ホンダが威信をかけて勝ちにきた! そう思わずにはいられない新型CBR1000RR-Rの開発手法は、変化球ナシのど真ん中ストレートだ。日本での発売が見込まれるのは2020年春頃。待ちきれない気持ちを抑えながら、開発者に話を聞いた。
今回インタビューを行なったのは、「馬力屋」と紹介されるエンジン研究担当の出口氏と、EICMAでもお話を伺った石川氏。石川氏は’80年代のブームから4気筒が大好きということで、もちろんカワサキのZX-25Rにも興味津々だとか。
手段を決めることなく目標馬力を設定した
新型CBR1000RR-Rで気になるのは、なんといっても217.6psという馬力だろう。しかも、噂されていた可変バルブ機構などは使わずにこれを実現している。
石川氏「新しいエンジン開発にあたっては、’20年の時点で予想されるライバル勢に対し、パワーでも勝るというのがシンプルな目標でした。そこにはエミッションとの両立なども絡んでくるので、もちろん各種デバイスの検討もしましたが、素のエンジンで最大のパフォーマンスが出ているのが大前提。このエンジンならそのままイケるという判断で、一番シンプルなところを選びました。今後、よりパワーを出したいとか、環境性能への要求が厳しくなるような場面があれば、デバイスを付加していく可能性も検討するでしょう」
ライバル勢のなかでもドゥカティのパニガーレV4Rは221psだ。負けず嫌いのホンダとしては気になるところだと思うが……。
石川氏「他社の数値についてはなんとも言えませんが、実際のパフォーマンスでは遜色ないと考えています」
パワーを出すことを突き詰めていくには、重箱の隅をつくように回転の限界を上げていく必要がある。
出口氏「ボア×ストロークを基本に、RC213V-Sのノウハウを投入していったのがメイン。チタンコンロッドやDLC処理したカムシャフトなども同様です。動弁系や吸気ポート形状などもRC213V-Sのノウハウをダイレクトに生かしました。ただ、V4ではなく直4エンジンということでクランクシャフトが長く、そのままだとたわんでしまってロスが出る。そこでクランクケース剛性も併せてバランスを取っていくのが苦労した部分と言えるでしょうか」
RC213V-Sといえば、サーキット用のキットパーツ装着車で215psとなっている。数値的にはこれを超えているのが驚きだ。
石川氏「213V-Sは、MotoGPの車両をそのまま作っているので非常に次元が高い。サーキットでは通常の市販車よりも、馬力などの数値以上に速いのです。その性能、市販状態ではなくキットパーツ装着車の性能を、法規対応しながら、量産車として作るというのがターゲットでした。213V-Sがベンチマークとして存在したことが、開発には大きなアドバンテージになったと思います」
ホンダ新型CBR1000RR-R開発者インタビュー、次ページではMotoGPマシンと同等の空力やラムエアシステム等について、さらに話が展開する。
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