ライダーに起きやすい!? “かくれ脱水”って何?

全国各地で熱中症警戒アラートが発令されるほどの猛暑が続く、2023年の夏。しかし夏場であっても、基本的にバイクに乗るときは長袖長ズボン/ヘルメット/グローブなどを着用しなければいけません。その際に特に気をつけたいのが、”かくれ脱水”と呼ばれる症状。いったいどのような症状なのでしょうか。
●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
熱中症の前触れ? ”かくれ脱水”とはいったい何なのか
”かくれ脱水”は、身体の1〜2%の体液が失われているにもかかわらず、脱水症状がはっきり出ず、自覚のない状態のことをさします。
バイクを運転中に、トイレの回数を少なくするために水分補給を控えたり、屋外でのランニング/ジョギングで、汗はかいているものの不調を感じていない状態、といった状況が、かくれ脱水になりやすいケースとして挙げられます。
不調でない場合ならばこのままでも問題ないのではないか、と思う人もいるかもしれません。しかし、そのまま身体から水分が失われ続けると、脱水症が悪化してしまいます。
脱水症の症状例としては、軽度の場合はめまい/ふらつき、中等度では頭痛/胃のむかつき、そして高度では意識障害/痙攣などが挙げられます。重度になると臓器不全などを引き起こして、ショック状態となる可能性も少なくありません。
また、それに気温/湿度の上昇といった要素が加わることで、重度の熱中症へつながってしまう場合もあります。
脱水症と聞けば、炎天下の屋外で激しい運動/労働をしたときに起こるもの…と考える人も少なくないでしょう。実際、夏場に脱水症を訴える人は多く、近年は特にテレビ/SNS等でも脱水症に警戒する旨が多く報道されています。
しかし脱水症は、炎天下の屋外で激しい運動/労働をしたときだけに起きるわけではありません。
そもそも人間の身体は、体重のおよそ60%相当が水分/塩分/電解質が混ざった体液からできています。そこかんら発汗/排泄など目に見える形で水分が失われるわけですが、じつはそれ以外にも呼吸や皮膚から水分を失っており、これを”不感蒸泄”と言います。
この不感蒸泄、体温が1℃上昇するとおよそ15%増えるとされています。つまりライダーは、長袖上下/ヘルメット/グローブ等を着用しているというだけで、体内の水分量が減りやすい状態に晒されているといえます。
さらに、夏バテによって食欲が落ちてしまい、食事からの水分が摂りにくくなってしまうと、ますます体内の水分量は減少してしまいます。
夏場のバイク走行は特に水分補給が大切。
ところで、脱水症と熱中症は症状が似ていますが、その要因には少し違いがあります。
まず脱水症の場合、体液が汗で失われ、かつ補給ができていない場合に発症し、前出のような症状が現れます。
一方の熱中症は、気温の高い環境で生じる健康障害の総称をさし、体温調節が働かなくなる/体温上昇/めまい/けいれん/意識障害といった症状が起こります。
どちらもカギとなるのは水分と塩分。つまりかくれ脱水、ひいては脱水症状を防ぐことが熱中症の予防につながるということになります。
ちなみに、脱水症を予防するには、1日におよそ1.2〜1.5Lの水分を6~8回に分けて摂ったほうがよいとのこと。
また糖尿病/高血圧といった持病がある人は、あらかじめ主治医に注意点を尋ねておくべきしょう。
さて、日常生活においては、適宜食事/飲水することで身体に必要な水分量を補給し、調整することができますが、バイクを運転している状態だとそう簡単にはいきません。
125cc以下のバイクの場合、ホンダ「ディオ110」/ヤマハ「ジョグ125」などのように、500〜600ml容量のペットボトルを入れるインナーボックスが備わっているものがあります。
こういったバイクに乗っている人は、信号待ち/路肩に停車してすぐに水分補給しやすいですが、もちろんそうでないバイクに乗っている人もいるでしょう。
