【試乗】クラシカルなスタイルを、モダンなディテールで構築。走りも楽しめるクラシック・クルーザー【インディアン・モーターサイクル Springfield Dark Horse】

【試乗】クラシカルなスタイルを、モダンなディテールで構築。走りも楽しめるクラシック・クルーザー【インディアン・モーターサイクル Springfield Dark Horse】

今年2026年にブランド創立125周年を迎えたアメリカンブランド/インディアン・モーターサイクル。リアフェンダーのデザインに合わせ、その両サイドに大型ケースを装備して積載性能を高めたバガーは、アメリカで広く支持されているトレンド・セグメントである。そのバガーのトレンドの中にも、モダン派とクラシック派に、そのスタイルが分かれている。今回紹介する「Springfield Dark Horse」は、クラシックスタイルのバガーモデルだ。


●文:河野 正士 ●写真:山内潤也

インディアンのクラシック・バガー

「Springfield Dark Horse(スプリングフィールド・ダークホース)」は、インディアン・モーターサイクル(以降インディアンMC)のラインナップの中で、リアフェンダー両側に巨大なバッグを装着するモデル群/BAGGER(バガー)セグメントに位置する。ここには、インディアンMCのフラッグシップエンジンである、Power Plus(パワープラス)エンジンを採用したChallenger(チャレンジャー)シリーズやChieftain(チーフテン)シリーズのほか、「Springfield Dark Horse」と同じサンダーストローク116エンジンを搭載した「Springfield」がセグメントされている。モダンなChallenger&Chieftainシリーズに対して、クラシカルなSpringfieldシリーズという立ち位置だ。

インディアンMCが生まれたスプリングフィールド

Springfieldとは、インディアンが誕生した街の名前である。自転車ブランドだったインディアンの前身企業が、自転車競技のトレーニングや自転車レースのペースメーカーとしてバイクを作ったのがその起源。したがって最初のバイクは、自転車のフレームにエンジンを搭載したものだった。面白いのは、そのペースメーカーとしてのバイクが評判となり、またたく間に生産数を伸ばしたことがインディアンMCの起源なのだ。それがきっかけで、人や物を運ぶための輸送車両としてバイクの開発を開始。最初の試作機を完成させ、投資家に向けてデモンストレーションを行ったのも、開発拠点であったマサチューセッツ州スプリングフィールドだったのだ。その様子は1901年の日曜版スプリングフィールド・リパブリカン(スプリングフィールドの地方新聞) にも掲載されていたという。したがってSpringfieldというモデル名がつくモデルは、必然的にインディアンMCの歴史を背負った、クラシカルなモデルになるというわけだ。

最新の空冷OHVエンジン、サンダーストローク116

そのクラシカルなスタイルを象徴するのが、サンダーストローク116エンジンだ。それは2011年にポラリスがインディアンMCを復活させた後、2014年モデルとしてラインアップした「Chief(チーフ)」のために開発したサンダーストローク111エンジン/空油冷OHV3カム49度V型2気筒2バルブ排気量1811ccのミッション一体型エンジンがベースとなる。その後、排気量を1890ccまで拡大したサンダーストローク116を開発。「Chieftain」や「Roadmaster」など、インディアンの大排気量クルーザーに採用してきた。

サンダーストローク116エンジンの特徴は、その美しさだ。それを、さらに強調するため、オイルクーラーを装備していない。オイルラインを吟味しエンジン外観からはオイルラインは排除されている。また停車アイドリング中の油温上昇を抑えるため、一定の条件になると自動的にリアシリンダーを休止させる「リアシリンダーディアクティベーション」システムを搭載するなど、新機構を搭載している。気温も湿度も高い日本において、このシステムが機能するかと開発陣に聞いたとき、彼らは自信を持ってYESと答えた。もちろんそれは容易くできたわけではない。排気量1890ccの空冷エンジンの発熱量は高い。しかし我々は優れたエンジニアリングを持ち、それによってこのエンジンが開発されているから、それが実現できたと言い切ったのだ。とくに「Springfield Dark Horse」は、「Springfield」をベースに大型スクリーンやフロント・スカートフェンダーを廃し、全身をブラック・アウトするとともに、リアフェンダーのラインや跳ね上げ角度を変更。サイドバックのデザインもそれに合わせて変更されている。いわばSpringfieldのカスタムモデルだ。そのときにオイルクーラーを持たないシンプルな外観と、削り加工を施した美しい空冷フィンは、最大のチャームポイントとなる。

