
●文:モーサイ編集部(山本晋也)
マツダ コスモスポーツやRX-7に搭載された“ロータリーエンジン”とは?
4輪メディアでは、定期的といっていいほど頻繫に「ロータリーエンジン復活!」といった論調のスクープ記事が出る。ご存知のように、ロータリーエンジンといえばマツダのシンボルともいえるエンジンだが、今は量産されていない幻のエンジンだ。
過去の搭載車を振り返ると、コスモスポーツ/サバンナRX-3/ファミリア/ルーチェ/サバンナRX-7/アンフィニRX-7/そしてRX-8とスポーツカーが多い。なかでも、唯一3ローターエンジンを載せたユーノスコスモは伝説となっている。
それゆえ、ロータリーエンジン復活の記事はスポーツカーとセットになっていることが多かったりもする。だから注目度が高く、多くの4輪メディアが騒ぎ立ててしまうのだろう。
1967年に発売されたマツダ コスモスポーツ(L10A型)。国産では初めてのロータリーエンジン搭載車だった。エンジンは水冷2ローターで982cc、最高出力は110ps/7000rpm、最大トルク13.3kg-m/3500rpm。
ロータリーエンジンの利点はコンパクトさと滑らかさ
ロータリーエンジンには、コンパクトという最大の特徴がある。通常の4サイクルレシプロエンジンの場合、吸気/圧縮/燃焼(膨張)/排気という4つの行程が同じシリンダー内で行なわれる。そのために必要な部品がバルブで、吸気時には吸気バルブを開き、圧縮/燃焼時にはバルブを完全に閉じておき、排気のときには排気バルブを開くというメカニズムが必要になる。
一方、ロータリーエンジン(海外ではヴァンケルエンジンとも呼ばれる)の場合、まゆ型をしたハウジングの中を三角系のローターが回転することで、4つのサイクルを文字通りに回していくという仕組みになっている。
ローターのある面(辺)に注目すると、吸気ポートの開いている部分で混合気を吸い込み、それをハウジングの形状によって圧縮していき、スパークプラグで点火することで燃焼させる。そして排気ポートのある部分で押し出すという具合だ。
こうしたサイクルを偏心運動で行なっているという構造は、ピストンの往復運動によるレシプロエンジンより滑らかなフィーリングとなることは明らかだ。4輪で多く使われている2ローターエンジンは6気筒並みのスムーズさと言われるが、実際に乗ると想像以上に滑らかな回転フィールに驚くことだろう。
さらに、ロータリーエンジンは先ほど記した4つのサイクルを、3つの辺で同時に行なっているのも特徴。これはすなわち1つのローターが2~3気筒に相当するということであり、またカムシャフトやバルブが不要なことから小型化できる。小型で高出力が期待できる夢のエンジン、それがロータリーエンジンだったのだ。
1960年代から各社がロータリー搭載バイクに着手した背景
“小型で高出力”への期待から、1960年代にはメーカー各社がロータリーエンジンの開発に着手した。日本でいえば、トヨタ/日産/ヤマハ/カワサキ/ホンダなどが試作段階までは至ったが、実際に市販・量産にこぎ着けたのは、4輪ではマツダ、2輪ではスズキだけだった……
※本記事は2022年3月15日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
※同記事は、別冊オールドタイマー21号(2016年7月号)掲載の記事に加筆し、再構成したものです。 あえてベールに包まれたファルコ 以下は、元スズキ社員としてファルコラスティコ(以下ファルコと表記)の[…]
※同記事は、別冊オールドタイマー21号(2016年7月号)掲載の記事に加筆し、再構成したものです。 10年後を見据えた近未来モデル モーターショーは、各メーカーが登場間近の注目モデルや、自社の現状の技[…]
1983年の登場当時、各雑誌媒体向けに紹介されたスズキRG250Γの全部品の分解写真。こうした写真をわざわざ撮影したことからも、同車に賭けたスズキの意気込みが感じられる。 フューエルインジェクション([…]
国産アメリカン〜通称ジャメリカン〜:ヤマハ XS650スペシャル(1978) アメリカの映画「イージーライダー」以降、全世界的なチョッパーブームになった1974年に北米に設立されたリンカーン工場(ネブ[…]
都市部では今や日常的に見かける「特定小型原動機付自転車」 運転免許不要で公道上を走ることのできる新カテゴリー「特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)」が注目されて久しい。 2023年の法改正で特[…]
