
●文:[クリエイターチャンネル] 山崎陸
冬のUber Eats配達は過酷です。寒さと路面の凍結の両方と戦わなくてはいけません。しかし、それゆえに配達員が少なくなるため、やり方次第で1年を通してもっとも高額な収入を得られるチャンスの季節だと思っています。とはいえ長く安全に配達を続けるには適切な装備と心構えが必要不可欠。気合いだけでは簡単に心が折れてしまいます。
夏はどんなに対策しても暑さ軽減には限界がありますが、冬は装備次第で余裕。むしろ快適なほど環境を整えられます。
私が数年間、数千回の配達経験を通し試行錯誤を重ねてきた経験から、本当に役立つ冬の装備と、あまり効果的ではなかったものを詳しくご紹介します。なお、私の配達用バイクはホンダPCXです。この記事で紹介する装備はPCX用なので、こちらを参考に、みなさまのバイクに適した装備を選んでみてください。
これは絶対欲しい、寒さ対策グッズ
ハンドルカバー
寒い日のバイクでもっとも温めたい部位は手先です。配達員が普通のライダーと違うところは、スマートフォンを頻繁に使うこと。配達アプリや地図アプリの操作はもとより、バイクを降りてお店や配達先に歩いていくときに、毎回スマートフォンをホルダーから外します。極厚の冬用手袋をはめていると、アプリの操作をするたび、手袋を外さないといけませんし、ホルダーから外すときも、手元がかじかんで、落とすリスクも増えます。
手袋がつけにくい環境で活躍する装備が、ハンドルカバーです。風を完全にシャットアウトすることができますし、内側にボアがついていれば手袋をつけなくても十分暖かいですね。防水カバーがついているとなお暖かいですよ。
グリップヒーター
ハンドルカバーと合わせて、グリップヒーターを使えばさらに堅牢です。気温が氷点下になるような極寒の日には、グリップヒーターの存在が天国のように感じられます。やはり電気の力で発熱するアイテムは心強いです。おすすめは温度調整ができるモデル。中途半端に寒い日は、ヒーターをオンにすると熱い、オフにすると寒いなんてこともありますからね。
防寒ブーツ
バイク本体で風をガードできるだけ手先よりマシですが、足先もけっこう冷えます。配達員はショッピングセンターの中など、意外と歩くことが多いので、硬いブーツだと痛くなります。ワークマンの防寒ブーツは柔らかいので、歩いても足が痛くなることがありません。
ウインドスクリーン
風速が1km/hあがると、体感温度が1℃下がるといわれています。そのため、ライダーの体温を奪う大きな要因のひとつが風といえるでしょう。風防があれば、厳しい風を防御できます。
フルフェイスのヘルメットを被れば風は防げますが、Uber Eats配達員はお店やマンションによく入るので顔を完全に隠すのはNG。いちいち脱ぐのも、面倒ですしね。私はジェットタイプをかぶっているので、風がヘルメットに入らないようにするためにも風防は重要です。
試したけどあまり使わなくなったアイテム
スマートフォン対応の手袋
配達員にとって必須に思えるスマートフォン対応手袋ですが、実際の使用感は期待ほど高くありませんでした。
たしかにスマートフォンの操作はできますが、素手と比べると操作性は明らかに劣ります。注文の受け取りや配達完了の操作など素早い対応が求められる場面で、もどかしさを感じることが少なくありません。また、ハンドルカバーとグリップヒーターを使用していれば、厚い手袋自体が不要でした。
スマートフォンを操作する時だけ手袋を外す、という煩わしい動作が増えただけ。現在はふだんのツーリング用グローブとして大活躍していますが、配達ではイマイチでした。
使い捨てカイロ
もっとも手軽な防寒対策に思えるカイロは、配達では意外と使い勝手が悪かったです。毎日用意するのも面倒ですし、最大の問題は効果の持続時間です。たしかに最初の1-2時間は暖かいですが、その後は冷たく硬くなります。
貼らないタイプをポケットに入れても、ポケットに手を入れられるタイミングはあまりないですし、貼るタイプは動き回るときにもぞもぞして邪魔だなと、感じていました。そもそも、防寒をしっかりしていれば不要ですしね。
極厚の防寒具
極厚ダウンジャケットや厚手のパンツは、配達時やお店の外での待機時には心強い味方です。しかし、店内での待ち時間やショッピングモールでお店まで歩いていくとき、すぐに暑くなり汗をかいてしまいます。
Uber Eats配達員は暖かい建物に入ることが多いので、薄手で防風性能の高いウェアを重ね着で調整する方が実用的だと感じています。
寒い日にバイクに乗るとき気を付けていること
道路の凍結に注意する
ツーリングのときは暖かい日中や晴れの日を選んで走れますが、配達はむしろ寒い日や夜間を選んで走ることが多いでしょう。そのため、冬場は道路の凍結に警戒していください。とくに、下記のような場所は要注意。
- 朝早くや夜間
- 日陰になっている道路
- 高架下
- 橋の上
- 道路の端のほう
- 車通りの少ない道路
これらの場所では、見た目は濡れているだけに見えてもじつは薄く氷が張っていることも。基本ですが、スピードは控えめにして急なブレーキや急なハンドル操作は避けるようにしています。
風を通さない上着を着る
上着は、保温性と同じぐらい防風性を重視して選んでいます。おすすめは雨合羽。雨を防ぐという性質上、隙間が少なく風を防げますし、雨が降ってきてもそのまま着られますからね。肌着は吸汗速乾のインナー、中には裏起毛のフリース。一番外に雨合羽は絶対に着て、あとは薄手のシャツやジャケットで調整しています。
雪の日や氷点下の日は素直に諦める
雪の日、氷点下になる日は素直に配達を諦めています。たしかに配達員のライバルが減り注文も増えるので稼げますが、コケてバイクを故障させたりケガをしては、稼働しても実質赤字なんてことも。
以前、雪が降りそうな日に無理に配達をして走行中にコケたことがあります。日中は晴れていたのですが、夜になり雪が降ってきて、注意はしていたにもかかわらずカーブでコケてしまったのです。カウルが割れて1日稼働したのにマイナス収支でした。
それから雪の日は配達しないと決めています。一度配達を始めてしまうと、高単価な注文受注の嵐に「これが終わったら帰ろう、あでもいいのがはいったから、やっぱりこれだけ配達しよう」と稼働してしまい、中断して帰るという選択が取りにくいですからね。
Uber Eats配達員の冬の稼働は、準備と撤退判断が超重要!
過酷な寒い冬の配達も、適切な装備と心構えがあれば十分に乗り切れます。むしろ、競争が少なくなるだけ、夏場よりも効率的に稼げる可能性も高いのです。ただし、コケてマイナス収支になるリスクもあるため、暑い夏とは違い、撤退の判断も超重要です。
寒い中での仕事は大変ですが、寒空の下で頑張って稼ぎ、配達を終えた後の達成感は格別です。温かい家に帰り、温かい風呂に浸かる瞬間の心地よさで疲れも吹き飛びます。この記事が、これから冬の配達に挑戦する方々の参考になれば幸いです!
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