モダンなシャシー周りが生み出す、モダンな走り

かといって、何もかもがクラシカルではない。フレームはアルミ製で、深く覆うリアフェンダーに隠れたリアショックはリンク式のモノショックだ。最高出力は発表されていないが、2900回転で最大トルクの171Nmを発揮するエンジンはパワフルで、アクセルを開ければ猛烈に加速する。その大柄な車体と強烈な加速を、そのフレームとサスペンションはしっかりと受け止める。しかも左右の切り返しが連続するようなワインディングでも、アクセル操作とハンドル操作で、右に左に、軽快に車体を振り回すことができる。前後サスペンションが伸び縮みしたときの安定感も高い。これは、その高剛性のシャシー周りの設計とセッティングによるところが大きいだろう。

ワインディングでエンジンを可能な限り高回転まで回して、ひとしきりそんな走りを楽しんだあと、スタッフが待つ集合場所まで軽く流していこうとササッとギアを上げ、高いギア&低回転域で走っていた。しかしその状態でも徐々にスピードが上がり、再びスポーツマインドが湧き上がってきた。しかしそのときの高いギア&低回転域(おそらく4速か5速2000回転あたりか)でも、アクセルのオンオフに車体がしっかりと反応する。高いギア&低回転域だから、アクセルON時のトラクション感は非常に大股で、シリンダー内の1発1発の爆発を感じるようにコーナー出口でグンッと車体が向きを変え、そこからドコッドコッ!と広い歩幅で加速していく。同日に試乗した同社のパフォーマンスクルーザー「101Scout(スカウト)」を試乗した際に、スポーツできるクルーザーと表現したが、「Springfield」をワインディングで走らせる感覚は、歩幅が広くて力強い、三段跳びのようなスポーツ感覚だ。

インディアンのデザイナーが語る“アメリカン・フィーリング”とは

そう感じたとき、インディアンMCの車体設計の責任者であるオラ・ステネガルド氏がインタビューでこう語っていたことを思い出した。インディアンMCのプロダクトを理解するには“アメリカン・フィーリング/アメリカ的感覚”も理解しなければならない、と。それは 、開拓者精神によって建国されたアメリカ的“メンタリティ/考え方”といってもいい、と。その建国の過程では不可能なことなどなく、自分たちが思い描く世界を実現するためにアタマとカラダを動かし続けた。そのためにはチカラが必要なときが数多くあった。そして、そのチカラこそがアメリカン・フィーリングを生んだのだという。インディアンMCのプロダクトも、そんなアメリカン・フィーリングの上に成り立っているのだ。

ステネガルド氏は、こう続けた。

日本メーカーや欧州メーカーが造り上げたスポーツバイクやツーリングバイクは、すべてが完璧だ。しかし、その緻密な設計による進化の過程で、魂が抜き取られていった。しかしアメリカン・フィーリングには、まだ多くの魂が残っている。エンジンには振動があり、我々が造ったスチール鋼管製フレームのように多くのハンドメイドパーツがあり、本物のキャスティングや溶接があり、鉄製の燃料タンクがある。そして強大なエンジンのトルクもアメリカン・フィーリングだ。たとえばカウボーイたちが使う馬は、ヨーロッパ種の馬と違い、筋肉質で無骨で、さほど美しいとは言えないが、広大な土地で沢山の牛を管理するカウボーイたちをサポートする。時には牧場内をゆっくりと流し、そしていざというときには機敏に動く。それはまるでドラッグレースのマシンのようだ。しかしヨーロッパの馬は違う。美しく洗練され、優雅にジャンプし、しっかりと躾けられている。まるでスポーツバイクだ。

我々がインディアンMCのバイクを考えるとき、そんなアメリカン・フィーリングの歴史を振り返り、過去と現在の類似点を浮き彫りにする。それは非常に興味深く、我々のプロダクトにとってとても重要だ。

