’80年代~’00年代絶版車の楽しみを提供するモトジョイ【TOTレーサー製作&コンストラクター活動にも注力】

車両販売や“とことん整備”、オリジナルパーツ開発から独自ブランドのエンジンオイル販売まで、絶版車に関するあらゆるジャンルで積極的に活動を続けている絶版車専門店・モトジョイ(三重県鈴鹿市)。1970年代絶版車の価格高騰と台数不足に対応する1980年代以降の絶版車販売が若いライダーに好評であるとともに、海外でのレース活動を見据えてテイストオブツクバ参戦中のOV-41 のフレーム補強も順調。まさに勢いが止まらない。


●文/写真:モトメカニック編集部(栗田晃) ●外部リンク:モトジョイ

“とことん整備”が魅力の絶版車販売

「“Z1の代わり”というより、これが欲しいという方が多いです」と米倉マネージャーが語るように、20代のライダーにも人気が高いゼファー750。販売前にエンジン本体/サスペンション/ブレーキまわりの整備を行うのは当然だが、好調に仕上がった車両は驚くほど素直で、米倉マネージャーも「これほど乗りやすいバイクだったのか」と改めて気づかされたそうだ。

※このページに登場する車両は、取材当時(2022年夏)の価格/在庫車情報。最新の在庫状況/価格は直接ショップにお問い合わせを。

【カワサキ ゼファー750】写真のブラウンメタリック車は1994年モデルで、車両価格は155万円。

【スズキGSX-R750】「OV-41の開発を通じて油冷エンジンに触れる機会が増えている今だからこそ、GSX-Rを扱っておきたい」(佐藤会長)という理由から、乾式クラッチの限定750と後期モデルの1100を販売中。トルネードカラーの750はフルオリジナルで走行5000kmという激レア車で、車両価格260万円。倒立フォークの1990年式1100は車両価格98万円。どちらもとことん整備付きの納車となる。

【カワサキZRX1200ダエグ】モトジョイが扱う絶版車としては最新といっても過言でない2015年式カワサキZRX1200ダエグ。カワサキらしいスタイリングとキャブ時代のZRX1200から熟成されたインジェクション仕様のエンジン、6速ミッションなど人気の要素が詰まっている。すぐ乗り出せて壊れる心配がないのも魅力。2016年にファイナルエディションが登場する前年の最後期モデルで、車両価格は148万円。

「Z1シリーズの人気が高いのは相変わらずですが、台数の少なさと価格の上昇はどうしようもありませんね」と語る、モトジョイの佐藤健正会長。カワサキ車に限らず、ホンダCBXのオーソリティとしても知られる同店でも、販売車両の調達は容易ではないようだ。

これまでにもGPZ750/1100FやGPZ900Rニンジャなど、1980年代以降の絶版車の販売も手がけてきたモトジョイでは、昨今の事情を反映して80年代半ばから90年代車の販売にもトライしていおり、中でも好調なのがゼファー750だという。「初期モデルは発売から30年前後を経過しているので整備は不可欠ですが、70年代のバイクより設計が新しいため耐久性があり、価格もZ1より手が届きやすいのが魅力です」(佐藤会長)。

OV-41レーサーはテイストオブツクバの特性に合わせて進化中

一方で、オリジナルフレームを製作できるモトジョイならではのレーサー開発も順調に進行している。2021年秋のテイストオブツクバ(TOT)でデビューした油冷エンジン搭載のOV-41は、ラップタイムアップの決め手となるコーナリング性能向上のためフレームを加工。2022年秋のTOT、さらに翌年以降の海外でのクラシックフォーミュラレースエントリーの可能性など、絶版車をキーワードに楽しさとカッコ良さを提供し続けてくれる。

「エンジン出力やタイヤの性能、なにより筑波サーキットという特殊性が大きな関門です」(佐藤会長)というOV-41レーサー製作。2021年秋のTOT参戦の結果を受けて、フレームメインパイプ左右をつなぐ補強追加、シリンダーヘッドとメインパイプをつなぐプレート追加を行い、エンジンも仕様を変更。ライダーの豊田浩史選手の負傷により5月のレースは参戦を見送ったが、2022年11月のTOTに向けてさらに熟成を重ねている。

2021年秋、クランクケース前部マウントのリジッド化に効果があったため、シリンダーヘッドとメインパイプをつなぐプレートを追加。「最近のスーパースポーツモデルのやり方を参考にしました」(佐藤会長)

メインパイプ2カ所に左右をつなぐ補強を追加。「コーナリング時、リアに対してフロントが残るというインプレがあったので対策しました。ハードブレーキとコーナリングが続く筑波ならではです」

TOTウィナーに装着されたオリジナルスイングアーム

2021年秋のTOT・ハーキュリーズクラスで優勝した加賀山就臣選手と最終ラップまで熱戦を繰り広げた光元康治郎選手(Garage414&WoodStock)。300馬力を超えるH2Rのコーナリングの不安定さに気づいた佐藤会長がレース後に声をかけ、5月のレースで実現したのが両持ちスイングアーム。佐藤会長の経験では、片持ちタイプはスイングアーム自体の剛性が高すぎる傾向にあるとのことで、剛性が高くなりすぎないよう留意した。

決勝中のベストタイムこそ’21年秋にわずかに及ばなかったものの、片持ちのクセの強さがなくなったことで、ライバルの加賀山選手を押さえて見事に優勝。光元選手は優勝コメントでも剛性を見直した両持ちスイングアームの効果を絶賛していた。

ニンジャZX-10Rのエンジンを搭載したOV-43も好感触

ノーマルで200馬力以上を発揮するカワサキZX-10RR用エンジンを、佐藤会長製作のスチールフレームに搭載したOV-43。フレームを除くパーツは、オーヴァーレーシング製マフラーとアラゴスタ製リアショック以外はほぼZX-10RRから転用し、レース直前のスポーツ走行がシェイクダウンとなった。このためライダーの江口謙選手もマシンの特性を探りながらのセッティングとなり、予選11位/決勝10位というリザルトとなった。

エンジンは油冷より数十馬力パワーのあるZX-10RR用で、形状がダブルクレードルからトレリスへ大きく変わっても、初戦からレースで通用するフレームを製作できるのが、経験と実績のある佐藤会長ならでは。


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