
サビ取り実践において大切なこと、それは“処理中のタンク内部に空気室を作らない”ことである。空気室があると、その部分にサビが寄って集中し、再びサビを繁殖させてしまうことになるからだ。そこで、タンクをグルグル回せるように、いっそのことタンクをサビ取り液にまるごと沈めてみた。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:榮技研
タンク内部のサビとりは、空気室を作らないことがキモ
ガソリンタンクのサビ取りには様々なやり方があるが、いずれの方法においても、作業中に処理液が漏れてしまうのを気にするあまり、口切り満タンまで処理液を注入しないで作業進行する例があるが、それは大間違い。
処理液をしっかり注入したつもりでも、タンク内部に空気室があると、そこに化学反応後のサビが寄ってしまい、空気室周辺のサビが酷くなってしまうこともある。タンクキャップ/燃料コックを閉じる栓をしっかり準備し施工したら、口切りいっぱいまで温めた処理液を注ぎ入れ、時間の経過待ち中も可能なかぎり定期的にタンクを揺することで、サビ取り作業を実践しよう。
目に見える“タンクの底”エリアばかり気にする作業者がいるが、実は、よく見えない天井裏のサビが落ちにくくしぶといことが多い。作業途中に、タンクキャップの穴から柄が長いフレキシブルブラシを突っ込み、天井裏のエリアやタンクの奥底をなりふり構わずブラッシングすることでも、タンクのサビ落とし効果は高まるものだ。
思いついたアイデアは、可能な限り試してみることをお勧めしたい。それがより良い仕上がり結果につながるのは明らかだ。
間違いなく数十年間はこの状態で放置されてきた、ドクロタンクことホンダCB92[1960後期型]の鉄製ガソリンタンク。この時代のガソリンタンクは鉄板が厚く、同じCB92でも後期の通常キャップ型ガソリンタンクと比べて重い。左右のニーグリップラバー下部に、サビ穴修正痕があった。
内部に腐ったガソリンの臭いはなく、深いサビが侵食中。
元祖ガソリンタンク用サビ取りケミカルとして登場した、榮技研の「花咲かG タンククリーナー」を利用した。中性で何度か再利用可能なのが嬉しい。ラベルには詳しい利用方法が記述されているので、作業前に熟読しよう。
効率的なタンク内部のサビとり方法=沈め式サビ取りの手順
ガソリンタンクのサビ取りには様々なやり方があるが、今回は既存のペイントを気にする必要がなかったので、編集部の経験の中では、もっとも効率が良く、タンク内部のサビ取りを進行できる“沈め式サビとり方法”で作業することにした。
タンク内に処理液を流し込む方法ではなく、大きな容器に処理液を作りタングを沈める方法で、効率良くサビ取り作業を行うことにした。タンク外部のサビにも効果的なはず!? ただし、容器が大きすぎるのも問題だ。写真左は容器デカ過ぎ!! 写真右が最適な容器サイズだ。
およそ60Lの水道水にタンククリーナー3本を入れ、希釈率としては約20倍で利用してみた。ひどいサビなら10倍程度が良い。さらに処理液を温めると活性が上がる。
バイク仲間から借用した投げ込み型ヒーターを利用した。家庭用のAC100V電源で様々な温度帯で利用できる。五右衛門風呂用の投げ込みヒーターも使える。
今回借用した高機能ヒーターは高温設定もできるので、まずは100℃に設定して、処理液が温まり始めたら設定温度を50℃弱にしてみた。温度上昇を待とう。
温め始めて1 時間程度。45℃前後まで処理液温度が高まった。フレッシュな処理液は活性が良いので、高温過ぎると想像以上のサビとり効果を発揮する!!
間接温度計で測定すると44℃に達したので、手を突っ込んでみると、確かに熱い風呂と同じような感覚だった。ここでタンクをゆっくり沈めて、内部に処理液を流し込む。
燃料コックの取り付け穴から処理液が流れ込んで、タンクが沈んだので、醤油ちゅるちゅるポンプでタンク内部のエアーを押し出すように処理液を循環させてみた。
タンク内部のエアー室が処理液で満たされたようなら、いよいよ処理液温度を保ちながらの連続処理を開始。この段階で良い仕事をしてくれるのが投げ込みヒーターだ。
投げ込みヒーターの温度設定は50℃弱。その状態で約2時間経過したのがこの写真だ。タンク内部のサビが反応して溶け始めている様子は、処理液の色から理解できる。
50℃設定で連続処理後、夜中は電源を切って、折りたたんだ段ボール箱を被せ、その上から毛布を載せて保温状況を保った。翌朝、タンクを取り出して逆さまに沈めた。
さらに数時間経過待ちした後に、タンクを取り出して水道水ホースを突っ込んで水洗しつつ、ロングノズルのエアーガンでタンク内部を強制的に“うがい”させつつ洗浄。
鉄板地肌がツルツルになるまでサビを除去できた。あえて長めに連続処理を続け、表面が薄黒く酸化被膜(いわゆる黒皮仕上げ)で覆われるまで作業進行してみた。
作業前はサフェーサー仕上げのタンクスキンで、部分的にサビが発生していたが、作業後はエアーブローでサフェーサーが簡単に剥がれた。次の工程は“圧力検査”をし、穴が空いていないかをチェック。
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