私は古いアメ車、プリムス・ロードランナーを長く所有している。各部はだいぶくたびれてきて、走るとあちこちからガタガタと音が聞こえるほどだ。しかしアクセルを踏み込めば、いまでもワクワクするような加速をする。そのワクワク感は、他の何物にも代え難い。そして、そのなんとも表現しがたい力強さこそがアメリカン・フィーリングだ。私はそれがたまらなく好きだ。

ステネガルド氏が話していた“アメリカン・フィーリング”って、この歩幅が広くて力強い、なんとも表現しがたい加速感ではないのだろうか。狭く回りくねった日本のワインディングで、そんな“アメリカン・フィーリング”に触れられるとは思ってもみなかった。

これを体感したいライダーは、急いだほうがいいかもしれない。サンダーストローク116エンジンを搭載するツーリング・ファミリーおよびバガー・ファミリーは2026年モデルをもって終売となる。対象となるのは「Roadmaster」「Springfield」「Springfield Dark Horse」の3モデルだ。Chiefファミリーは、引き続き販売されるので、ご安心を。


排気量1890cc空冷4ストローク49度V型2気筒3カムOHVエンジン/サンダーストローク116エンジン。オイルクーラーを持たない美しいエンジンであり、停車アイドリング中の油温上昇を抑えるため、一定の条件になると自動的にリアシリンダーを休止させる「リアシリンダーディアクティベーション」システムも搭載

ヘッドライトナセルは、古くから存在するヘッドライト周りの装飾。それをブラックアウトして装着している。兄弟モデルの「Springfield」はメッキタイプのヘッドライトナセルに大型スクリーンを装着する

高く、大きく手前に引かれたハンドル。おおらかなライディングポジションに見えるが、入力に対してフロント周りの反応が良く、コントロール性に優れている

直径300mmフローティングローターに4ピストンキャリパーを組み合わせ、それをダブルで装着する。フロントホイールサイズは19インチ。削り加工を施して、フロント周りにアクセントを与えている

リアフェンダーの丸みや跳ね上げ角度とシンクロさせて左右の大型バッグをデザイン。68リットル以上の大容量を確保。リモートロック機構付

シート高650mmの低シート高を実現。このシート下に、リンク式のリアサスペンション機構がある。スムースレザーとパンチングレザーを組み合わせたモダンなシートだ

アナログ式速度計の中央に、さまざまな情報を表示するデジタルディスプレイを配置。速度計左上は燃料計、右下がリアバッグのリモートロックボタン

広いステップボードによって、足の置き場所の自由度が高く、リラックスできるライディングポジションを構築できる

フロントフェンダー先端には、照明付きのヘッドドレスもデザインされている。1940年代後半から50年代前半までのChiefに採用されていた照明付きのヘッドドレス。現在はクラシカルなスタイルの数モデルにのみ採用されている

他のインディアンMCのモデルと同様に、ベルトドライブを採用。定期的なメンテナンスを必要とせず、高い耐久性と静粛性が特徴だ

アルミ製フレームのステアリングヘッド周りには、インディアンヘッドのロゴマークがデザインされている


Springfield Dark Horse仕様諸元

Springfield Dark Horse

  • ホイールベース 1,701mm
  • シート高 650mm
  • 車両重量 344kg
  • エンジン形式 空油冷OHV3カム49度V型2気筒2バルブ
  • 総排気量 1,811㏄
  • ボア×ストローク 103.2×113mm
  • 圧縮比 11.0:1
  • 最高出力 ー
  • 最大トルク 117Nm/2,900rpm
  • 燃料供給方式 FI■燃料タンク容量 20.8L
  • レイク角 25度
  • トレール 113mm
  • サスペンション(前・後)テレスコピック式/119mmトラベル・エアアジャスター付きシングルショッ/76mmトラベル
  • 変速機形式 6速リターン■ブレーキ形式(前・後)300mmダブルディスク×4ピストンキャリパー・300mmシングルディスク×2ピストンキャリパー
  • タイヤ メッツラー製Cruistec
  • タイヤサイズ(前・後)130/60B-19 66H・180/60R16 80H
  • 価格 ¥3,680,000から

※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。