
2022年のEICMA(ミラノショー)で発表されたロイヤルエンフィールドの新モデル「スーパーメテオ650」。『流星(METEOR)』の名を持つエレガントなデザインが気になっていたが、クルーザーの重厚感にやや苦手意識をもつ私(バイク歴1年7ヶ月)は走りを楽しめるのか?
●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
村田奈緒子(むらた・なおこ)/一目惚れしたロイヤルエンフィールドのヒマラヤ(空冷411cc)に乗るために普通自動二輪&大型二輪免許を取得。2022年2月のバイク納車から本格的なバイクライフがスタート。身長が173cmあるので足着き性はそこまで心配ないが、まだまだ取り回しが苦手。
人生3回目のクルーザー試乗は重厚感のあるスーパーメテオ650
至極個人的な話だが、私は身長173cmあり、足着きはあまり問題視していないのだが、やはりバイク全般において取り回しは大の苦手。そして大型二輪免許を持っているとはいえ、ロー&ロングなクルーザーとは重いバイクであり、重い=ビギナーには難しいというのが根強く印象としてあり、積極的に乗ってみたいとは思っていなかった。
まだまだ駆け出しのバイクライフではあるが、今回のロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650の試乗は、私にとって3台目のクルーザー体験。だから乗ってみたいという好奇心よりも、大丈夫かな? という不安の方が大きかったことは否めない。
初対面したスーパーメテオ650は2機種が用意され、ツアラーモデルはスクリーンやシートのボリューム感も相まって「デ、デカい」という印象。しかしスタンダードモデルの方は「大きいけど、佇まい全体が丸みをおびていて優しそうなイメージだな」と好印象。だから、これなら大丈夫! むしろ乗ってみたい! とポジティブに思えたのだ。
スーパーメテオ650は2モデルの展開。右がスタンダード、左がツアラー。
意気揚々とした反面、実際のところ全長2260mm/全幅890mm(ミラー除く)/車重241kg(装備・スタンダード)のスーパーメテオ650の取り回しには、やや緊張感が走る。排気量648ccという数字とは似つかわしくなく、エンジンそのものにも重厚感があり、跨った時にも迫力が感じられた。
しかし、これはロイヤルエンフィールドのメテオ350があまりにフレンドリーで乗りやすいバイクという印象が強く、さらには兄貴分であるスーパーメテオ650の存在感が想像以上に凛々しかったということもあるだろう。
懸念していた取り回しだが、やはりその凛々しい車体に重さや大きさを感じるが、止める場所などを考慮すればなんとかなりそうな気がしなくもない。
スーパーメテオ650用に完全新設計したというシャーシに、INT650やコンチネンタルGT650と同じ、排気量648ccの空冷並列2気筒SOHCエンジンを搭載。インドとイギリスのテクノロジーセンターが開発を担当し、欧州やアジア各国の公道で延べ100万kmにも及ぶ走行テストも行われたと言う。
自然にも溶け込む有機的な佇まいも魅力
試乗前に改めてじっくりとスーパーメテオ650を眺める。そして眺めるほどに、私はこのバイクに『たおやかさ(姿/動作などが美しくしなやかなさま。しなやかでやさしいさま)』を感じた。
いかにもアメリカンなスタイルではなく、ワルっぽさもあまりない。全体的に曲線や丸みのボリュームで構成されているため、尖った感じがないのだ。それゆえに街中など人工物が多い場所だけでなく、美しい自然との親和性が高いのも印象的だった。
今回、御殿場から富士山の麓を走り、西湖の湖畔や緑深い森の道にスーパーメテオ650を置いて撮影したときも、工業製品然とした無機質で硬質さとは少し異なる佇まいが本当に美しく、いつまでも眺めていられるなと思ったのだ。『流星(METEOR)』の名にふさわしい上品なデザインに魅了されるライダーも多いことだろう。
木漏れ日がスーパーメテオ650に降り注ぐ光景はとても美しく、いつまでも眺めていられるほど。
タンデムでも感じた空冷エンジンならではの鼓動感と味わい
実際、走り出すと慣れ親しんだ空冷エンジンならではの鼓動感がすぐに安心感をもたらしてくれた。コーナーでも思っていた以上に不安はなく、スムーズに走ることができた。その感覚はメテオ350と同じだが、私の身長などを考慮するとむしろスーパーメテオ650の方が好印象。それは乗馬の感覚に似ており、大らかな生き物に抱かれているようで心地よかったのだ。だから「帰りは私が運転したい」と相談するほどにもっと乗っていたいという気持ちが大きくなっていた。
