
「鉄馬フェスティバルwithベータチタニウム(以下、鉄馬)」は、他のイベントレースと違って、とても穏やかな空間が広がり、人々が温かい。主催者とエントラント、エントラント同士、さらにエントラントと観客の距離が近く、それが心地よさを生む。5月5日、HSR九州で開催された「鉄馬」に、今年も「ロイヤルエンフィールド コンチネンタルGT650」で参戦。多くの方の協力のもと、楽しくて悔しいレースを走ることができた。
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:ロイヤルエンフィールド ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド
スポーツバイクとしての魅力に溢れるコンチネンタルGT650
ロイヤルエンフィールドとサーキットは、イメージとして決して近くはない。しかし、ロイヤルエンフィールドが描くバイクライフには「ピュアライド」「ピュアモーターサイクリング」「ピュアスポーツ」といったスローガンがあり、インドやアメリカでは積極的にワンメイクレースを展開。日本でもこうしたイメージを少しずつ普及させるべく、昨年からコンチネンタルGT650での鉄馬のACT18(エアクールドツイン=空冷ツインの18インチ)クラスに参戦を開始した。
さらに今年はハンター350でも女子大生ライダーである中山恵莉菜さんが鉄馬のネオクラシック350クラスへ参戦(詳細はこちら)。もちろん昨年からスタートしたロイヤルエンフィールドミートin HSR九州(詳細はこちら)も2年連続で決勝日に併催し、ロイヤルエンフィールドファンにはたまらない1日となったのである。
わかりやすい英国クラシック・カフェスタイルが魅力のコンチネンタルGT650は、とにかく空冷並列2気筒エンジンとそれを搭載するハリスパフォーマンス製フレームとの相性が抜群。良いエンジンとシャシーの組み合わせが、ライダーに操る醍醐味をもたらす。コンチネンタルGT650は、一見ファッションバイクに見えるかもしれない。しかし、コーナリングがとても楽しい、スポーツバイクとしての魅力に溢れているのだ。
ノーマルも楽しいがカスタムの効能をわかりやすく感じられるのも魅力。しかし、正直なところ最初はこれほどコーナリングが楽しいマシンに仕上がるとは思っておらず、それは嬉しい驚きや発見として僕はもちろんマシンを仕上げてくれた単車工房モトジャンキーの面々を驚かせてくれた。
また、今年はモーターサイクルショーの大阪、東京、名古屋の会場にもコンチネンタルGT650レーサーを展示。多くの方と話をすることができた。「スマホの壁紙をこのレーサーにしてるんです」なんて声を聞くと、レースに出て本当に良かったなぁと思う。
トリプルツリーはアエラ製。アルミ削り出しで2.5kgの軽量化を実現。オフセットを可変させることでトレール量を稼ぐことができる。もちろん市販を見据えて開発中。ハンドルやレバーガードもアエラ製だ。
ステップもアエラ製。良好な作動性を約束し、クオリティの高い作りも魅力。現在、ストリート用の製品を開発中。タンクエンドもアエラ製。3Dプリンターで僕の体格や乗り方に合わせて制作してもらった。
ノーマルのコンチネンタルGT650と並べて写真を撮りたいなぁと思っていたので、1枚。モデルはモトジャンキー中尾さんの娘さん。ロイヤルエンフィールドブースでは物販を手伝っていただき、感謝。
カスタムの効果がわかりやすく、セッティングを進めやすい!
