
●文:モーサイ編集部(阪本一史)
キャストでもスポークでもない独自構造のホイール
国産の2輪車にキャストホイール車が登場し始めたのは、1970年代後半のこと。当初は一部の高級モデルにのみ採用されたこともあり、ワイヤースポークとは違う新アイテムに当時のバイクファンは憧れたものだが、そのトレンドに乗らず、独自の道を歩んだのがホンダの最新ホイールだった。
車軸まわりのハブとアルミリムをスポークプレート(当初はスチール/後にアルミ製)で繋ぐ、組立式のコムスターホイールである。各部とスポークとの接合はリベットを用いていた。
コムスター(COM-STAR)という名称は、その構造と五芒星のような形状に由来し、COMPOSITE(合成の)とSTAR(星)を組み合わせた造語。
当時はかなりの重さだったキャストに対し、「キャストホイールの剛性と、スポークホイールのしなりの両立」を謳い文句にしており、さらにコムスターでは軽さも利点としてアピールした。
この最新ホイールの初採用車は、1977年4月発売のCB750FourII(後期型)で、前期型スポーク仕様からのマイナーチェンジ車という地味な登場だったが、ホンダがこのホイールを積極的にアピールしたのは、むしろ同年12月発売のGL500からだった。新開発の水冷縦置きVツインエンジンと車体をはじめ、斬新なヨーロピアンツアラーのスタイルも特徴としたGL500は新機軸のオンパレードだったが、同車で採用されたコムスターホイールには、2輪車で初となるチューブレスタイヤが採用されたのだ。
その後、コムスターホイール採用車は数を増やし、ホークシリーズ(250/400)、国内フラッグシップモデルのCB750F、小排気量ではCB125Tや原付のMB50まで、主要なロードスポーツモデルに装着されていった。
コムスターホイール初採用車は、1977年4月発売のCB750フォアII(後期型)。先代のスポークホイール車からのマイナーチェンジモデルという地味な存在と、この時点ではチューブ入りタイヤだったこともあり、コムスターホイールが大きくクローズアップされた印象は薄い。
新開発のチューブレスタイヤ+コムスターホイールの一番手モデルが、ホンダ ウイングGL500。新開発の縦置きの水冷V型OHV2気筒エンジン+シャフトドライブ駆動、FVQダンパーのサスペンションなど、新機構が数多く盛り込まれたモデルで、ホンダは「遠乗りとスポーティー走行の2つの性格を兼ね備えた、機能美にあふれる中排気量スポーツタイプのツーリング車」とアピールした。
次々と「モデルチェンジ」していったコムスターホイール
登場当初はスチール製だったスポークプレートが、1979年登場のCB750Fからアルミ製に代わり、オールアルミ製を謳うようになったコムスターホイールだが、以降も形状に変化があった。以下がその4代/4形態の変遷だ。
第1世代:コムスターホイール(1977〜1980年ごろ)
前述のようにスポークプレートの材質変更はあったものの、5本スポークでシルバー塗色が基本。機種によって、リム側のリベット取り付け部を黒い樹脂カバーで覆う仕様と、剥き出しの仕様がある。
第2世代:裏コムスターホイール(1980〜1982年ごろ)
初代のプレス打ち抜きの内側折り返しとは反対に、スポークプレートを外側に折り返したような形状から「裏コムスター」と通称されるが、正式名称ではない。この折り返し方のほうが剛性を出しやすいがゆえの変更だったと非公式に聞いたことがあるが、名称も従来どおりのコムスターホイール。スポークプレートの凹部は黒系仕上げが基本。
第3世代:ブーメラン型コムスターホイール(1981〜1984年ごろ)
3つのブーメラン型スポークプレートが、ハブからリム側へ向かって伸びた形状(接合は6×2点支持)に由来し、ホンダはブーメラン型と命名。CBX400F(1981)/VT250F(1982)などが代表機種で、当時の新機構であるインボードディスクと合わせた外観で、とても斬新な印象を与えた……
1981年11月に発売され、ホンダファン待望のDOHC4気筒400として大ヒットしたCBX400F。当時の新機構インボードディスクと、斬新なブーメラン型コムスターホイールを組み合わせ、初代VT250F(1982年)とともに強いインパクトを与えた。ある意味コムスターホイールのピークを印象づけたモデルと言えよう。
※本記事は2022年10月13日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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