
2023年末にタイ、そしてベトナムで相次いで発表され、2025年6月現在も国内導入が待たれるヤマハの「PG-1」。誰がどう見てもホンダのハンターカブ&クロスカブにブツけてきたライバル車だが、その実力やいかに。2023年モデルの個人車両に触れる機会を得たので、同年モデルのハンターカブ&クロスカブも用意して、徹底的に比べてみたぞ。意外とPG-1はスポーツ寄りな構成!
●文:谷田貝洋暁 ●写真:真弓悟史
前輪荷重多めでスポーティーなPG-1
ヤマハPG-1の現地向けプロモーションビデオは、往年のスズキ バンバンやドゥカティ スクランブラーシリーズを連想させる、アクティブ&ポップなテイストで構成されている。このイメージを裏付けるかのように、車体構成を見ていくと、思いの外しっかりとした車体に、ユニットステアではなく、バーハンドル、前後16インチのホイール採用と、“オフロードのヤマハ”らしい、スポーティーな作りであることに気付かされる。
とはいえ、“オフロードのヤマハ”と言われた状況も今は昔。テネレ700を除けば、ナンバー付きモデルからは土の匂いのするモデルが、ほぼ皆無な状況となっているだけに、ヤマハとしてもこのPG‐1が喉から手が出るほど欲しいに違いない。“オフロードのヤマハ”復活のためにも、ぜひ国内導入を!
エンジンを比較
全車、排気量は微妙に違うものの空冷SOHCの横型エンジンで4速リターン式(停止時のみロータリー)を採用しているのは共通だ。カブ系が63.1mmのストロークで統一されているのに対し、PG-1は若干ショート設定でボア&ストロークは50.0×57.9mm。圧縮比はPG-1が9.3ともっとも低い。
PG-1
ダウンマフラーながらテールに向かって上がっていく形状で、オフロード走破性への意識がうかがえる。音は意外とハスキーで低め。文字にするなら「ストトトト」
クロスカブ110
横型空冷109ccのエンジン。ストローク63.1mmはハンターカブと共通だが、ボアは47.0mmとひとまわり小ぶりに。最高出力は他の2車に譲るが、実際の走りでは互角以上の動力性能を見せつけた。
スーパーカブ然としたダウンマフラーにタフネスを表現したヒートガードを備える。サウンドは燃調が薄めなこともあってか「シュルルーン」と回る中にペチペチ音が混じる。
CT125ハンターカブ
同じく横型の空冷2バルブ単気筒で、排気量は124ccと3車中で最大排気量。エキゾーストパイプとエンジンを保護するスキッドプレートが標準装備されている。セルフスターターだけでなくキックスターターを併設。
唯一のアップマフラー装備。タンデム時の熱対策で黒いヒートガードが併設されている。サウンドはクロスカブ110に似るがもう少し太めの音がする。
操作系を比較
フロントフォークを長めにとり、アッパーブラケットの位置も上めのPG-1。おかげでCT125ハンターカブよりもハンドル回りの剛性が高く、ハンドリングはよりダイレクトになっている。
オフロードテイストの可倒式ステップを採用しているのは全車共通だが、PG‐1のスポーティさはここにも表れている。ステップを低めに設定しており、チェンジペダルもダイレクト式ではなくリンク式なのだ。
PG-1
クロスカブ110
CT125ハンターカブ
足まわりを比較
前後17インチホイールを採用するカブ系に対し、PG-1は小さめ16インチホイールだがワイドホイール&ファットタイヤでかなり重量感がある。フォークストロークは、CT125ハンターカブ(110mm)、クロスカブ110(105mm)に対しPG-1が最長の130mmを確保し、最低地上高は190mm。オフロード性能を狙って高めてきている。
ブレーキがフロントディスクなのは全車共通だが、リヤに関してはCT125ハンターカブだけがディスクで他はドラム式。PG-1は、フロントABSもしくはコンビブレーキ装着という、125cc以下モデルの要件に非対応。国内正規導入におけるネックのひとつは、これだろう。ちなみにホイールはクロスカブ110のみチューブレスとなっている。
PG-1
トップブリッジまで伸びたテレスコピック式フロントフォークを採用。フロントブレーキはディスク式でABSは非装備だ。16インチホイールに幅広のスチール製リムを採用しているのも特徴的。
リヤサスペンションは非調整式のツインショック、リヤブレーキはドラム式を採用する。IRC製のブロックパターンタイヤはホンダ勢よりもワンサイズ太い。スイングアームは角型スチールパイプをブラック塗装したものだ。
クロスカブ110
一般的なスクーターと同様にアンダーブラケットのみでフォークを支持するユニットステアを採用している。フロントのディスクブレーキは2ピストンキャリパーを採用し、意外と鋭い制動力を発揮する。
シルバー塗装の角型スイングアームにタンデムステップを直接マウント。リヤサスペンションは非調整式のツインショックで、リヤブレーキはドラム式だ。現行モデルにマイナーチェンジした際にキャストホイール&チューブレスタイヤを採用した。
CT125ハンターカブ
PG-1と同様にテレスコピック式フロントフォークを採用。フロントディスクブレーキはクロスカブ110と同様に2ピストンキャリパーを採用するが、初期の食いつきが抑えられたコントローラブルな設定だ。