ハリスパフォーマンス製のフレームは縦剛性が高く、横方向はしなやかな特性。その現代的な特性はピレリ製スポーツコンプGPのグリップの引き出しやすさに貢献。だからセットアップも進めやすい。今年はハンドリングをさらに追求することにした。
鉄馬のアドバイザーである青木宣篤さんに色々とコースのことを聞いてみる。「筑波で8秒出るの?意外と速いね」と宣篤さん。
練習で久しぶりに乗るコンチネンタルGT650レーサーは、やはり感動的なほど気持ちよく、スッと僕の身体に溶け込んでいく。スロットルを開けながらその鼓動感に酔い、タイヤが温まっていくに連れ、操作をどんどん大胆にしていく。その時の応答性の良さを知ると心が高まっていく。コンチネンタルGT650と一体となり悦に入る瞬間は格別だ。
途中で、昨年のMAX10から使用していたアエラ製のアルミ削り出しステムのオフセットを変更し、トレールを増やすセットをテスト。走り出すと前輪の接地感が増し良い方向に。これに合わせてリヤサスの車高を上げると、昨年のベストタイムを少しだけ更新。車体のセットアップを進めることができた。
鉄馬は土曜日が予選、日曜日が決勝というスケジュール。予選では1分14秒807を記録し、昨年の決勝ベストを更新。ポールポジションを獲得することができた。
ただし、今年は昨年0.2秒差で負けたリトモアルベーロの土屋さんが諸事情により欠場。僕としては昨年のリベンジに燃えていただけに、意気消沈。そこで、ターゲットをWCTクラス(水冷ツインのMT-07、SV650、TRX850がエントリー)も含めた混走する全てのマシンにシフト。なかなか面白い戦いになりそうだ。
それにしても鉄馬は雰囲気が良い。来る度に友達が増える。インスタグラムやフェイスブックで知り合い、現場で初めましての方(正確に言うと昨年ニアミスしていたりする)も多数だが、話をする方がどんどん増えていく。予選後に話しかけてくれる方も多数。とてもありがたいし、嬉しい。
バックストレート後のS字が苦手。スロットル全開でいくとどうしてもキレイなラインに乗れない。写真で見ても向きが変わってない…。
鉄馬の仕掛け人である、ロイヤルエンフィールドの輸入元であるPCIの高永さん(左)。いつも僕のレースをサポートしてくれるピレリジャパンの調さん(右)。タイヤの使い方など様々なことをアドバイスしてくれる。
色々な方から「カッコイイね」と言ってもらえるコンチネンタルGT650レーサー。どのアングルから見ても佇まいとても良い。前後スタンドはJトリップ製。日本製ならではの質実剛健さを持ち、とても使いやすい。
ディスクはサンスター製のφ320mm。ブレンボレーシングキャリパーをモトジャンキーワンオフのキャリパーサポートで装着。ちなみにキャスティングのキャリパーだとスポークに干渉してしまう。スプロケットはベース部分もモトジャンキーがワンオフ制作。筑波とHSRでファイナルを変更している。
アルミ製インナータンクは中尾さんの手作り。コンチネンタルGT650レーサーには様々な中尾さんの手作りパーツが導入されている。バッテリーはSHORAI製のリチウムイオン。最もコストパフォーマンスの高い軽量化パーツで約4kgの軽量化を実現。搭載場所を選ばないのも魅力。
温度を設定できる機能がとても秀逸。コンチネンタルGT650が履くピレリ製スポーツコンプRSは、最初に温めすぎるとタレる症状が出てしまうため50度に設定。ハンター350のスーパーコルサSC1は80度に設定。季節や気候でタイヤの性能をきちんと発揮させることが可能なタイヤウォーマーである。
決勝は20ps差の水冷ツインを追いかけるものの……
決勝はポールポジションからスタートするものの、MT-07とSV650に先行され、1コーナーは3番手で進入。このライバル2台は、17インチタイヤでエンジンは水冷ツイン、パワーは20ps以上多い。数周は喰らいつくが、ストレートはもちろん高速S字でもすぐに抜かれてしまう……。ただ面白いのは、コンチネンタルGT650はコーナリングのポテンシャルでは決して負けていないことだ。
しかし、ライバルが異なるとリズムがまったく合わなくなってしまう。なんとかリズムを掴もうとするものの、ミスをしてしまい万事休す。ACT18クラスで優勝することができたが、総合では3位という結果だった。ただ、今回もタイムを少しだけ更新、1分14秒654を記録することができた。
