
●文:モーサイ編集部(阪本一史)
ハーレーダビッドソンには50ccやオフロード車もあった!
最近でこそ、オフロード走行も視野に入れたアドベンチャーモデル「パンアメリカ」など今までイメージとは違ったモデルを展開しているハーレダビットソンだが、「ハーレー」と言えば、多くの人が大排気量Vツインエンジン搭載の威風堂々のビッグなクルーザーをイメージするだろう。
【2024 HARLEY-DAVIDSON PAN AMERICA 1250 SPECIAL】V型2気筒ながら、新開発の水冷エンジンを搭載するなど、チャレンジングなモデルだ。●価格:258万6800円〜
だが、ハーレーダビッドソンの100年以上にわたる長い歴史の過程では、じつはミニバイク/スクーター/オフロード車も存在していたのだ。当記事ではそうしたユニークな“ハーレーファミリー”を紹介する。
ハーレーにVツインが登場したのは1909年から
ハーレーダビッドソン=Vツインが今や定石のようになっているが、かつては様々なエンジンレイアウトのマシンがハーレーダビッドソンのマークを付けて販売されていた。
さかのぼれば、1903年の創業当初は409ccの4ストローク単気筒エンジンでスタート。今から112年前の1909年にVツインエンジン(810cc)が登場。
裏を返せば、創業から数年間は単気筒エンジンのみを生産していたのであり、それ以降、第二次世界大戦を挟んで、戦後復興の復興状況に合わせて経済的なシングルモデルを生産していた。
またそれ以外にも、水平対向エンジンや自社製の2ストロークエンジンまで手がけ、排気量では50ccや90ccのミニモデルまで存在していた。
他のモーターサイクルメーカーにしても、シンプルな構造のエンジンで創業している例は多い。
縦置きVツインで有名なモトグッツィは、戦前に水平単気筒エンジンでスタートしたし、Lツイン(90度Vツイン)でおなじみのドゥカティは、戦後50cc4ストローク単気筒搭載の原動機付自転車・クッチョロが始まりだったのだ。
ハーレーダビッドソンも例に漏れず、黎明期はもちろんのこと、Vツインエンジン登場後も、市場の動向に合わせた様々なタイプのモデルを供給した。
そして、ハーレーは1960年にイタリア・アエルマッキの株式の50%を取得、多くのイタリアンハーレーを市場に投入してユーザーを増加させていったのである。
ハーレーダビッドソン Bハマー(1955)
1947年より、ハーレーは自社製の2ストロークモデルを開発。ドイツのDKWを模した、125cc2ストローク単気筒エンジン搭載の「S125」というモデルを1947〜1952年まで生産し、価格の安さと手軽さで通勤や通学などにバイクを用いる人にも支持された。
1953年には165ccモデルも追加されている。写真の「Bハマー」は特にスタイリッシュな外観のモデルだ。しかし、1960年にアエルマッキを傘下として以降は、徐々に自社製2ストモデルは姿を消していった。
【1955 HARLEY-DAVIDSON B HUMMER】全長:– 全幅:– 全高:– ホイールベース:1308mm 最低地上高:– 車両重量:– エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:124.87cc ボア×ストローク:52.39×57.94mm 圧縮比:6.6 最高出力:3ps 最大トルク:– 変速機3速 燃料タンク容量:7.1L ブレーキ(F/R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/R):3.50-18/3.50-18
ハーレーダビッドソン Cスプリント(1961)
1961年、ハーレーダビッドソンはイタリアの名門アエルマッキと提携。アメリカ市場においてハーレーブランドで発売されることになった。
その第1号として、手薄だった250ccクラスに投入されたのが、この「Cスプリント」だ。アエルマッキ アラドーロなどの傑作エンジンとして世界的に有名な4ストロークOHV水平単気筒エンジンを搭載し、最高速130km/hをマーク。イタリアンデザインが特徴的なハーレーダビッドソンだ。
【1961 HARLEY-DAVIDSON C SPRINT】全長:1994mm 全幅:724mm 全高:– ホイールベース:1321mm 最低地上高:127mm 車両重量:118kg エンジン形式:4ストロークOHV単気筒 排気量:246.2cc ボア×ストローク:66×72mm 圧縮比:8.5: 最高出力:18ps/7500rpm 最大トルク:– 変速機:4速 燃料タンク容量:15L ブレーキ(F/R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/R):3.00-17/3.00-17
ハーレーダビッドソン AHトッパー(1962)
ハーレーダビッドソンにはスクーターも存在した。1960年に登場した「AHトッパー」は、自社製の165cc2ストロークエンジンを搭載。シリンダーが水平にレイアウトされ、Vベルトを使用した自動変速装置を採用した。始動はキック式ではなく、ユニークなリコイルスターターだった。1965年まで生産され、州によっては免許不要でOKだった5ps仕様のモデルも造られた。
【1962 HARLEY-DAVIDSON AH TOPPER】全長:– 全幅:– 全高:– ホイールベース:1308mm 最低地上高:– 車両重量:– エンジン形式:2ストローク単気筒 排気量:165cc ボア×ストローク:60.33×57.94mm 圧縮比:6.6 最高出力:9.5ps 最大トルク:– 変速機:オートマチック:燃料タンク容量:6.6L ブレーキ(F/R):ドラム/ドラム タイヤサイズ(F/R):4.00-12/4.00-12
※本記事は2021年8月9日公開記事を再編集したものです。*本記事は2008年発行『GREATEST HARLEY1903-2008 ハーレーダビッドソン105周年とVツインの100年』(八重洲出版)の内容を編集/再構成したものです。