車体色と同色のスチール製・楕円スイングアームを採用。タンデムステップが直付けされている。ツインショックは5段階のプリロード調整機構付き。リヤブレーキは唯一ディスクタイプだ。タイヤ銘柄とサイズはクロスカブ110と同じだがこちらはチューブが入っている。
各車の車体ロゴ
YAMAHA PG-1
HONDA CROSS CUB 110
HONDA CT125 HUNTER CUB
スペック比較一覧表[2023年モデル]
| 車名 | PG-1(諸元はベトナム仕様) | クロスカブ110 | CT125ハンターカブ |
| 全長×全幅×全高 | 1980×805×1050mm | 1935×795×1110mm | 1965×805×1085mm |
| 軸距 | 1280mm | 1230mm | 1260mm |
| 最低地上高 | 190mm | 163mm | 165mm |
| シート高 | 795mm | 784mm | 800mm |
| キャスター/トレール | 26.5度/83mm | 27度/78mm | 27度/80mm |
| 装備重量 | 107kg | 107kg | 118kg |
| エンジン型式 | 空冷4ストローク単気筒 SOHC2バルブ | ← | ← |
| 総排気量 | 113.7cc | 109cc | 124cc |
| 内径×行程 | 50.0×57.9mm | 47.0×63.1mm | 50.0×63.1mm |
| 圧縮比 | 9.3:1 | 10.0:1 | 10.0:1 |
| 最高出力 | 8.9ps/7000rpm | 8.0ps/7500rpm | 9.1ps/6250rpm |
| 最大トルク | 0.96kg-m/5500rpm | 0.90kg-m/5500rpm | 1.1kg-m/4750rpm |
| 始動方式 | セルフスターター | ←(キック併設) | ←(キック併設) |
| 変速機 | 4段 | ← | ← |
| 燃料タンク容量 | 5.1L | 4.1L | 5.3L |
| タイヤサイズ前 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
| タイヤサイズ後 | 90/100-16 | 80/90-17 | 80/90-17 |
| ブレーキ前 | 油圧式ディスク | 油圧式ディスク(ABS) | ← |
| ブレーキ後 | 機械式ドラム | 機械式ドラム | 油圧式ディスク |
| 発売当時価格 | ── | 36万3000円~ | 47万3000円 |
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
「マスダンパー」って知ってる? バイクに乗っていると、エンジンや路面から細かい振動がハンドルやステップに伝わってきます。その振動を“重り”の力で抑え込むパーツが、いわゆるマスダンパー(mass dam[…]
トップス&インナー 機能性抜群な冬用パーカー JK-630:1万3000円台~ 伸縮性の高い透湿防水生地を使用したウインターパーカー。保温性に優れた中綿入りなので、暖かさをキープでき、快適なライディン[…]
「特殊ボルト」で困ったこと、ありませんか? 今回は「でかい六角穴のボルト」を特殊工具なしで外してみようというお話。 バイクを整備していると時々変なボルトに出会うことがあります。今回は古い原付オフロード[…]
主流のワンウェイタイプ作業失敗時の課題 結束バンドには、繰り返し使える「リピートタイ」も存在するが、市場では一度締め込むと外すことができない「ワンウェイ(使い捨て)」タイプが主流だ。ワンウェイタイプは[…]
繋がる、見える、タフネス。ライダーが求める基本性能を凝縮 ツーリングにスマホナビは欠かせないが、バイク乗りなら誰もが抱える共通の悩みがある。それは、走行中の激しい振動によるスマホカメラの故障や突然の雨[…]
最新の投稿記事(全体)
足元やシュラウドをダーク調で締める 2017年モデルで「ネオスポーツカフェ」モデルの末弟としてCB300R、CB1000RとともにデビューしたCB125Rの、欧州仕様2026年モデルが発表された。20[…]
論より証拠! 試して実感その効果!! クルマのボディケア用品の名門として語られることが多いシュアラスターですが、同社の本質は“洗車関係”にとどまりません。じつは、燃料がどう燃え、エンジンがどんな性格を[…]
YZF-R7、R1譲りの電子制御を獲得し大幅進化!【海外】 新型YZF-R7が欧州と北米で発表。R1由来の6軸IMUと電子制御スロットル(YCC-T)を新たに採用し、電子制御が劇的な進化を遂げた。バン[…]
電動原付一種バイクながら電動アシスト自転車にも切り替え可能 50ccの原付一種バイクが生産を終え、これまでこのクラスを利用してきたユーザー層が新車に乗り換えるなら、上限125cc以下の新基準原付、もし[…]
輝かしい歴史を持つXT500は、なんと2002年まで生産 そもそもXT500は、1976年にヤマハが初めて作った4ストロークのビッグシングル搭載のトレールバイク。2スト全盛ともいえる時期に、空冷4サイ[…]
- 1
- 2



























