さらにタンデムも試してみた。パッセンジャーとして乗ってみると、やはりシーシーバー付きシートが付属するツアラーモデルがおすすめ。シーシーバー自体はコンパクトなつくりで、面というよりも点で支えるイメージだ。しかし長距離をタンデムで走る場合、シーシーバー付きシートがあるとないとでは疲労感は大きく異なる。
身長173cmだとメテオ350よりもスーパーメテオ650の方が車体に対してしっくりフィットする。女性ビギナーライダーと言いつつ、おそらく多くの女性ライダーの方の参考にはならず、すみません…。
パッセンジャー目線で言えば、シーシーバーがあり乗り心地も良いツアラーモデルの圧勝。安定感があることからパッセンジャーにさほど気を使わなくて良くなるため、ライダーの疲労軽減にもつながるとのこと。
またバイク旅を考えた時、USBポート(左サイドカバー内にある)や簡易ナビのトリッパーが標準装備されている点も嬉しいところ。スタンダードモデルに関しては車両価格が100万円以内という点も、大きなポイントだ。
ロイヤルエンフィールドのバイクはまだまだ実車を見たことがない人も多く、質感やクオリティが気になるというライダーの声を聞くこともあるが、そんな方は東京都杉並区にあるロイヤルエンフィールド東京ショールームで試乗(無料・要事前予約)を申し込むことをおすすめしたい。ショールームではロイヤルエンフィールド全車種の試乗が可能なので、気になる人はメテオ350と乗り比べて検討することもできる。
英国クラシックの趣をもつミドルクルーザーをぜひ一度体験してみてほしい。
USBポート(サイドカバー内にある)や簡易ナビのトリッパーが標準装備。トリッパーは専用アプリをスマホにダウンロードして、バイクとペアリングすることで矢印などのシンプルな表示で道案内をしてくれるというもの。
スイッチボックスはロイヤルエンフィールド初のアルミ鋳造。左右のレバーは遠近を調整できるアジャスター付きで、好みの位置を無段階で設定できる。大きなメーターは視認性の高いスピードで、その隣りにある小さなメーターはトリッパー。トリッパー未使用時は、時刻表示となる。
2モデル/5カラーバリエーションの展開、価格は97万9000円〜
ロイヤルエンフィールドは、全車豊富なカラーバリエーションが魅力。日本ではスーパーメテオ650はスタンダードが3種類、シーシーバー付きシートと大型スクリーンを装備するツアラーは2種類のバリエーションが用意されている。
【ROYAL ENFIELD Super METEOR 650/Super METEOR 650 Tourer】主要諸元■全長2260 全幅890(ミラー除く) 全高1155 軸距1500 シート高740(各mm) 車重241kg(スタンダード・装備) 244kg(ツアラー・装備) ■空冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 648cc 47ps/7250rpm 5.33kg-m/5650rpm 変速機6段 燃料タンク容量15.7L ■タイヤサイズF=100/90-19 R=150/80 B 16
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
ターゲットを変えて3機種を作り分けるロイヤルエンフィールドの350ccシリーズ よく作り分けているなぁ、と感心する。普通自動二輪免許で乗れるロイヤルエンフィールド、メテオ350/クラシック350/ハン[…]
市街地を散策しながら、そのポジションと鼓動を楽しむ まだ眠っている早朝の都内は、とても静かだった。日の出が早くなるこの季節、朝に乗るバイクがとても気持ち良い。コンチネンタルGT650のセパレートハンド[…]
ミシュランの専用設計ソール×ATOPダイヤルクロージングシステムの「BULL WP ブーツ」 ストリートからロングツーリングまで幅広いシーンに活用できる「BULL WP」。バイクを操作するためのオリジ[…]
チェーンのプレート部分は伸びない! ではどこが伸びる? チェーンの構造 摩耗した分だけチェーンが長くなる! チェーンが伸びるとどうなる? 多くの中~大型バイクのチェーンは100リンク以上ある。そこでブ[…]
Q:ディアブロマンに質問。そろそろタイヤが減ってきて交換時期みたいなんだけど、どんなタイヤにすればよいのか分からないんだよね… A:「そんな時はバイクショップやタイヤショップにしっかり相談して、自分に[…]
最新の関連記事(ロイヤルエンフィールド)
関東では200台以上が集結! 『One Ride 2025 in 関東』の会場となったのは、週末ともなると大勢のライダーの憩いの場所となっている『バイカーズパラダイス南箱根』(静岡県函南町)だ。この日[…]
