
乗り込まれたシート特有の摩擦によるツヤツヤ感やホールド性の悪さが目立つようになった、ホンダCB750のダブルシート。さまざまな車種用のラインナップがあるリペアパーツブランド・NTB(丸中洋行)の補修表皮を使って張り替えし、心機一転。新たな“乗り心地”を追求しよう。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:丸中洋行
かなり難しいシート表皮の張り込み。バイク仲間に手伝ってもらい“人海戦術”で作業
作業経験や場数を踏まないと、正直、かなり難しい作業と言えるのが、シート表皮の張り込みである。単純に表皮を引っ張って固定すれば、表皮各部がピンと張って仕上がるというものでもない。
ここでの撮影作業はあくまでも張り替えイメージであって、何度もこの記事を読み返しても、決して良い仕上がりにはならないことも知ってほしい。しっかりと読み込んだうえで、実作業経験を何度か積むことで、納得のいく張り込み作業をできるようになる。
編集部では、過去には何度かシートを張り込む職人技をリポートしたことがあるが、重要なのは、シート表皮をしっかり温めて作業進行(一気に温めるのではなく、ジワジワ温め表皮が柔らかくなってから作業開始)すること。
シワはなかなかピンと張らないものだが、我々サンデーメカニックの場合は、バイク仲間に手伝ってもらい“人海戦術”で作業進行するのが良さそうだ。
職人さんであれば、ひとりで専用の設備や機器を使って両手だけで作業するものだが、我々サンメカの場合は、仲間にシートを押さえてもらったり、ヘアードライヤーで温めてもらったり、表皮を巻き込み押し付けているときに、もうひとりにタッカーで表皮を固定してもらったりなどなど…。人海戦術で作業進行することで、初トライでもどうにかできるかもしれない。
【張り替え前のシート】マシンオーナー曰く「気持ち良く走っていても、シートが滑って乗り心地が今ひとつでしたが、新しいシート表皮は滑り止め効果が高く、ホールド性も抜群です!!」とのフィーリングに変わったそうだ。肉抜きタイプの形状は張り込みに苦労する。
RC42でも初期モデルにはシートベルトが付く。現在はグラブバーがあれば車検には抵触しないので、NTB製にはシートベルトが付かない。シート形状は同じなので、補修表皮を使うことができた。
ミシン縫製やマチ部分の仕上げは、純正シート表皮の仕上がりと変わらないクオリティ。表皮材料も耐水性に優れたバイク用表皮を使っている。縫製部分にコーキング材を擦り込むことで、防水対策をさらに高めることも可能。
シート表皮の張り替え作業
旧シート表皮はタッカーで樹脂ボトムに固定されているので、マイナスドライバーなどでタッカー中央を起こしてから、先細プライヤーですべてのタッカーを取り除く。
純正シート表皮には補修跡があったが(パッチ接着)、雨水を吸い込んで悲惨な状況のアンコには至っていなかった。水分がアンコのコンディションを著しく低下させる。
シート表皮を剥がしたら、慌てて作業進行するのではなく、まずはシート裏の汚れをしっかり除去しよう。家庭用洗剤のマイペットと小型ブラシを使って、汚れを落とした。
汚れを落とすことができて、コンディションも良くなった。さっそく、作業に取りかかりたいところだが、ここは慌てずに作業進行していこう。まずはアンコの乾燥作業から開始。
シートスポンジのアンコには、多かれ少なかれ水分というか湿気がある。そこで、日陰で風通しが良い場所を選んで、湿気飛ばしの陰干しを行う。半日は干したい。
シートスポンジ前後のセンター部分にマジックインキでマーキングを施してから作業に入ろう。まずは前後の仮固定から。NTB製表皮にはセンターマークがわずかに入る。
リヤ側面のパターン/縫製ラインに合わせて、スポンジの段差を合わせてリヤ側のセンター付近を仮止めする。リヤの縫製ラインを基準に、前側を貼り込んでいく段取り。
縫製ラインをリヤ側アンコの突起に合わせて仮固定したら、シートをグイッと引っ張って、フロント側へ寄せつつ前方も巻き込む。そしてまずは仮固定でイメージ作り。
常に前方へ引っ張りつつ張り込んでいく。一気に仕上げるのではなく、100ミリピッチぐらいにタッカーで仮固定しよう。ボトム形状合わせで左右固定箇所を判断。
上面と側面が縫製によって組み合わされるリヤまわりは容易に貼り込むことができたが、段差の大きいアンコ抜き形状のフロントまわりの張り込みは、人海戦術で作業しよう。
アンコ抜き部を全体的にヘアードライヤーで温め、手のひらで左右へ強引に引っ張り込み、ボトムのエッジに指先で巻き込むように表皮を伸ばしながら仮固定していく。
温めることで、シート表皮は想像以上に伸びる特性。この伸びている間にグイッと巻き込み固定する。表皮は冷えると縮みピンと張る。人海戦術は3名いるとベストだ。
タッカーで仮固定しながらも、正規のタッカー固定で仕上げていく。同じ箇所ばかりを固定するのではなく、左右均等に固定していくことで、バランス良く仕上げることができる。
張り替え完了。
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