き、不二雄が繋いできたヨシムラのレース活動はいま、主戦場をFIM世界耐久選手権(EWC)へと移し、陽平がヨシムラSERT Motul[…]
メンテナンス捗るスタンド類 ちょいメンテがラクラクに:イージーリフトアップスタンド サイドスタンドと併用することで、リアホイールを持ち上げることができる簡易スタンド。ホイールの清掃やチェーン注油などの[…]
トラコン装備で330ccの『eSP+』エンジンを搭載、スマホ連携5インチTFTメーターを新採用 シティスクーターらしい洗練されたスタイリングと、アドベンチャーモデルのエッセンスを高次元で融合させ人気と[…]
「BMW F900XR」3台を先行導入 BMWは、首都高速道路のバイク隊に向け「F900XR」を納入したことを発表。これは「「BMW F900XR POLICE仕様」をベースとしたものだ。 黄色いバイ[…]
- 1
- 2