
ロイヤルエンフィールドを語る上で、少なくとも2023年までは“現行ラインナップとして空冷エンジンのみを取り扱う稀有なバイクブランド”というのがひとつの特徴だった。しかし、さらなる排ガス規制の強化を見越すと、水冷エンジンの開発は重要で、ロイヤルエンフィールドにおいてもひとつの転機になることは誰しもが感じていたことだろう。と同時に、多くの人の興味は、その水冷エンジンをどんなバイクで開発するのか? にあったかと思う。その答えとして、2023年11月に開催されたミラノショーで水冷ヒマラヤが発表されたのだが、その隣りにはもう1台新しいヒマラヤが鎮座していた。それがこの「Electric Himalayan(エレクトリックヒマラヤ)」だ。
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
インドで復興したブランドが生み出したデュアルパーパスモデル
ロイヤルエンフィールドの歴史は長い。メーカーとしてはイギリスで1891年に創業し、バイクの製造は1901年からスタート。その後激動の時を経て、現在はインドメーカーとして世界各国で知られる存在だ。現行ラインナップはこれまであったバイクがデザインソースとなっているものが多いが、インドメーカーになったからこそ誕生したバイクがある。それがヒマラヤだ。
インドメーカーとなったロイヤルエンフィールドからこのバイクが生み出された背景には、明確な目的とストーリーがあった。それは、“天空の秘境とも呼ばれるヒマラヤ山脈を旅するにあたって、必要最低限のスペックを兼ね備えながら、どんなライダーも乗ることができるバイクをつくること”。
どんなライダーも乗ることができるバイクというのは、ロイヤルエンフィールドが他のモデルを開発するにあたっても重要視していることだ。それは、彼らが他のモデルを語る際にも必ず使う「アクセシビリティ(利用しやすい/便利である)」という表現に表れている。価格だけでなく、バイク歴を問わず気軽に誰でも乗りたくなるような敷居の低さを常に意識しているのだ。
このブランドの核からブレることなく、海抜3000〜5000m以上という平地よりも酸素の少ない高地を走り切ること。そして、舗装路だけでなくガレ場や大量の砂が浮くような不安定な道も走破できるバイクを目指して生まれたのがヒマラヤなのだ。こうして2016年、ロイヤルエンフィールド初となるデュアルパーパスモデルが誕生した。
ヒマラヤを旅することは、インドだけでなく世界各国から集まる旅人にとって憧れのひとつ。そのためヒマラヤ旅の拠点に行くと、驚くほど多くのレンタルバイクショップが立ち並ぶ。さらに街を縦横無尽に走る多くのバイクを見れば、旅人だけでなくこの地で生活を営む人たちの交通手段としても、欠かせない存在ということがよく分かる。これらに応えるためにヒマラヤは誕生した。
2016年インドで誕生し、多様化が進むヒマラヤ
彼らが生み出したのは、大自然に抱かれつつ、多くのライダーが親しみを持ってヒマラヤの旅を楽しむことができるバイク。空冷ヒマラヤに関しては、その必要最低限を探ってたどり着いたのが、411ccという排気量だったという。この排気量は、日本の免許区分においてはやや賛同を得にくいことも事実。しかしヒマラヤでヒマラヤ山脈を走ってみると、高地という環境のためエンジンをぶん回すことにはなるが、このバイクはライダーの操作にしっかりと応え、さらなる自然の深淵にいざなうように力強く前に進む。
僕は2022年に開催されたモトヒマラヤに参加し、実際にヒマラヤでヒマラヤ山脈ツーリングを経験。その上で開発の背景にある思いも知り、このバイク、そしてロイヤルエンフィールドに一気に惹きつけられたのだった。バイクの魅力は決してスペックだけではなく、ストーリーにもあるのだということを改めて感じた経験だった。
そして、エンジンを空冷から水冷化したヒマラヤが、2023年11月のミラノショーで発表された。ブランド初となる水冷エンジンをヒマラヤで開発したということだけでなく、その隣りには電動モデルの「エレクトリックヒマラヤ」も鎮座。それまでは空冷エンジンのバイクのみだったロイヤルエンフィールドが、エンジンの水冷化だけでなく電動化したヒマラヤまでを一挙にお披露目したのだ。
2023年ミラノショーで、水冷モデルと合わせてエレクトリック ヒマラヤも紹介。テスト走行を終え、泥汚れなどがついた状態のテスト車両をそのまま展示。現地に赴いた人に話を聞くと「バイクメーカーとしてコンセプトが明確で、開発に実直に突き進んでいるような勢いも含めて、ロイヤルエンフィールドの電動ヒマラヤは印象的だった」と言う業界関係者もいたほどだ。
ロイヤルエンフィールドの新しいチャレンジは、ヒマラヤからスタートすることが多い。メーカーがいかにヒマラヤを大切にしているかが伝わってくる。
今回、EICMAに展示されたエレクトリック ヒマラヤは、あくまでコンセプトモデルとのことだが、すでに現地でのテスト走行も実施済み。
電動モビリティ事業への戦略投資もすでに実施
彼らが語るアクセシビリティな電動バイクの実売までには、技術やクオリティもさることながら、製造など大きなハードルがある。しかし、すでに2022年末にはロイヤルエンフィールドを傘下に治めるインドの大手自動車メーカー・アイシャーモーターサイクルズリミテッドが、スペインの電動バイクメーカーのスタルクフューチャーに出資すると発表。株式の10.35%にあたる5000万ユーロ(当時の為替だと約69億円)の出資は大きな話題となった。
この戦略投資によって、ロイヤルエンフィールドとスタルクフューチャーの2社が、電動モビリティの分野で協働の機会と関係の構築を着々と進めていることをふまえても、エレクトリックヒマラヤの実現がそう遠くない未来であることがうかがえる。
今回のエレクトリックヒマラヤのデザインコンセプト発表にあたって、本国からリリースされた資料を読むと、「ヒマラヤ山脈はロイヤルエンフィールドの心の故郷であり、数十年にわたりモーターサイクルのインスピレーションとなってきた」とあった。
冒険とバイクへの愛、挑戦。そして環境にも配慮したサステナブルな取り組みとしても、エレクトリック ヒマラヤのプロジェクトは大きな意味をもつ。まさにロイヤルエンフィールドの矜持は、ヒマラヤにあるのだ。
写真奥から順に、空冷/水冷/エレクトリックヒマラヤが並んだ様子。環境性能や静音性に優れる電動モビリティでヒマラヤ旅が実現すると、繊細な風の音までも感じ取りながら、この大自然をよりダイレクトに享受できる体験が実現するだろう。
水冷エンジンになったNEWヒマラヤのカラバリを見てみよう!
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