すぐに水分補給ができない場合は、エアコンの効いた屋内でのこまめな休憩/塩分/水分の補給を定期的に行うことがより一層求められます。また、“◯分ごとに水分補給/休憩する”と決めたり、飲料水ではなく経口補水液を選ぶのもおすすめです。
かくれ脱水を予防することが、最終的には熱中症を防ぐことにつながります。まだ不調を感じていないからと過信せず、定期的な休憩/水分補給を行って楽しいバイクライフを過ごしましょう。
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(夏の暑さ対策)
2層構造ポリエステル生地が生み出すドライ性能 「ドラスティックドライ」シリーズの最大の特徴は、独自に開発された2層構造のポリエステル生地にある。この特殊な生地構造は、肌に接する内側の層と、外側の層で異[…]
夏場はサイドスタンドがアスファルトにめり込む危険性あり!いったいどういうこと? 駐車場などに使われている一般的なアスファルトについて、その軟化点は47.0〜55.0℃と言われていますが、夏場の強烈な直[…]
1分でわかる記事ダイジェスト とにかく暑すぎる真夏のツーリング 連日、猛暑が続いている。ライダーにとって、ツーリングをする際の気温や天候って非常に気になるもの。真夏の沖縄で、白バイに乗車した際の暑さ対[…]
[A] 猛暑日はライダーへの負担がハンパなく大きい。自分で絶対守る何箇条かを決める覚悟が必須 避けるべきシチュエーション 真夏にバイクに乗る経験がまだ少ない方は、照りつける直射日光と照り返すアスファル[…]
おすすめのヘルメット用洗剤は? イヤなニオイを抑える、定期的な内装洗浄と洗剤選び ヘルメットが発するイヤなニオイのおもな原因は、インナーパッドなどに染み込んだ汗/皮脂が酸化したり、雑菌が繁殖して発生す[…]
人気記事ランキング(全体)
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
マーヴェリック号の燃料タンク右側ステッカー エンタープライズに配属された部隊 赤いツチブタは、「アードバークス」の異名を誇る米海軍「第114戦闘飛行隊(VF-114)」のパッチ。1980年代には第1作[…]
※この記事は別冊モーターサイクリスト2010年11月号の特集「YAMAHA RZ250伝説」の一部を再構成したものです。 ヤマハ RZ250のエンジン「2ストロークスポーツの純粋なピーキー特性」 ヤマ[…]
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
公道モデルにも持ち込まれた「ホンダとヤマハの争い」 1980年代中頃、ホンダNS250Rはヒットしたが、ヤマハTZRの人気は爆発的で、SPレースがTZRのワンメイク状態になるほどだった。 しかしホンダ[…]
最新の投稿記事(全体)
イベントレース『鉄馬』に併せて開催 ゴールデンウィークの5月4日、火の国熊本のHSR九州サーキットコースに於いて、5度目の開催となる鉄フレームのイベントレース『2025 鉄馬with βTITANIU[…]
ロングツーリングでも聴き疲れしないサウンド 数あるアドベンチャーモデルの中で、草分け的存在といえるのがBMWモトラッドのGSシリーズ。中でもフラッグシップモデルのR1300GSは2024年に国内導入さ[…]
カラーバリエーションがすべて変更 2021年モデルの発売は、2020年10月1日。同年9月にはニンジャZX-25Rが登場しており、250クラスは2気筒のニンジャ250から4気筒へと移り変わりつつあった[…]
圧倒的! これ以上の“高級感”を持つバイクは世界にも多くない 「ゴールドウィング」は、1975年に初代デビューし、2001年に最大排気量モデルとして登場。そして2025年、50年の月日を経てついに50[…]
カワサキ500SSマッハⅢに並ぶほどの動力性能 「ナナハンキラー」なる言葉を耳にしたことがありますか? 若い世代では「なんだそれ?」となるかもしれません。 1980年登場のヤマハRZ250/RZ350[…]
- 1
- 2