未来のヘルメットが発売開始!SHOEI OPTICSON試用レビュー
●文:[クリエイターチャンネル] 相京雅行
2022年3月に行われたモーターサイクルショーで、試作品を公開して大きな話題になったSHOEIのヘッドアップディスプレイ付きヘルメット「オプティクソン」
スマートフォンとヘッドアップディスプレイをブルートゥース接続することで、ルート案内や電話の発着信などの情報を投影することができます。
2022年12月17日より先行限定販売される同モデルのサンプルをお借りすることができたので、実際に使ってみました。
オプティクソンを購入する方法
現在オプティクソンを購入することができるのは東京、横浜、大阪にあるSHOEIギャラリー店舗のみとなり、通販や量販店で購入することはできません。
また購入にあたってはSHOEI独自の内装調整システム「パーソナルフィッティングシステム」を行う必要があり、スマートフォンとの接続やディスプレイの表示状況を確認するために、原則試着走行を推奨しています。
実は発売に先駆けて、アプリやヘッドアップディスプレイの動作確認テストなどを少しお手伝いさせて頂いた関係で、筆者用のセッティングデータは既にあったので今回は送っていただきました。
オプティクソンの付属品
お借りしているのが発売前のサンプル品のため、全ての付属品は揃っていませんでしたが、通常はヘルメットの袋、チンカーテン、SHOEIドライレンズ、シリコンオイル、SHOEIステッカー、バッテリーコード、ACアダプタとなります。
価格は13万7500円。カラーは今のところ艶消しのブラックと艶ありのホワイトの二色でバッテリーは別売り1万1000円となります。
ヘルメットの袋は従来のSHOEIヘルメットの付属品とは異なり、X-14やX-15などフラッグシップモデルにのみ付属されているもの。
またSHOEIドライレンズは独自の防曇シートで、今まではピンロックシートを付属していましたが、順次切り替わっていくようです。貼り付けタイプのシートは絶大な防曇効果があるので嬉しい付属品です。
チンカーテンはテストでお借りした時には付属されておらず、構造的にも装着は難しそうだなと思っていたのですが、製品版には付属されており、従来品と比べると少し力を入れないと装着できませんが、気合を入れて押し込むとピッタリ入りました。
ACアダプタは今どきらしくUSBタイプCを採用しており、ツーリング先バッテリーが切れてしまった場合はモバイルバッテリーから充電することもできますが、公式的には付属のACアダプタ以外の充電はNG、もちろん充電しながらの使用もNGです。
バッテリーと本体をつなぐコードはUSB規格品などになっていないのは、接続部分に防水性を持たせるためと簡単に抜けないようにする為です。
バッテリーは一般的なリチウムイオンバッテリーに比べて、発火の可能性が低いリン酸リチウムイオンバッテリーが採用されており、SHOEIの安全意識の高さが伺えます。
バッテリーの持ち時間は6時間と記載されていますが、日帰り伊豆ツーリングで5~6時間程度走行してもバッテリー残量が残っていたので、表記通りと言えるでしょう。
オプティクソンの見ため
外観上はヘッドアップティスプレイのユニットが内蔵されている顎部分と操作ユニットがついている左サイドが特徴的です。
ヘッドアップディスプレイユニットはトルクス3本で固定されておりメカメカしい雰囲気が漂います。
左サイドに装着された操作ユニットはインカムを彷彿させる形状で、電源ボタンを含めて4つのボタンが大きく配置されているので操作性は良好です。
そしてなんと言ってもコンパイナと呼ばれるヘッドアップディスプレイが目を引きます。筆者はドラゴンボール世代なので、見た目は完全にスカウターです。戦闘力が測定できそう。
ロゴやサイドに貼られたオプティクソンのステッカーは水色を使っており、後頭部には今までのSHOEI製品では見たことがないロゴが貼られています。
オプティクソンはコネクテッドザフューチャーをコンセプトに掲げており、おそらくこのロゴや配色はコンセプトを反映させたものでしょう。
コンパイナ上の素材が切り替えられている点、後頭部にはGTウイングのようなスポイラーがついている点も特徴です。
ヘッドアップディスプレイの機能性
このヘルメットに期待するのはヘッドアップディスプレイだと思うので、まずはこちらを解説します。