最新の関連記事(メカニズム/テクノロジー)
1983年の登場当時、各雑誌媒体向けに紹介されたスズキRG250Γの全部品の分解写真。こうした写真をわざわざ撮影したことからも、同車に賭けたスズキの意気込みが感じられる。 フューエルインジェクション([…]
6段変速ミッション:スズキ T20(1965) 戦前はGPレーサーも4段変速までだったが、戦後の1952年にモトグッツィが5段変速を、1953年にドイツのNSUのレーサーが6段変速を採用した。そして国[…]
そもそもボア×ストロークって? 最近ロングストロークという表現をみる。エンジンのピストン往復が長いタイプのことで、バイクのキャラクターを左右する象徴として使われることが多い。 これはエンジン性能で高い[…]
並列4気筒エンジン:ホンダ ドリームCB750Four(1969年) イタリアのOPRAというメーカーの空冷OHCが並列フォアの始まり。この技術の権利を同じイタリアのジレラが購入して、空冷&水[…]
[A] 前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです たしかに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。 20年ほど前はシートカ[…]
最新の関連記事(自動車/クルマ)
アンダーパーツのカラー違いで、その佇まいは明らかに違う 「Active Sports Gear」をコンセプトに開発された無限WR-V用アクセサリー。基本となるフロント/サイド/リヤの3パーツは、張り出[…]
設置・格納時の利便性を追求したシェード 朝からバイクで遊ぶ時の、トランポでの車中泊に。車内でツナギに着替える際の、目隠しに。 バイク乗りなら意外と気になるのがクルマのサンシェード。できれば、パッと広げ[…]
オフテイストでも走りの「GR」の魅力は健在 GRパーツ「ハイエース バージョンI」は、“オフロードイメージ”がコンセプト。 前後左右のアンダーパーツにディフューザーやスカート風のサイドステップを配置す[…]
高速も乗れるビベルトライクがさらに便利に ビベルトライクは、自宅のコンセントで充電可能な3人乗り電動モビリティ。道路交通法上「普通自動車」区分に該当するため、普通自動車免許で公道や高速道路の走行が可能[…]
楽プラスナップキット:日産RZ34 フェアレディZ カスタムホイール 実車発表前から話題となっていた新型Z。歴代Zのアイコニックなデザインが随所に落とし込まれた造型は見所のひとつ。新規金型で成形された[…]
人気記事ランキング(全体)
シェルパの名を復活させたブランニューモデル カワサキが、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させたのは、2024年[…]
新5色ラインナップとなった2022年モデル 2022年モデルが発売されたのは、2022年6月23日のこと。2021年のフルモデルチェンジの際には、新設計の水冷エンジンが4バルブの「eSP+(イーエスピ[…]
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
最新の投稿記事(全体)
モンキーFSシリーズの最新作として誕生! ホンダ「CB1000F コンセプト」で往年のフレディ・スペンサーが駆ったレーシングマシンのカラーリングが話題になったばかりだが、憧れの“スペンサーカラー”をま[…]
孤高のパニガーレV4Sと友好的なパニガーレV2S パニガーレV4Sでサーキットを3本ほど走ると、強烈な疲労感が僕の身体を襲う。汗は止まらず、足腰に力が入らなくなる。試乗直後は格闘技を終えたような感じだ[…]
1999年、東京モーターショーに突如CB Fourが出現! CB Four、ホンダファンは憶えているはず。1999年の東京モーターショーに、何の前ぶれもなく展示されたショーモデル。その名も「CB Fo[…]
※同記事は、別冊オールドタイマー21号(2016年7月号)掲載の記事に加筆し、再構成したものです。 あえてベールに包まれたファルコ 以下は、元スズキ社員としてファルコラスティコ(以下ファルコと表記)の[…]
メンテナンスが必要になった時に必要な部品が手に入る 全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスでEXACTホイールやダイレクトドライブレーシングディスクのユーザーが増加し、MotoGP Moto2クラ[…]