実はガンマよりも速かった?! 1978年スズキ「RG250」【柏 秀樹の昭和~平成 カタログ蔵出しコラム Vol.1】

●文/カタログ画像提供:[クリエイターチャンネル] 柏秀樹 ●外部リンク:柏秀樹ライディングスクール(KRS)
ライディングスクール講師、モータージャーナリストとして業界に貢献してきた柏 秀樹さん、じつは無数の蔵書を持つカタログマニアというもう一つの顔を持っています。昭和~平成と熱き時代のカタログを眺めていると、ついつい時間が過ぎ去っていき……。そんな“あの時代”を共有する連載。記念すべき第1回は、1978年に登場したスズキ「RG250」です。
低回転から淀みないパワー、50ccを思わせる軽快さ
バイク界が一気に盛り上がり、販売台数でピークだった1983年に話題の的となったRG250ガンマ(Γ:ギリシャ語で栄光を意味するゲライロの頭文字)よりも、今回ノミネートした空冷30馬力のRG250の方が速かった! なんて言ったら驚かれますか?
そんな馬鹿な! と思われるかもしれません。ガンマは驚異の250ccクラス過去最高馬力の45馬力だから、30馬力より遅いなんてありえないはずですよね。
もちろん鈴鹿サーキットやスズキ竜洋テストコースの長い長い直線なら、ガンマが当時のクラス最速かもしれません。しかし、筑波サーキットなど直線が短いコースだったらどうでしょう。
国際A級のバリバリが乗って速くても、乗り始めたばかりとか、そこそこのライダーにしてみれば……。ましてブラインドコーナーやアップダウンの連続するワインディングではどうでしょうか。
45馬力よりも低回転からパワーが淀みなく出てくる30馬力エンジンの方がスイスイと前に行ってしまうんです。
しかも、RG250は乗車した瞬間に感じる軽さが半端ない。カタログスペックではわからない軽さが光っていました。その上にどんな速度域でもスイスイ曲がりやすい操縦性なのです。50ccバイクをぶん回すような気軽さがRG250最大の武器でした。
なのでプロダクションレースという改造せずに楽しめるクラスでは当時最強の存在だったのです。
SUZUKI RG250 ●1978年6月発売
SUZUKI RG250Γ ……このマシンの話もいずれ。
ガンマの45馬力はピークパワーの頂点(曲線)が尖っていたんです。深いバンク走行中に高回転時のスロットルレスンポンスが過敏だから、バンク&ラインの制御が難しい。これは後の各社ワークスマシンの開発でも重要ポイントになっています(今も日本メーカーが苦戦しているのはこのせい、という説があります)。
馬力のキャラクターとハンドリングは実に密接な関係にあるということですね。ほんの僅かにピークパワー時のパワーカーブを穏やかにするだけで俄然扱いやすくなる。つまり、45馬力よりも40馬力にした方が曲がりやすく、結果的にタイム短縮や安定した周回ができる可能性が高まるのです。特に雨の日はテキメンでした。
だからと言ってガンマを否定しているわけではありません。この世に生まれてきたバイクはスズキでなくても可愛い存在なんです。
ともあれ、私の実力で普段のワインディングや筑波サイズのサーキットでは、RG250ガンマより多分RG250こそクラス最速バイクだったのでは、ということです。
ガンマが出てきたからこそ、その事実に気がついたのでガンマにお礼を言いたいぐらいです。
4ストロークが注目される中で
このRG250がデビューした頃のスズキは、現在の国産4メーカーの中で4ストロークエンジン車生産では最後発のメーカーでした。だからGS750、GS550、GS400を発売アピールしている最中で、2ストの250や400なんて「絶滅機種でしょ? まだあったの?」というぐらい注目度が低かった。
世の主流はCB750フォアが出てから4ストローク。そして2気筒よりも4気筒の時代だったのです。ということなので、RG250なんて見たことがない! とか存在すら知らなかった、という方がいても不思議ではありません。
もうちょいとRG250を褒めちぎるとしたら、スズキの2ストローク車って50から750までギヤシフトの入りが良くて、扱いやすくて耐久性も優れていました。ただし、RG250は飛ばすと燃費が……。
1978年6月にデビューしたRG250は、4か月後にはキャストホイール付きのRG250Eという名前へ。カタログではいずれも乾燥重量126kg。当時の技術ではキャストホイールの方が重かったのになぜか同じ数値でした。重量もプラスマイナスの誤差が当時の運輸省届け値で認められているので誤差の範囲ということだったのでしょう。多分。
「GPチャンピオンマシン、RGB500の技術を注いだロードスポーツ」と謳われて登場したRG250Eは、ニーグリップしやすい15Lの大容量フューエルタンク、前輪油圧式ディスクブレーキ、星形キャストホイールなど、数々の装備も充実。ハンドルはセミアップタイプとコンチネンタルタイプが選べた。
1970年代後期は各社とも主流のティアドロップ型タンクから直線基調のスタイルへ大きく舵を切った時代。キャストホイールとのセットで各社は角ばったカフェレーサースタイルを優先しましたが、このRG250もその流れをわずかに汲んでいたと解釈できます。
ともかくアクセル全開時の、あの白煙と2ストらしいシャープな吹き上がり感!
RG250は2ストの水冷式が生まれる直前の、まさに史上最強の空冷2スト250バイクだったのです。
当時のカタログは技術解説も詳細だった。バイク乗りたちはエンジン性能曲線や走行性能曲線から最高速を計算したり、新技術のウンチクを身に着けるために目を皿のようにして読み込んだり……。そんな時代だった。 ※写真はRG250Eのカタログ
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