そして2年連続でトラブルは何もなし。趣味でレースを楽しむにおいて、これはとても大切なことだ。
レースを終え、さまざまな反響がある。「楽しんでるね」「よく走るね〜」「ステップやステムはいつ発売するの?」などなど、それがとても嬉しい。
走るほどにコンチネンタルGT650がどんどん好きになっていく。仕上げていく楽しみも格別で、それは秘められた実力をどんどん解明していくようなとても有意義な時間だった。コンチネンタルGT650より速いバイクは、星の数ほどある。しかし、英国カフェスタイルの佇まいと、そのスタイルからは想像できないポテンシャルを発揮するギャップのある存在としては唯一無二。どのバイクにも似ていない、この圧倒的なバランス感は良いバイクの証だとも思う。
今回のレース参戦のきっかけをくれたロイヤルエンフィールドの輸入元であるPCI、そしてマシンを完璧に整備&セットアップしてくれる単車工房モトジャンキーの皆さんに感謝を述べたい。また、他にも多くの方の協力があり、レースに参戦することができた。レースは1人ではできないし、気心知れた仲間がいてこそ楽しいエンターテイメント。皆さん、本当にありがとうございました。
昨年も一緒に走った山下さんと楽しいバトル。しかし、シフトミスをしたりして離されてしまう展開に……。ただ、クラシカルなカフェレサーが現代のバイクに挑む姿はインパクトもあったみたいで、決勝後、多くの方が話しかけたくれたり、バイクを見に来てくれた。
水冷ツインの2台には敵わなかったけれど、ACT18クラスでは優勝! 2位はモト・グッツィのル・マン3を駆る_moto_good_さん。自身のチャレンジをまとめた動画、『2024鉄馬 アイアンACT18クラス決勝! :Moto Guzzi LeMans3 Racing “Fire Steps”カフェレーサ』もぜひ。素敵です!
多くの方の協力により、楽しいレースを走ることができた。そして、今年も鉄馬やロイヤルエンフィールドを通じて多くのバイク仲間に出会うことができた。皆さん、本当にありがとうございました。
モトジャンキー代表の中尾さん。整備やチューニングはもちろん、長い間HSR九州でのレースを見てきているため、車体のセットアップも安心して任せることができる。
モトジャンキーの松見さん(左)と藤本さん(右)。レース前後の整備はもちろん、レースウィーク中も様々な作業をしていただいた。コンチネンタルGT650をとても楽しいバイクに仕立ててくれてありがとうございます。
2024年の「鉄馬フェスティバルwithベータチタニウム」参戦の模様を動画でも公開!
コンチネンタルGT650レース参戦記のバックナンバーはこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第1回の記事・決意表明編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第2回の記事・マシン軽量化編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第3回の記事・鉄馬決勝編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第4回の記事・マシン紹介編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第5回の記事・MAX10練習編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第6回の記事・MAX10決勝編はこちら
コンチネンタルGT650レース参戦記 連載第7回の記事・2023年まとめ編はこちら
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
ミリオーレの最新記事
孤高のパニガーレV4Sと友好的なパニガーレV2S パニガーレV4Sでサーキットを3本ほど走ると、強烈な疲労感が僕の身体を襲う。汗は止まらず、足腰に力が入らなくなる。試乗直後は格闘技を終えたような感じだ[…]
ファッションからスポーツまで。現代のバイクライフにフィット このバイクは只者じゃない−−。僕はマヨルカ島のリゾートホテルのエントランスに鎮座するトライアンフの「スピードツイン1200RS」に初対面した[…]