モーサイの最新記事
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
レーダーでの速度取締の現場 赤切符と青切符の違いとは? 冬から春にかけては卒業や就職をひかえて新たに運転免許を取得する人が増えてくる時期です。自動車学校・教習所で習ったとおりの運転を心がけているつもり[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
ホンダ・スズキと同じく、浜松で創業した丸正自動車製造 中京地区と同様に、戦後間もなくからオートバイメーカーが乱立した浜松とその周辺。世界的メーカーに飛躍して今に続くホンダ、スズキ、ヤマハの3社が生まれ[…]
国内のカウル認可後に生まれた、1980年代半ばのネイキッドたち オンロードモデルの中で、定着して久しいネイキッド(英語のNAKED=裸という意味)というカテゴリー名。今では「カウルの付かないスタンダー[…]
最新の関連記事(ハーレーダビッドソン)
ミルウォーキーエイト117に3タイプのエンジン登場! ハーレーダビッドソンの現行クルーザーモデルには、シリンダーヘッド/スロットルボディ/インテークマニホールドを刷新した3タイプのミルウォーキーエイト[…]
高剛性高精度なアルミビレットパーツ続々登場! 高強度アルミニウム合金素材A6061-T6を高精度切削加工し、鮮やかな発色を維持する独自のアルマイト処理を施すことで変色や腐食を防ぎ、優れた耐摩耗性を発揮[…]
モーターサイクルショーなどに展示され、注目を集めたカスタム ナイトスターをよりスタイリッシュにしつつ、機能的なパーツをふんだんに盛り込んだのが、ハーレーダビッドソンのリプレイスパーツで実績と信頼のある[…]
バイク王公式アンバサダーに就任した虹色侍の“ずま” 今年2025年4月から始まったバイク王の新CMで、ハイテンポで歌い上げる「バイクを売るならGO〜バイク王〜」のフレーズに気づいたライダーも多いはず。[…]
ブレスクリエイションの提案するカーボン外装X350 ダートライメージの強いX350を、小変更ながらもヨーロピアンムードを感じさせるほどに変えている点にまずは驚いた。外装デザインを少し変更するだけでここ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
50ccでも実用カブとは別系統のOHCスポーツ専用エンジンを開発! ホンダは1971年に、50ccではじめてCBの称号がつくベンリイCB50を発売した。 それまで50ccにもスポーツモデルは存在したが[…]
カワサキZ1、伝説のディテール デザインは後にGPZ900Rなども手がけた多田憲正氏によるもの。完璧なバランスのスタイリングだけでなく、ディテール面でも後世の車両に大きな影響を与えた。反り上がったテー[…]
歴史遺産・油冷GSX-Rを完調状態で後世に バイクブーム全盛期だった1980年代から、はや40年以上。とっくに純正パーツの供給も途絶え、そのまま埋もれ去っていく当時の車両は数知れず。その一方で「愛車と[…]
「ワインディングの覇者を目指すならCB-1」のキャッチコピーだったら評価は変わった!? カウルを装着したレーサーレプリカが出現する以前、1970年代までのスーパースポーツはカウルのないフォルムが一般的[…]
あの頃の中型 青春名車録「4気筒再び」(昭和54年) それまで全盛を誇った2気筒のブームを収束させたのが、カワサキのZ400FX。CB400フォア以来途絶えていた待望の4気筒は、DOHCヘッドを採用し[…]
人気記事ランキング(全体)
ミルウォーキーエイト117に3タイプのエンジン登場! ハーレーダビッドソンの現行クルーザーモデルには、シリンダーヘッド/スロットルボディ/インテークマニホールドを刷新した3タイプのミルウォーキーエイト[…]
ブランド名は「南北戦争」に由来 1991年、成功を収めた弁護士、マシュー・チェンバースが興したバイクメーカー、コンフェデレート。 和訳すると「南軍」を意味する社名は、創業地がルイジアナ州バトンルージュ[…]
軽量で取り扱いやすく、初心者にもピッタリ 「UNIT スイングアームリフトスタンド」は、片手でも扱いやすい約767gという軽さが魅力です。使用後は折りたたんでコンパクトに収納できるため、ガレージのスペ[…]
みんながCBを待っている! CB1000Fに続く400ccはあるのかないのか ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「[…]
「ワインディングの覇者を目指すならCB-1」のキャッチコピーだったら評価は変わった!? カウルを装着したレーサーレプリカが出現する以前、1970年代までのスーパースポーツはカウルのないフォルムが一般的[…]
最新の投稿記事(全体)
50ccでも実用カブとは別系統のOHCスポーツ専用エンジンを開発! ホンダは1971年に、50ccではじめてCBの称号がつくベンリイCB50を発売した。 それまで50ccにもスポーツモデルは存在したが[…]
LEDのメリット「長寿命、省電力、コンパクト化が可能」 バイクやクルマといったモビリティに限らず、家庭で利用する照明器具や信号機といった身近な電気製品まで、光を発する機能部分にはLEDを使うのが当たり[…]
コンセプトが異なる3種のフルフェイスにニューグラフィック登場 KabutoのフラッグシップであるF-17は、耐貫通性と衝撃吸収性を備える高強度複合素材帽体『A.C.T.-2』に、徹底した空力特性を加え[…]
風が抜けるのにCEレベル2! タイチ「ネックスエアー」が夏の安全を変える ライダーの命を守る重要な装備、胸部プロテクター。しかし夏場は熱がこもりやすく、つい安全性よりも涼しさや薄さを優先した装備に切り[…]
発売当初のデザインをそのままに、素材などは現在のものを使用 1975年に大阪で創業したモンベル。最初の商品は、なんとスーパーマーケットのショッピングバックだった。翌年にスリーピングバッグを開発し、モン[…]