ライダーの意思をエンジンに伝えるスロットルワイヤーは、遊びがわずか1mm変化しても違和感を感じることがあるほど繊細。インナーワイヤーのサビや潤滑不足は論外だが、メンテナンスを行ってもフィーリングが悪い時は、ワイヤー自体の見直しが必要だ。アドバンテージが最高クラスのワイヤーブランドと共同で開発を行う「スーパーローフリクション ステンレススロットルワイヤー」は、誰もが実感できるフリクションの低さが特徴。絶版車ユーザーにとっては、純正部品と互換性があるのも魅力的だ。
●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:アドバンテージ
ライダーの右手とキャブレターが直結する、感動のスーパーローフリクションワイヤー
スロットルワイヤーにとって重要なのは、開度が小さい領域をジワジワと開閉する際にリニアに追従するか否かである。青信号でスタートする時や、コーナーからの立ち上がりでジワッとトラクションをかけたいのに、ワイヤーの動きが渋くてドンツキを起こすようでは話にならない。
ワイヤーのフリクションロス軽減にあたって、アドバンテージがこだわったのは、素材と製法という根底部分。世界トップクラスのワイヤーメーカーの技術を活用し、インナーは極細のステンレス鋼線を束ねた芯線を撚り合わせる特殊よりワイヤーを採用。
またアウターワイヤーのチューブは、一般的なテフロンではなくポリプロピレンを使用する。この組み合わせにより、ワイヤーを曲げた際にも突っ張らず、しなやかに追従しながら滑らかに作動する。ハンドルを左右に切りながら操作することも多いスロットルワイヤーにとって、切れ角によってワイヤーの抵抗感が変化しないことは重要だ。
絶版車ユーザーにとっては、純正スロットルホルダーに使えるのも見逃せない。ここで紹介しているカワサキZ系ワイヤーは、金具も純正形状に準じており、さりげなく高性能化を図ることができる。現状、ラインナップは限定的だが、手軽に装着できて効果は抜群なので、多くの機種に対応できるよう拡充を期待したい。
特殊なインナーワイヤーとポリプロピレン製チューブがカギ
細い芯線を“特殊より”することで、太い芯線を用いる“単より”に比べて柔軟性が向上し、曲げに強くなる。また製造時に芯線にグリスを圧入することで、ワイヤー自体に自己潤滑性を持たせているのも特徴。
アウターワイヤーのポリプロピレンチューブは、テフロンより硬く摩擦係数も大きいが、摩耗に強い。摩耗によりフリクションロスが増加するテフロンチューブに対して、長期間使用しても作動性が変化しない耐久性の高さも魅力。
レイアウトの良し悪しもワイヤー操作性を左右する
ワイヤー自体のクオリティもさることながら、取り回し方もフリクションを左右する重要な要素となる。スーパーローフリクションワイヤーは、小さいカーブでもスムーズに作動するが、ハンドルを左右に切った時、極端に曲がりがきつくなるような通し方は避けなくてはならない。
新車時のレイアウトに合わせるのが基本で、ハンドルやスロットルホルダーを交換したり、ワイヤー長が純正と異なる場合は、現車に合わせて検討する。ガソリンタンク下のハーネスとの干渉や、キャブレター側のワイヤーホルダーにつながる角度も、フリクションを左右する要因となるので確認が必要だ。
測定値に差はなくてもスロットル操作性の違いは歴然
ワイヤーによるフリクションの差を可視化すべく、“バネはかり”で引いてみたが、この方法で示されるのはキャブレターのリターンスプリングとの釣り合い力なので、違いを表現することはできない。
だが、スロットルグリップを回す際の手応えには明確な違いがある。また、アイドリング状態からスロットルをジワリと開けるような動作では、入力に対するキャブレターの反応の良さを実感できる。ワイヤー1本でこれほどまでに変わるのか! と驚くはず。
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