世界に羽ばたくカスタムビルダー「CUSTOM WORKS ZON」 ZONは、吉澤雄一氏と植田良和氏によって2003年に設立されたカスタムファクトリーだ。彼らの真骨頂は、他に類を見ない高いデザイン力と[…]
インドにも影響を与えたヒッピー文化をオマージュ ロイヤルエンフィールドジャパンが「ゴアンクラシック350」を正式発表。4つのカラーバリエーションをラインナップし、価格は74万9100円から。2025年[…]
“クラシック”シリーズ初の2気筒モデル ミドルクラスでグローバルな存在感を増しているロイヤルエンフィールドは、空冷350cc単気筒シリーズと空冷650cc 2気筒シリーズを多数展開。これに水冷450c[…]
スペシャルラテを飲みながら新型 ハンター350を堪能 東京・浅草の雷門の近くにあるカフェ「ORTIGA(オルティガ)」。ライダーが集うライダーズカフェとしても有名だ。 そのORTIGAで、8月17日([…]
最新の関連記事(新型クルーザー)
北米レブル300にEクラッチ仕様が登場 ホンダEクラッチが世界戦略進行中だ。欧州で人気のグローバル車・CBR650R/CB650Rを皮切りに、日本では軽二輪クラスのベストセラーであるレブル250に搭載[…]
スクランブラースタイルのCL500はカスタマイズも楽しい トラディショナルなスクランブラースタイルの大型バイクとして、2023年に登場したHonda「CL500」とはどんなバイクなのでしょうか? 筆者[…]
ニューカラー採用、ビキニカウルの“カフェ”も新色に カワサキは北米で、アーバンクルーザー「バルカンS」および「バルカンSカフェ」の2026年モデルを発表した。流麗なスタイリングはそのままに、標準モデル[…]
基本構成は日本仕様のエリミネーター/SEと変わらないが、排気量は異なる カワサキは北米でエリミネーター/SEの2026年モデルを発表した。すでに日本仕様でもホワイトおよびブラックのSEとレッドのプラザ[…]
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
人気記事ランキング(全体)
世界初公開の2機種はいずれもモーターサイクル カワサキが発表したジャパンモビリティショー2025出展モデルで確定しているのは、日本初公開となる「Z1100 SE」、スーパーチャージドエンジンを搭載した[…]
電子制御CVTにより街乗りもスポーティ走りも思いのまま! ヤマハは、インドネシアや日本に続いて新型スクーター「NMAX155」を欧州市場に投入する。これまでNMAX125のみラインナップ(一部地域では[…]
ENGINE:世界最速を目指してたどり着いた型式 ヤマハやスズキのような“専業メーカー”ではなかったけれど、’54年から2輪事業への参入を開始したカワサキは、基本的に2ストロークを得意とするメーカーだ[…]
新型CBは直4サウンドを響かせ復活へ! ティーザー画像から判明したTFTメーターとEクラッチ搭載の可能性 ホンダは中国がSNS『微博』にて、新たなネオクラシックネイキッドのティーザー画像を公開したのは[…]
重点的な交通取締り場所は決まっている 安全運転を心がけていても、パトカーや白バイの姿を目にすると、必要以上にドキッとしたり、速度メーターを確認したりするといった経験がある、ドライバーやライダーは少なく[…]
最新の投稿記事(全体)
2023年ローンチのSmaChariシステムがさらに広がる! いつか自転車通学を楽にするものをつくりたい……。そんな想いでホンダの若手エンジニアが立ち上げた「SmaChari」は、自転車を電動アシスト[…]
防水・防寒性能も万全。オールシーズン対応のスタイリッシュパーカ:MOBLAST WP JACKET 街の景色に溶け込むことを意識した、スタイリッシュな防水パーカ。メイン生地に防水メンブレンとソフトシェ[…]
最新Z900/Z500らに共通する3眼LEDヘッドライトやファットバーを採用してデザイン刷新 カワサキは欧州で、2026年モデルとして新型車「Z650 S」を発表。つい最近、スタンダードの「Z650」[…]
バイクバッテリー上がりの原因とは? エンジン始動時のセルモーター駆動やヘッドライトの常時点灯、ABS制御、デジタルメーターなど、バイクは高性能化するにつれてバッテリーの負担がどんどん増加していきます。[…]
北米レブル300にEクラッチ仕様が登場 ホンダEクラッチが世界戦略進行中だ。欧州で人気のグローバル車・CBR650R/CB650Rを皮切りに、日本では軽二輪クラスのベストセラーであるレブル250に搭載[…]
- 1
- 2