
パンドラの箱であったハンターカブの心臓部・エンジン。外装/足まわり/ツーリングを快適にするパーツを装着したり交換したりしてきたが、ついにモアパワーを求め、禁断の果実を口にしてしまった。とはいえ、今回はまだまだ序章の序章。点火と燃料噴射量の調整のみのライトチューニングに挑戦!! 数回にわたり段階を踏んだエンジンチューニングについて紹介する。
●文/写真:モトメカニック編集部(ミヤシーノ宮下豊史) ●外部リンク:スペシャルパーツ武川
2022年に引き続き2023年夏も北海道に上陸!! 広大な大地でテスト走行
ホンダCT125ハンターカブのエンジンは1万回転以上回るらしい、という話を聞いた。ノーマルエンジンのレブリミットは8500回転。これが1万回転を超えたら、どんなハンターカブに豹変するのだろう?
そこでレブリミッター上限を変更可能な製品を探したところ、SP武川製「FIコン」にたどり着いた。単体だと約7万円。ハイコンプピストンとハイカムがセットだと10万円OVER。価格差が約3万円ならばと、段階的なチューニングを楽しむ前提で、お得なセット品を購入。今回はFIコンのみ装着し、ノーマルエンジンのポテンシャルを探ってみた。
リミッター解除、そして燃料噴射量の調整は、スマートフォンにインストールしたアプリのみでセッティング可能。FIコンには、いくつかのマップが保存設定されており、その中から「マフラーのみ交換」を選択。レブリミットは1万回転に設定。北海道とはいえそこまで回す機会は早々には訪れない。むしろ上を引っ張れば引っ張るほどエンジンの非力さを実感。最大出力は7000回転、最大トルクは4500回転で発揮するので、当たり前といえば当たり前だ。
しかし、そこに至るフィーリングは俄然変わった。SP忠男製マフラーに交換した時に感じた“上乗せされたトルク感”がさらに向上。スロットルを急に戻した時に発生するアフターファイヤーも軽減されたところから、理想的な空燃比に近づいているようだ。用意されたマップに変更しただけでこの成果。さらに数値をいじり、セッティングを煮詰めることで、より良くなりそうだ。
今回は左側のFIコンのみを装着。ハイカム/ハイコンプピストンも同梱されているので、ひとつひとつパーツの換装をし、チューニングを楽しみたい。
購入したのはスペシャルパーツ武川製で、ノーマルヘッドとノーマルスロットル用のハイパーチューニングセット。FIコン TYPE-e(インジェクションコントローラー)/点火プラグ/ハイコンプピストンキット/スポーツカムシャフト(N-15)がセットされている。価格は10万1640円。
購入したのはスペシャルパーツ武川製で、ノーマルヘッドとノーマルスロットル用のハイパーチューニングセット。FIコン TYPE-e(インジェクションコントローラー)/点火プラグ/ハイコンプピストンキット/スポーツカムシャフト(N-15)がセットされている。価格は10万1640円。
北海道は7月上旬にもかかわらず暑い。バイクを停めるたびに強力な羽音をたてアブが襲来。奴らを払い除けつつ、スマホでセッティングを繰り返した。ダートでの走行距離は100km。総走行距離は1000km!!
釧路湿原で4泊し、周辺のダートでセッティング。低めのギアで高回転を多用するので、テストにはもってこいのシチュエーションでした。林道走行気持ちイー!!
釧路湿原で4泊し、周辺のダートでセッティング。低めのギアで高回転を多用するので、テストにはもってこいのシチュエーションでした。林道走行気持ちイー!!
SP武川製「FIコン」の取り付け
パーツ装着前に診断トラブルコードを消去する必要がある。説明書を読むと、サービスチェックカプラの配線を短絡させることでリセットできるとのこと。
パーツ装着前に診断トラブルコードを消去する必要がある。説明書を読むと、サービスチェックカプラの配線を短絡させることでリセットできるとのこと。
その後、説明書通りにセットアップ作業を進めていくと、診断トラブルコードが消去できる。スピードメーターパネルのPGM-FI警告灯の点滅で、リセットを判断できる。
その後、説明書通りにセットアップ作業を進めていくと、診断トラブルコードが消去できる。スピードメーターパネルのPGM-FI警告灯の点滅で、リセットを判断できる。
ホンダ純正ECUはガソリンタンクの下にある。FIコンはリアフェンダーの中に隠すので、外装はほぼ取り外し、段取りする。カプラーオンとはいえ、手間暇かかる作業。撮影しながらの作業だったが、取り外し/装着/外装の復元で4時間かかった。
ホンダ純正ECUはガソリンタンクの下にある。FIコンはリアフェンダーの中に隠すので、外装はほぼ取り外し、段取りする。カプラーオンとはいえ、手間暇かかる作業。撮影しながらの作業だったが、取り外し/装着/外装の復元で4時間かかった。
タンクとフレームの隙間から、ホンダ純正ECUを引っ張り出す。こんな奥まった部分にまで泥が入り込んでいて驚いた。定期的な分解と清掃、そしてドロ対策をするように心がけよう。
タンクとフレームの隙間から、ホンダ純正ECUを引っ張り出す。こんな奥まった部分にまで泥が入り込んでいて驚いた。定期的な分解と清掃、そしてドロ対策をするように心がけよう。
右手で持つファミコンのカセットのように見えるのがホンダ純正ECU。ストッパーを外して抜く前に、装着されていた裏表の向きを覚えておこう。復元時に迷わないためにも。
右手で持つファミコンのカセットのように見えるのがホンダ純正ECU。ストッパーを外して抜く前に、装着されていた裏表の向きを覚えておこう。復元時に迷わないためにも。
メインハーネスとホンダ純正ECUの間にFIコンを割り込ませる。メインハーネスから伸びる黒い配線束がFIコンに繋がる感じ。文字通り“割り込ませる”イメージだ。
メインハーネスとホンダ純正ECUの間にFIコンを割り込ませる。メインハーネスから伸びる黒い配線束がFIコンに繋がる感じ。文字通り“割り込ませる”イメージだ。
FIコンのメス側スロットに、ホンダ純正ECUを差し込む。挿入する向きを間違えて無理やり押し込むと、壊してしまう恐れがあるので要注意!! 作業は慎重に行おう。
FIコンのメス側スロットに、ホンダ純正ECUを差し込む。挿入する向きを間違えて無理やり押し込むと、壊してしまう恐れがあるので要注意!! 作業は慎重に行おう。
黒色のリア用インナーフェンダー上にFIコンと純正ECUを設置して、結束バンドで固定した。外装部品を復元する前に、エンジン始動テストを必ず実施しよう。
黒色のリア用インナーフェンダー上にFIコンと純正ECUを設置して、結束バンドで固定した。外装部品を復元する前に、エンジン始動テストを必ず実施しよう。
ノーマルマップも含め、19種ものマップが入っている。燃料噴射量は500回転ごと、スロットル開度5%ごとに微調整が可能。レブリミットは1万1000回転まで変更可能だ。今回はレブリミットを1万回転に設定。
キットパーツに同梱されていたハイカムとハイコンプピストンは、今後装着予定だ。圧縮比は12.5:1(ノーマルピストン9.8:1)となるらしい。デコンプ機能がなくなるので、始動性に不安を感じてしまうが、どんなエンジン特性に変わるのか?楽しみだ。
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