コンパイナの位置は購入時に調整してもらえますが、高さや角度の調整は工具を使わずに自分で行うことが可能で、視界にほとんど入らないようにすることもできます。
ヘッドアップディスプレイはスマートフォンとブルートゥース接続して、ツーリングサポーターというアプリをインストール。
月額800円か年額8000円のどちらかを契約する必要があります。
ナビアプリ使用時にはコンパイナに目的地までの距離や次に曲がる場所までの距離が表示され、曲がるポイントへの距離が近くなると青、青点滅、オレンジ点灯と表示が変わります。
表示に関してはチンガード中央に調光センサーを備えており、周囲の明るさに応じてコンパイナの明るさを自動調整するほか、任意調整も可能、オプションのスモークシールドに対応した設定もあります。
ヘルメットにはスピーカーとマイクが標準で内蔵されているので、音楽を聴いたり、電話の着信を受けることも可能で、siriなどの音声アシスタントを使ってスマートフォンを触ることなく、電話や音楽アプリを操作することもできます。
ヘッドアップディスプレイは電源ボタンを除けば、音量調整の+、-の他にメインボタンのみ。メインボタンを長押しするとsiriなどの音声アシスタントが起動する仕組みです。
ナビアプリは累計7時間ぐらい使ってみましたが、視界の邪魔になることはなく、視線をずらす必要がないので快適です。
操作ユニットの見た目がまるでインカムですが、インターコム通話はできません。仲間と喋りながら走りたいなら電話やラインなどのアプリを通して行う形となります。
その他の機能性
ベンチレーションは口元と頭頂部左右の3か所配置されていますが、口元にはヘッドアップディスプレイユニットが納まっているため、取り入れた走行風は上方向に流れ、曇りを取るためなどに使われます。
シールドは曇りを素早くとるためのちょい開けポジションを含めて7段階開閉が可能で、オプションでスモーク5500円やミラータイプ3種類9900円が用意されています。
また近年のSHOEIヘルメットはセンターロック式が多いように思いますが、サイドのノブを使って開閉する形をとっているのも特徴的。センターロックが苦手という方も多いので歓迎したいポイントの一つでしょう。
顎紐に関してはDリングを採用。ヘッドアップディスプレイユニットは重いので軽量なDリングを採用している点は歓迎したいところです。
内装
内装はトップ、チークパッド左右、顎紐ガード左右の5点が取り外し可能です。今回はサンプル品の為、筆者が返却したのち別メディアが使う都合上、内装に調整用パッドが貼られておらず、仕込まれているだけでしたが本来は内装を調整します。
頬や額など肌が直接触れる部分は、肌触りの良い起毛素材が採用されており、その他はさらっとした素材に切り替えられ内装はべたつきにくい吸湿速乾素材になっています。
チークパッドは頬にそった構造になっておりフィット感が良さそう。耳の上の方のクッションを触ってみると上の方だけわずかにクッションが薄くなっています。
他メーカーの眼鏡対応内装ほど大胆には削られていませんが、眼鏡ライダーへの配慮が感じられます。
トップ内装もクッション性がしっかりしていますが、パーソナルフィッティングでパットを追加して完成となるので、納得がいくように好みをきちんと伝えましょう。
重さ
艶消し黒Mサイズのバッテリーを除いた重さは1770gでした。内装調整必須のヘルメットなので人によって重さは変わってくると思いますが、システムヘルメットと同等か少し重いぐらいの感覚です。
バッテリー単体で138gあったので、無理にヘルメットに仕込んで帽体を重く大きくするよりは別体式にするのは正解だったように思います。
※ヘルメットの重さは多少の個体差があります。
サイズ、フィット感
他の製品と違う最大の特徴は、パーソナルフィッティングサービスが必須という事です。SHOEIギャラリーでサイズを確認し、専用の内装を作るためピッタリのサイズになるはず。
チークパッドは肌に沿うようにしっかりフィットしますが、使い始めは少しきつく感じるかもしれません。
通話しながら走行する際には喋りにくさを感じることもあるでしょう。あまりきつく感じるようであればフィッティングの際にチークパッドを1サイズ変更しても良いかもしれません。
ナビアプリとヘッドアップディスプレイ
ヘルメット本体の性能も気になると思いますが、おそらく一番の焦点はこちらではないでしょうか?