ライダーを様々な驚きで包み込む、パニガーレV4S 5速、270km/hからフルブレーキングしながら2速までシフトダウン。驚くほどの減速率でNEWパニガーレV4Sは、クリッピングポイントへと向かっていく[…]
駒井俊之(こまい・としゆき)/1963年生まれ。バイクレース専門サイト「Racing Heroes」の運営者。撮影から原稿製作まで1人で行う。“バイクレースはヒューマンスポーツ”を信条に、レースの人間[…]
駒井俊之(こまい・としゆき)/1963年生まれ。バイクレース専門サイト「Racing Heroes」の運営者。撮影から原稿製作まで1人で行う。“バイクレースはヒューマンスポーツ”を信条に、レースの人間[…]
最新の関連記事(ロイヤルエンフィールド)
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc 400ccクラスは、普通二輪免許を取ってから間もないビギナーも選ぶことができる排気量帯で、16歳から乗ることができる。 そんな400cc[…]
重厚感とユーザー寄りのデザインと扱いやすさが魅力本物のクラシックテイストがロイヤルエンフィールドの特長 1901年にイギリスで創業したロイヤルエンフィールドは、世界最古のバイクブランドとして長い歴史の[…]
16歳から取得可能な普通二輪免許で乗れる最大排気量が400cc! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外[…]
ニューモデル攻勢は一段落。これからは収穫の時期 REを追うライバルも続々登場しているなか、商品展開も次のステージに移行すると考えていいのだろうか。 「たしかにそうですが、REは他社の競合機種をあまり意[…]
クラシックなボバースタイルをもつ”個性爆発”のゴアン クラシック350 名は体を表すというが、ロイヤルエンフィールドのニューモデル「ゴアン クラシック350」が表現するものは何か? 英国発祥のロイヤル[…]
人気記事ランキング(全体)
カワサキの新世代モビリティが大阪万博で公開 2025年日本国際博覧会、通称「大阪万博」のカワサキブースで、未来のオフロードビークル「CORLEO(コルレオ)」が注目を集めている。バイクのように乗車する[…]
「その時、スペンサーになれた気がした」 MVX250Fの上位モデルとして400版の発売が検討されていたが、250の販売不振を受け計画はストップ。この心臓部を受け継ぎ、NS250Rの技術を融合したモデル[…]
日本でもっとも人気の高いジャンル=ネオクラシック プロポーションの枷を覆す【カワサキ Z900RS】 まず、現代のバイクと昔のバイクではプロポーションがまったく違うんです。昔のバイクはフロントタイヤが[…]
バイクキャビン:小型エアコンを装備すれば抜群の環境に! 難しく考えることなく、手っ取り早く購入できるガレージとして高い人気を得ているのが、デイトナが取り扱う各種シリーズ製品だ。 全モデルに共通している[…]
〈WEBIKE FESTIVAL〉2024.10.19 SAT. ロングウッドステーション(千葉県長柄町) 【X500 ヒデヨリさん】「見た目など、あえてハーレーらしさを捨てたチャレンジ精神の塊のよう[…]
最新の投稿記事(全体)
他の積載方法とは異なる、シートバッグの利便性 2輪でツーリングをする際の荷物の積載方法は、①ストレッチコード/ネット、②タンデムシート上部に装着するシートバッグ、③後輪左右に設置するサイドバッグ、④車[…]
昨年の最終戦から連勝を続けた水野涼 2025年の全日本ロードレース選手権がようやく4月19日・20日に栃木県・モビリティリゾートもてぎで開幕しました。4月9日・10日には、PRE-TEST “Roun[…]
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
トレッドのグルーブ(溝)は、ウエットでタイヤと接地面の間の水幕を防ぐだけでなく、ドライでも路面追従性で柔軟性を高める大きな役割が! タイヤのトレッドにあるグルーブと呼ばれる溝は、雨が降ったウエット路面[…]
キーロック付きタンクキャップ:スズキGT380(1972) バイクの燃料キャップは、そもそもは転倒時の漏れ防止の安全対策からキーロック式が採用されるようになったが、その最初は1972年のスズキGT38[…]
- 1
- 2