筆者は車にも乗りますが、ナビの案内は各社若干の癖があるように思います。そのため慣れていないと本来曲がるべきところを通過してしまうことも。
ですがツーリングサポーターとヘッドアップディスプレイが組み合わさると、曲がるべき場所を通り越すことはなくなりそうです。
ヘッドアップディスプレイには10m単位で距離が表示され、曲がるべき場所では矢印がオレンジ色になるため見逃すことがありません。ナビ音声をオフにしていても見逃すことはないはずです。
コンパイナには常に情報が表示されますが、意識的に見ようとしなければ情報を把握することができません。感覚的にはわずかに視線を下向きにする感じです。
ハンドルなどにマウントしたスマートフォンを見るのと違い、頭自体を動かすのではなく視線を少し変えるだけなので情報の確認はスムーズですが、運転中に若干視線を動かす量が大きいように感じたのでコンパイナの高さを少々変えたところ、更に見やすくなりました。
グローブをしていてもコンパイナの調整は難しくなく、ピッタリの位置に来ると見やすくなるので位置調整は大事です。
また高速道路を走行中に特にスピードを出していたわけではありませんが「スピードに注意してください」というアナウンスが流れました。
時速は制限速度以内でしたし、なんだろうと思いながら走っているとオービスを発見しました。
使い勝手は良好なのですが、一点だけ気になったのはグーグルマップに比べて店舗の登録数が少ないように思いました。駅や大きめの施設に関しては登録されていますが、登録されていない小さい店舗は多そうな印象です。
ヘルメットとしての性能
付属のチンカーテンを装着した状態で走行しましたが、チークパッドのフィット感が優れていることもあり巻き込み風が入ってきません。
下道ではヘルメット内の静粛性が保たれ、ナビの音声などもクリアに聞こえましたが、高速走行では若干ヘルメット左側のコントロールユニット付近から風切り音がしていたように感じました。
ただインカムを装着するのに比べれば風切り音は小さめの印象です。
ベンチレーションを全開放で下道を走ってみたところ、口元はシールド方向に風が流れているため顔が涼しく感じることはなく、頭頂部の効果は感じるものの流入量が少なめの印象でした。
高速道路走行時にはどちらも流入量が増加し、若干口元が涼しく感じるようになりました。また頭頂部の流入量も増加し、高速走行では夏場でも蒸れることがなさそうです。
チンガードが特徴的な形ではありますが、高速道路でも抵抗を感じることはなく長時間走行でも疲れることはなさそうです。
普段使っているヘルメットが1300gぐらいなので1770gのOPTICSONは決して軽くはないのですが、内装調整しているのでブレが少なく負担が軽減されています。
そのため1600g前後のインナーバイザー付きの多機能ヘルメットを被っているのと変わりない印象です。
ツーリングメインなら最高のヘルメット
通勤や買い物などで頻繁にヘルメットを脱ぐのでなければ、外部バッテリーを煩わしく感じることもありません。
基本性能も高いので月に数回程度のツーリングメイン用途の場合は使い勝手の良いヘルメットになるでしょう。
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